当協会Evaは、アニマルライツセンターとともに、本年7月末に、田村憲久元厚労大臣ご同席のもと一見勝之三重県知事と面談し、その翌週の8月2日に要望案とともに面談のお願いを書面でしておりました。
しかしながら8月末に、多度大社側から「要望を御厨会議で伝え、その取扱いについて協議したが、面会できる状態にない」として対話を拒否されました。
その後、メディアから多度大社側が改善案をまとめたとし、以下の改善策が報じられました。
私達は、専門家の意見も聞いた上で、この改善策の場合、継続して馬が怪我をしたり死亡する恐れがあると判断しました。また、生きた動物の利用を継続する場合、より多くの事項を改善していかなくてはならないはずであり、報道された内容だけでは不透明です。
そこでEvaとアニマルライツセンターで再び懸念点を伝えるとともに、改めて対話の場を設けていただけるよう11月9日付けで書面を送付いたしました。
拝啓
時下ますますご清栄のこととお慶び申しあげます。
過日は丁寧なお返事の文書をいただき、私どもの提案についてもご検討くださったとのこと、感謝申し上げます。
日経新聞では、「馬にも人にも安全な形で、時代に合わせた神事を行えるよう改革する」との発言も拝読し、動物への配慮に対して前向きな姿勢をお示しくださったことにも感謝しております。
とはいえ、お会いしての対話ができないことをわたしたちは残念に思っています。「現状においてお会いできる状況にない」とのご回答でしたが、改善方針を県に対して提示されたとの報道もございましたため、年末前に対話の機会をいただけますよう、再度のご検討をお願い致します。
またこの度は、報道された改善方針についての懸念をお伝えしたく、再度ご連絡をいたしました。
※わたしたちが報道により把握できている改善内容は以下のものです。
わたしたちは、今回の改善方針では、馬だけでなく人も含め、これまでと変わらず、またはこれまでとは異なる事故、怪我、アニマルウェルフェアの著しい低下が見込まれるものと考え、再考をお願いしたいと考えています。
懸念点1:土壁が残されていること
馬術競技等、たとえ数年、数十年かけて訓練したとしても、1メートルの高さを飛び越えることで死亡するケースがあります。ましてや、短期間の限られた時間での訓練では、技術が伴わず人も馬も危険が高いと考えられます。
また壁を1メートルにすることで、挑戦してしまう馬の増加が想定されます。馬は色彩への反応も鈍いため、坂と壁の区別がつきにくく、また1メートルの壁が目の前に来た時には視界から外れることで壁に追突し骨折する危険性や追突の衝撃で人が投げ出される可能性も高いとの指摘もあります。
懸念点2:角度がなだらかになったとしても坂が残ること
坂の距離を伸ばしてなだらかにするとの案ですが、現状、どの競技でも馬がジャンプする際の地面は平らであり、登り坂の途中に飛び越えないとならない障害があることは考えにくく、前方に傾げることが出来ない馬の足の構造上、失敗の可能性や足を痛める可能性があります。
懸念点3:その他の改善点が不明
例えば獣医師の待機、馬運車の待機、走路に入る人員の整理、観客の位置、竹棒やハミの扱い、トレーニングの改善などについて不明であり、懸念が残ります。その他楠の周りを回らせる際にも不適切な状況が生み出されていることもわかっており、そもそもの馬の扱い方、人々の意識にも問題があるように見られます。
わたしたちは引き続き、生きた動物を使わない形での文化継承を願っております。もし生きた動物を利用するまま改善されるとすれば、良好なアニマルウェルフェアが保たれ一切の残酷さがないレベルまで引き上げて頂く必要があります。それは、長年の批判があったにも関わらず改善が進まなかったことと、本年の開催後の対応や決断も遅かったことなどから、社会的なハードルが上がっていることを認識しておく必要があると思われます。社会の理解を得るだけでなく、今回の改善が社会から高く評価され、多度大社とその地域の新しい魅力になるような英断をしていただくことを期待しています。
まずは対話の機会をご検討いただき、ご回答頂きたく存じます。対話の機会をいただけない場合は、文書での改善策の詳細についてお教えいただくとともに、わたしたちの懸念に対しての解決策をお教えいただけますようお願い致します。
敬具
私たちは、障害物(壁と坂)の改善をはじめ、以下のように要望しています。(一部抜粋)
1-1:馬に壁を登らせることは習性に反しており、 最終地点にある壁は撤去すること
障害競技であっても、2m程もの高く硬い壁を登らせるようなことはしません。また障害競技では長年の訓練を行っており、それでも事故で馬が死亡することがあり、多くの批判を受けています。壁は高さの改善ではなく、撤去する必要があります。
1-2:馬に現状の30~45度程度の坂を登らせ ることは習性に反しており、どのような馬でも登れる傾斜に改善すること
通常、傾斜は馬の速度を制限するためにつけられます。急坂を馬に全力疾走をさせることは無理があります。上の広場までどうしても馬を登らせたいのであれば、走路の前半からなだらかな傾斜をつけ、駆け足程度で登らせるようにする必要があります。坂を全力疾走させることは馬に負担がかかりすぎます。
神事や祭りは昔から人柱などから代替し続けています。
これだけ国内外で注目されている中、今後は上げ馬神事で生きた馬を利用するのをやめ、さらに現代にあった形に代替する時です。馬の形の神輿や山車を組ごとに作って崖に上げたり、巨大なボールを転がし崖を上げるなど、案を一般から募ることで、皆で継承していくことができます。
上げ馬神事は、環境省が示す「積極的(意図的)虐待」の具体例の
1.殴る
2.身体に外傷が生じる又は生じる恐れのある行為をさせる
3.身体に外傷が生じる又は生じる恐れのある暴力を加える
4.酷使
に該当する可能性があります。
「正当な目的があったとしても手段が社会通念上容認される範囲を超える場合は、殺傷・虐待罪が成立する」と今年5月の農林水産委員会でも環境省の松本審議官が答えていました。
改正動物愛護管理法は2020年施行しました。動物虐待に対する罰則は、最大5年以下の懲役、500万円以下の罰金になり、それまでの2倍以上に厳しくなっています。それだけ社会の関心と要請が強く、動物への不適切な扱いが許容されない社会になっています。
私たちは、多度大社に向けて上げ馬神事を司どる奉納団体の御厨総代会様と直接お会いし、改善内容について直接お話しできるよう現在お願いをしています。
今後の進捗については、またご報告いたします。
7月27日Evaは、かねてから動物虐待ではないかと指摘されていた上げ馬神事について、田村憲久元厚労大臣ご同席のもと、一見勝之三重県知事にお時間をいただき、NPO法人アニマルライツセンターと共に動物への扱いの改善をお願いしました。