「改正動物愛護管理法を考えるシンポジウム2023」レポート(2023年10月)

2023年10月「改正動物愛護管理法を考えるシンポジウム」

改正動物愛護管理法を考えるシンポジウム2023

10月5日(木)Eva主催で「改正動物愛護管理法を考えるシンポジウム2023」を開催しました。

本年8月から、超党派議員連盟による、動愛法改正に向けたプロジェクトチームの会議がスタートしました。次期法改正に向けそれぞれが抱える問題点を再度洗い出し、現実的かつ実効的な法改正にするためにはどうしたらよいのか、それぞれの視点からリレー形式で語って頂きました。

開会挨拶

Eva理事長杉本彩

Eva理事長 杉本彩

当協会Evaは、さまざまなご相談を受け時には刑事告発を行っていく中で、動物を取り巻くあらゆる問題にぶつかりますが、その中でいつも感じるのは感受性のある動物の命が適切に扱われていないということ、あらゆる場面で命の大切さが共有できていないことを痛切に感じます。目の前で虐待されていたり、適切に飼養管理されていない動物がいても救うことが出来ません。当たり前のことを当たり前に速やかに行っていける社会にするべく、本日は皆さまと共に考えていきたいと思います。

次回法改正も間もなくで、ようやく超党派動物愛護議連でもこの夏から議論がスタートしました。問題を共有しどのように改正していけば動物たちが守られていく社会が実現できるのか、改めて皆さまと共有したいと思います。

第1部

緊急一時保護の必要性
公益社団法人日本動物福祉協会 獣医師調査員 町屋奈様)

緊急一時保護の必要性 公益社団法人日本動物福祉協会 獣医師調査員 町屋奈様

現状の課題

  1. 動物虐待事例(多頭飼育問題など)⇒所有権放棄を拒絶する傾向があり被虐待動物を保護することができない。
  2. 車内や屋内への置き去り⇒警察や消防がすぐに対応できない場合、解決に時間がかかり、かつ保管場所の確保が難しいのが現状。
  3. 飼い主死亡(独居など)および意思疎通ができない状況⇒事件性の確認、遺族および後見人探しや手続きに時間がかかる又対応しにくい。
  4. 警察が介入している虐待事件⇒所有権放棄をしなかった飼い主が有罪となっても(捜査終了後)返還を求められた場合、返還しなければならない。

課題解決のために、緊急一時保護制度の整備と飼い主による動物虐待の場合は当該動物の飼養を禁止する罰則が必要不可欠である。
どの法律に入れるのか?
 「動物の愛護及び管理に関する法律」に「緊急一時保護の条文を新設」
判断の権限は?
 動物愛護管理行政及び警察署が判断の権限をもつ

動愛法内で緊急一時保護を新設するために

  • 根拠は? 「動物が感覚のある命ある存在である」とし、動物が正負の感覚を覚える生き物であるということが法的根拠。
  • 保護条件は? 第三十五条第1項:「引取りを求める相当の事由」に飼い主の福祉の問題や多頭飼育問題等を加え、新設で動物愛護センター等での保管が難しい場合は、第3機関(者)に委託することもできる。
  • 保護(保管)場所は? 動物愛護管理センター
  • 保護(保管)期限は? 保管期間等保管条件を設ける。保管条件を明記することで、行政が預かりやすくなる。
  • 処分条件は? 行政判断により譲渡などの適切な処分ができる。
  • 一時保護後の被虐動物の扱いは? (罰則)第四十四条第5項に新設で、所有者・占有者による動物虐待の場合、当該動物の飼養を禁止

法改正案で可能となること

  1. 虐待を受けている又は可能性のある動物の緊急一時保護
  2. 動物愛護管理センターで、原則、保護動物を保管すること
  3. 保護された動物の飼養環境が改善されない又は、返還条件を満たさない場合は、行政判断で譲渡処分ができること
  4. 虐待をした飼い主の所有権をはく奪することができること

動物の展示即売会と飼育種のホワイトリスト制について
(PEACE命の搾取ではなく尊厳を 代表 東さちこ様)

動物の展示即売会と飼育種のホワイトリスト制について PEACE命の搾取ではなく尊厳を 代表 東さちこ様

犬猫の移動生体販売の現状

地方都市のイベント会場に子犬子猫150匹程度を連れて訪れ、週末限定イベントを主には2社が行っている。土日祝日開催のため行政(保健所・センター)は何が起きているのか把握していない。2014年に鬼怒川河川敷で大量の犬の遺体遺棄事件が起きたが、これにも移動販売業者の関係者が関わっていた。
告知は、新聞広告・チラシ・スポットCM等ターゲットを絞った方法。掲載までのリードタイムがあることから表示義務のある第一種動物取扱業登録番号などの情報が欠落していることもある。
移動販売の問題は、環境変化などのストレスに弱い幼齢個体を、毎週長距離移動させ販売させること。どれだけ過酷な移動を強いているかというと
A社:11/11,12山口県でイベント出展後、翌日甲府市へ移動(851km)、翌日1日のみ休養日
    でまたその翌日11/15には甲府市から今度は岩手へ移動(647km)

B社:1/19群馬県高崎市から島根へ移動(816km)、48時間目視後2日間のイベント出展
    後、1/23高崎市へ移動(816km)、1/26今度は高崎市から香川へ移動(789km)
    し48時間目視後2日間のイベント出展後、1/30高崎市へ移動(789km)

A社・B社共に4日を空けず輸送しており、幼齢動物の健康面にとって厳しいスケジュールといえる。

施設は、義務となっている2日間の目視確認は連続して行う必要があるが、ほとんどの会場が犬猫を夜間置くことを拒否するため、業者は輸送設備を飼養設備とし、夜間はトラックの中に全頭押し込んで駐車場に移動させている。車両が敷地内にあれば良しと判断されている。「これでは輸送後2日間目視にならない」と判断すれば販売会は中止できるはずだができていない。
又会場は、暖房施設のないアイススケートリンクの時もあり、温度・湿度の管理も出来ない場所で、温度管理が重要な幼齢個体にとって新しい環境への配慮がなされていない。
動物の状態も、咳が止まらない、下痢をしている、幼齢動物なのに骨と皮、ぐったりと横たわっている等、あきらかに具合の悪い動物がいるが、保健所が指導できるのは展示から外すことだけ。最大の問題は、仕入れたばかりの犬を隔離期間なしに展示するため、パルボを含め蔓延する。

一般消費者に対し、健康そのものであると言い購入させ、その後、パルボで看護の甲斐なく死亡。死亡した場合は新しい生体と交換。例え高額獣医療費をかけ生き延びたとしても、購入の際強制的に加入させられるペット保険が補填すると案内される。

又、幼齢期を脱しても体が大きく育たない、胃腸が弱い、療養食しか食べられない等、消費者の高額獣医療負担は継続する。これらの案内を受けるには社長の携帯電話が繋がる場合のみ。交渉が決裂した場合は電話に応答しなくなる。ターゲットの消費者は高齢世帯、小さな子どものいる世帯など泣き寝入りすることが多い傾向。

  • 移動展示販売イベント会場も飼養管理基準の遵守義務はあるが…
    自治体は基準をクリアしているとし第一種動物取扱業の登録を行ってしまっている
    飼養管理基準はできたが、開催を防げない
  • 犬猫については輸送後2日間の目視確認義務はあるが…
    現在業者はイベント会場を2日前から予約(それだけ利益が見込まれる)
  • 自治体をまたいで動物取扱責任者の重複はできないはずだが…
    自治体によっては、イベント後に指導書を出すか検討するため登録抹消させないこともあり、次のイベント会場での登録が動物取扱責任者の重複で本来はできないはずだが、第1種動物取扱業のデータベースがデジタル化されていないことを逆手にとって動物取扱責任者の重複登録が横行

 エキゾチックアニマルの展示即売会について

現在犬猫以外の爬虫類等の展示即売会が増加している。多数の業者が各地から集まるため長距離輸送が発生している。販売時に動物ごとに表示しなければならない項目(品種等名称、成長時の大きさ、雌雄、生年月日、生産地など)が表示されていないブースがあっても、なかなか改善されない。

エキゾチックアニマルの展示即売会

惣菜パックにいれられた多数の
爬虫類

エキゾチックアニマルの展示即売会

体が真っすぐに出来ない食品パックにいれられた爬虫類

エキゾチックアニマルの展示即売会

体の大きさと同じ容器に入れられ動けない亀


現在の基準にも反しているはずなのだが?⇒強制力をもって変えられない

  • 激しい常同行動が見られることも。
  • 運動場所も運動時間もない。
  • 積極的に客に抱かせる場合もある。
  • 野生動物の触れ合いイベントが併催されることも。

本来は、犬猫同様2日間の目視を義務付けるべきだが、この状態で長期間置かれることになるのは大きな問題。猛禽類は拘束展示。雛も輸送され販売されている。

多くの問題を抱える展示即売会

  • 多種多様な動物種が販売され、安易に飼育開始できる状態にある。
  • 室温を爬虫類合わせにすると暑すぎる動物もいるが、同じ会場で販売。
  • 人で混雑している。イベントが行われる場合、マイクの音声も非常にうるさい。
  • 密輸が疑われる動物や希少種、野生捕獲個体等も売られている。
  • テレビ局が主催するなど、エキゾチックアニマルの安易な飼育を認める風潮に。

第一種動物取扱業の登録に関する問題

  • イベント主催者が第一種動物取扱業の登録を行い、ブース出展者(実際の販売者)は登録を行っていない。
  • イベント主催者の1日だけのスタッフである、委託販売である等の形態がとられることで、法的に義務化された登録事業所での販売の抜け道となっている。
  • 販売者はあくまでイベント主催者となるため、購入者に渡される書類の発行者は実際の販売業者と異なる。

飼養管理基準の遵守義務等は、あくまでイベント主催者にかかっている。

​次の1~4によって、移動展示・移動販売を実質禁止する

  1. 常設の事業所住所以外での登録の禁止⇒イベント会場、駐車場、公園等での登録禁止を明文化する
  2. 登録時及び更新時の立入の義務化⇒立入で現地確認ができてからでないと登録番号が出ないようにする。(登録番号がなければ広告を打てないため)
  3. イベント主催者名義等の登録は不可とし、実際に動物を取り扱う事業者ごとの登録の義務化
  4. 施設への導入後、取り扱う動物の検疫期間を2週間設ける
  5. 要件を満たさなくなった場合の自動的な登録の抹消⇒土地・建物を利用できる権限を失った時点で登録を失効させる。

飼育できる動物種を指定するホワイトリスト制の導入を
ホワイトリスト制がなぜ必要か?
 <動物福祉を担保することが難しい

  • 野生での生態もよくわかっておらず、飼育技術も確立されていないような種が売られている
  • 人との暮らしに適応するような、繁殖・育種による改変を経ているわけではない
  • 本来の生態にかなった飼育環境の維持や給餌、ケア、飼養管理が困難、もしくは不明
  • 治療に関する知見が乏しく、診察できる獣医師も限られる。
    ※コレクター化で多頭飼育になる

 <その他のリスクを社会や環境にもたらす

  • 遺棄や逸走などにより野外で外来種として定着するリスク
  • 感染症リスク(野生動物・飼育動物への感染拡大リスク、人の新興感染症リスク) 
  • 野生捕獲による直接的な生物多様性破壊や、違法取引の横行、関連法違反など

犬猫以外の動物の飼養管理基準を環境省が策定作業中だが、取引するべきでないような種の取扱いを止めさせることは困難とみられ、飼育禁止による歯止めが必要

※犬猫移動販売については、PEACEも賛同している「犬猫の移動展示販売を考える会」からスライドをお借りしました。

10億頭の産業動物のアニマルウェルフェアを守るために必要な新たな条項
(認定NPO法人アニマルライツセンター 代表理事 岡田千尋様)

10億頭の産業動物のアニマルウェルフェアを守るために必要な新たな条項 認定NPO法人アニマルライツセンター 代表理事 岡田千尋様

日本国内の産業動物の内訳を見ると、年間で殺される数は10億頭(陸生動物のみ)。魚や海老などの水産動物に関しては、t(トン)などの量で数えられるため頭数は不明。
動物に対しての倫理的問題はもちろんのこと、薬剤耐性菌で抗生物質が効かない動物が生まれていることで我々の健康被害に直結している。又新たなパンデミックを引き起こす新型コロナウイルスのような新興ウイルスなど人獣共通感染症の危険性もある。地球上の85%が農地に使用されることで、森林や熱帯雨林の破壊、先住民族の土地の侵略や殺人等の人権侵害もある。温室効果ガスも大量発生し、日本の食文化のブランド価値の喪失もあり、日本で酷い扱いを受けている動物を食べるのかという目から、食品を扱う価値の喪失や投資を得られないリスクもあり経済の問題に関わってくる。影響力が大きくまたその範囲が広いことから、世界の国々が法整備をしている中、日本はそこに追いつこうとしない。

法律がないから詰め込めるだけ詰め込んでいる
とにかく詰め込めるだけ詰め込む。

詰め込めるだけ詰め込まれる採卵鶏

1羽あたりの面積は体より小さく285cm2/羽で、韓国の1/3のスペース(韓国は750cm2以上)

詰め込めるだけ詰め込まれる採卵鶏

この飼育環境で450日~650日置かれると、羽はなくなり鶏冠も真っ白になり死亡する鶏も多数

鶏卵

ブロイラー(肉養鶏)も、法律がないことで足の踏み場もないくらい詰め込んでいる状態

ケージ飼育を止めさせたいのは山々だが、まずは世界の基準に並ぶことが今回の法改正においての提案になる。

詰め込まれているブロイラー(肉養鶏)の中を死体を探すために従業員が歩くのだが、あまりにも過密のため、鶏の足を蹴ったり踏んだりしないと前に進めない。これが犬や猫だったら?と想像して欲しい。
日本の多くが56kg/m2(大手企業も同様)、タイでは国が定めていて、解放鶏舎の場合は20kg/m2で無窓鶏舎の場合は34kg/m2、日本は世界の1.7~1.8倍の数の鶏を過密飼育している。過密飼育の結果、床は糞が溜り足の裏が焼けただれたり立ち上がれないなったりする状態になる。飼育密度は非常に重要。
農林水産省はこの7月にアニマルウェルフェアの飼養管理指針を出した(1年前にパブコメ)。WOAH(世界動物保健機関)の指針で182か国が同意したもので、レベルは高くない。これは最低レベルと世界が決めた基準で、農林水産省はせめてこれは守らなければならないとしているが、強制力が何もないことで守られないことが問題。強制力も持たせるべき。

WOAH基準に環境省の指針を変更し義務化が必要

  • 農場内⇒農水のアニマルウェルフェアに関する指針と連携
  • 繁殖⇒新たに規定
  • 輸送⇒WOAHに基づき策定
  • 屠畜⇒WOAHに基づき策定

としたうえで、

  • 飼育密度の適正化
  • 屠畜前の意識喪失
  • 痛みにある切除や施術前の麻酔

これらについて別途条項を設け、罰則を含め義務化が必要

鳥類の屠畜時、事前の意識喪失をしないのは日本だけ

日本の場合、牛や豚については意識を喪失させるスタニングがなされているが、鳥類(鶏、あひる、合鴨等)はほぼ85%スタニングがされてなくそのまま首を切られている。首を切っただけでは即死せず、出血死させるため長い時間苦痛を感じ死んでいくことになる。これは世界ではあり得ないことで、日本に入ってくるタイやブラジルの鶏は、全てスタニングされている。中国産の鶏も同様で日本だけが出来ていないことから、経済の為にも動愛法の中で整備が必要。世界の企業が有効な気絶処理を屠殺前に行っている。そうでないと売れないから。
スタニングあり・なしの写真は一目瞭然。スタニングしてないと血が出ている状態でバタバタと身を動かすため全身が血まみれになりそれで死んでいく。こんなことが我々が住むこの日本で起きているということを多くの国民が知るべき。
また気絶させずに首を切ることは失敗することもあるため「湯漬け」という次の工程で、生きたまま熱湯で茹でられてこともある。生きたまま熱湯に入れると生体反応で皮膚が真っ赤になるため廃棄処分となる。現状はより"苦痛を与えない"方法があるにも関わらず、その方法を使わない動愛法に反した状態であるが、業者も行政もこの条文を守るつもりはないためこの程度の表現では不十分。

また痛みを伴う外科的切除をする場合は必ず麻酔をするべき。世界は、外科的切除、施術は行わない方向で、行う場合は麻酔をしなくてはならない。畜産と実験施設は現在一般家庭より甘い規定になっており、虐待があっても行政は何もできない。
また魚類においても哺乳類同様、知性と感覚を持っていることから、動愛法の罰則及び動物取扱業の範囲を「すべての脊椎動物」にしてほしい。
世界最低ランクの日本の基準を、せめてWOAHの基準までに上昇させなければならない。

動物実験代替法の利用の義務化など実験動物に関する改正
(NPO法人動物実験の廃止を求める会(JAVA)事務局長 和崎聖子様)

動物実験代替法の利用の義務化など実験動物に関する改正 NPO法人動物実験の廃止を求める会(JAVA)事務局長 和崎聖子様

改正に向けて4点を要望

  1. 「動物を科学上の利用に供する場合の方法、事後措置等」(第41条)第1項の<動物実験の代替><実験動物数の削減>を義務とする⇒3Rすべてを義務に!
  2. 代替法があるものについては、それを利用することを義務付ける
  3. 代替法の開発・普及を国の責務とする
  4. 動物実験施設、実験動物販売業を「第一種動物取扱業」の対象とする⇒施設・業の登録、基本情報の把握

4点とも動物実験の内容に踏み込む要望ではない。理由として動物実験は多くの省庁が関わっており法律や分野も多岐に渡っていることから、それぞれの関連法(薬機法や化審法)で行うべき。

「動物を科学上の利用に供する場合の方法、事後措置等」(第41条)第1項の<動物実験の代替>や<実験動物数の削減>を義務とする

動物実験の3Rの原則の理念のみ盛り込まれている
代替(Replacement)⇒ 配慮事項
数の削減(Reduction)⇒ 配慮事項
苦痛の軽減(Refinement)⇒ 義務 
日本では、動物実験業界側の「科学の発展に悪影響を与えるのではないか」といった反発があり実現できてないが、日本より3Rが進んでいる欧米では科学の発展に悪影響が出ていることはないことからその理由は通用しない。

41条について具体的にどのような改正を望んでいるかというと、現行法は3Rを用いるか否かの裁量を実験者に委ねる状況になっている。それ故、代替法があるのに動物実験を行う企業や研究機関が多いなどこの規定はザル法になっている。
「科学上の利用の目的を達することができる範囲において」とか「その利用に必要な限度において」など3Rの遵守を制限している部分があり、また「利用することに配慮するものとする」という非常に弱い規定になっている。なので「科学上の利用の目的を達することができる範囲において」とか「その利用に必要な限度において」を取り除く改正が不可欠で「配慮するものとする」を「しなければならない」に書き換える必要がある。

代替法があるものについては、それを利用することを義務付ける
要望1の<動物実験の代替>の義務化をより明確に規定する。
OECD(経済協力開発機構)やICH(医薬品規制調和国際会議)など、日本が加盟している国際機関で公定化された代替法が多数ある。が、代替法にするか動物実験にするかの判断は、企業や研究機関に委ねられている。代替法があるにも関わらず動物実験を続けていることがある。国も弱腰で代替法を「利用してもよい」という程度。国の弱腰姿勢を表す例として、医薬部外品の代替利用について国が出しているものとしては、以下の2つの事務連絡のみ。

Q3 動物実験代替試験法による試験成績を申請資料として用いることは可能か
A3 OECD等により採用された代替試験法あるいは適切なバリデーションでそれらと同等と評価された方法に従った試験成績であれば差し支えない。ただし、通知等で代替法に関するガイダンスが示されている場合は、その方法を優先して用いるべきである。
「代替法でないといけない」とまでは言っていない。

もう一つの事務連絡が、JaCVAM(日本動物実験代替法検証センター)という厚生労働省の関連機関のHPに、代替法が掲載されているから参考にしてに留まっている。情報提供レベルの内容になっている。
そのため企業も積極的には考えておらず、代替法の利用に関する日本化粧品工業連合会 技術委員会参加会員へのアンケート結果では、4割以上が「代替法の利用は考えていない」8割が「代替法で申請したことがない」という情けない結果となった。

代替法の開発・普及を国の責務とする
「国は動物実験代替法の開発・普及に努めなければならない」と定め国の責務とする。このように動愛法の中で定めることにより、

  • 研究開発や普及のための予算獲得の根拠となる
  • 動物実験計画書の審査時に代替法が検討されたかをきちんと見ることのできる体制づくりに繋がる

動物実験施設、実験動物販売業を「第一種動物取扱業」の対象とする

  • 現行法では対象外となっている、動物実験施設、実験動物販売業も第一種動物取扱業の対象に
  • 実験動物の飼養保管基準に代替・削減についても盛り込み、登録施設に対し遵守を義務
  • その他、畜産関係業、生餌業、輸送業者、補助犬取扱施設、動物を使用した動画配信を生業とする者等も対象に

現在の動愛法では、ペットショップや動物園などが第一種動物取扱業となっているが、第10条の例外規定によって畜産関係業と実験動物関係業は対象外となっている。対象動物種は、哺乳類、鳥類、爬虫類に限られている。これを生きた脊椎動物を扱う業は、すべて平等に「動物取扱業」にする改正を行えば、両生類や魚類も含めた実験動物を扱う動物実験施設、実験動物販売業も自治体に登録されることになる。

3Rの改正と、この改正両方が実現すれば、登録施設に基準順守を設けることで実験動物の福祉が守られる。登録する事項は、現行の「第一種動物取扱業」の登録内容と変わりなく、動物実験の内容まで踏み込むものではない。

改正を要望する理由

  • 動物実験施設、実験動物販売業なども適正飼養の指導対象である。一部の業種を登録対象から除外する根拠が明確でない
  • 登録を義務付けられているペットショップや動物園など、その他の動物取扱業者との間に不公平が生じている
  • 実験動物の飼養場所や動物種、数を自治体が把握できなければ、災害時に脱走した場合など、対応できない

日本では兵庫県に「動物の愛護及び管理に関する条例」で定める動物実験施設の届出制があり67施設が届出されている。又静岡県では、動物愛護管理推進計画に則り把握できた動物実験施設42に対し自主的に年一回の立ち入り調査をしている。それにより多くの施設で獣医師がおらず、またケージサイズは、国際基準以下であることが分かった。
このように自治体は自ら情報を収集し、施設の場所などを把握できるよう努めているが限界はある。登録を義務付けていれば容易に把握できるようになる。

第2部

議員メッセージ

次回法改正に向けてご尽力を賜る先生方より一言づつお言葉を頂戴しました。

衆議院議員(自民)野田聖子様

元衆議院議員(公明)太田昭宏様

衆議院議員(公明)中野洋昌様

参議院議員(社民)福島みずほ様

参議院議員(維新)串田誠一様

参議院議員(立憲)塩村あやか様

幼齢動物の販売・運用の現状について
(公益財団法人動物環境福祉協会Eva 代表理事 杉本彩)

公益財団法人動物環境福祉協会Eva 代表理事 杉本彩

当協会Evaの次期法改正の要望について

  • 緊急一時保護制度(伴い飼育禁止命令も含)
  • 動物の移動特設販売の禁止
  • 産業動物に対する酷い扱いを取締り、現状維持ではなく「5つの自由」を満たすこと
  • 動物実験施設の第一種への登録

はもちろんのこと

野生動物を使ったカフェの禁止

  • 飼養動物種の知識を有する人材及び適切な飼養環境を提供している場所が少ない
  • 感染症管理等の公衆衛生上の問題

第2種動物取扱業に、現行の第1種動取同様、登録制を導入

  • 第2種動物取扱業者による多頭飼育崩壊
  • 代表者・スタッフによる動物虐待事件
  • 不適正飼養や医療ネグレクトが多発
  • 寄附金目当ての保護活動

第1種には一定頭数を超えた場合、獣医師を常勤

  • 無資格者による帝王切開が全国的に横行
  • 飼養動物に対する医療ネグレクトが常態化

幼齢動物の販売禁止
イングランド
ペットショップで生後6ヵ月未満の子犬や子猫の販売を禁止(2020年4月施行)
劣悪繁殖業者の撲滅が理由
フランス
ペット店で犬猫販売禁止へ(2024年から)
保護団体や個人からの譲渡、ブリーダーからの直接購入となる。動物の福祉や衝動買い防止の観点から

と、同時に、法律の運用面が非常に危惧される。
どんなに法改正で細かく縛っても、では緊急一時保護制度が出来たとしても、その制度を発出するのは行政。現在の動愛法や環境省令、ガイドラインには、しっかりした多くの規制があるが、現状虐待事件が起き、そこに死体があっても「虐待ではない」とか「自然死じゃないか」などとし、対応しないケースが非常に多くみられる。

行政が動かない場合の方法について、動愛法44条に明確な虐待の定義を設け、例え衰弱していなくても当てはまれば虐待とみなす。
かつ行政が権限を行使せず放置した場合、行為の是正を求めることができるのか?など、より動物愛護法の実効性を高める必要がある。

法律面からみた緊急一時保護制度
(平成国際大学 法学部 教授 牧野高志様)

平成国際大学 法学部 教授 牧野高志様

刑法19条に「没収」制度がある。組成物等の所有権を国に帰属させる手続きがあるが実行出来てない現状がある。所有権を飼い主に残す「押収」というのもあるが、これに関しては、虐待が繰り返される点を踏まえると不十分である。所有権を奪うことが最終目標ではあるが法律の規定は一歩一歩進めていくものなのでその前に一時的に保護をしていきたい。

<諸外国情報>
ドイツ:動物保護法
19条:犯罪行為(17条など)または秩序違反行為(18条1項1号等)に関連する動物を「没収」することができる。「没収」することというのは所有権を奪うこと。

フランス:フランス刑法典
被虐待動物の所有者が有罪となった場合や所有者が不明の場合裁判所は被虐待動物の処遇について判断する。所有者から動物を没収して、公益性を認められた届出をした動物保護基金・動物保護団体へ引き渡すことができる。「没収」後の帰属先が明らかになっていることや、動物保護団体と一括りにせず、信頼性を置ける”公益性を認められた”と絞りを掛けているところが特徴的でよい。

スイス:動物保護法
24条:動物が放置されていたり、全く不適切な条件で飼育されていることが判明した場合、所轄官庁は直ちに介入しなければならない。所轄官庁は、予防措置として動物を没収し、動物飼養者の費用で適切な場所に収容することができる。

イギリス:動物福祉法2006
当該動物に対する所有権を剥奪する裁判所からの剥奪命令、動物全般の所有についての資格剥奪命令を規定が法律上認められている。

我が国で出来るのかどうか?

日本における導入の許容性①

動物の緊急一時保護制度について
最終的に動物の所有権を奪うことは、憲法上認められた財産権に対する制限になる。憲法29条には「財産権は、これを侵してはならない。」だが、憲法上の権利は「公共の福祉」のためであれば制限をしてもよいということになっている。
そもそも「公共の福祉」とは?
人権相互の矛盾・衝突を調整するための実質的公平の原理⇒人権制約が許されるのは、他者の人権を保障するため⇒人の人権・利益がないと人権制限不可

今現在の動物愛護法の所有権の制限規定は
44条における犯罪(殺傷罪や虐待罪)に対し罰則規定が定められていて制限となっている。
「動物を愛護する気風という良俗」これは動物愛護の良俗を守るために規定されている。⇒つまり人間の利益に繋がり、緊急一時保護も「良俗」に合致するのではないか。よってこうした規定を設けることは憲法上問題ないのではないか?
人間の利益のためでないと人権制限出来ないという考え方は、憲法学者から疑問や批判もある

  • 「人権」という概念をよほど拡張的な意味で用いなければならないことになる。
  • ある基本的人権の規制に導く対抗利益が厳密には基本的人権とは言えない場合も含めて観念する必要がある。

これは、人権を制限するために、他人の人権のためでないといけない。直接的に人権の為になっていなくても、広く法律を作らなければならなくなってくる。そうなるとどうしても他人の人権を広く解釈しなくてはならない、ということになるのではないか?
・近年の世界規模で勃発しているテロの脅威やパンデミック禍への対応として、国民の生命・財産・安全・健康・生活等を国家が保護することの重要性は以前にもまして増大している
⇒公民全体の「生命・自由・幸福追求権」の基礎となるべき公益を保障するために、他の人権を一定程度、制約しなければならない場面は避けがたい
人の利益のためでなくても、もっと広く例えばテロの脅威とかパンデミックなどやむを得ず人権を制限しなくてはならないこともあるとなると、人の利益に直結する、他人の人権に直結する為でなくても、人権に対し何らかの制限をしていかなければならないのではないか。
人間の利益を超えた公益・社会秩序の部分にペットの財産権の制限というのが該当してくるのではないかと考えられる。

日本における導入の許容性②
例えば、屋外広告物(チラシの貼り付け等)を禁止する条例

⇒都市の美観風致維持のため合憲(大阪市屋外広告物条例違反事件最判S43.12.18、大分市屋外広告物条例事件最判S62.3.3)
美観風致という利益のために、最高裁の判断で表現の自由を制限
風景という抽象的な利益のために民主国家における重要な「表現の自由」の制限を許された。そのことから
動物の命を守るために財産権を制限することも可能では?
最高裁の結論のバランスを考えた時に「緊急一時保護制度」によって動物たちを守ることは出来るのではないか。

日本における導入の許容性③

緊急一時保護

一時的に占有を移転するのみであり、所有権剥奪ではない。占有権(持っている状態)を制限するということ。厳しい訳ではない、というもの
⇒動愛法44条で、「懲役」刑という身体的拘束を課している。これは人権制限にとってもっとも厳しいものでこれが認められている。
動物虐待があった時に、占有を一時的に制限することは認めらてもよいこと。

導入にあたり…
・「虐待」認定の公平性確保 判断をどこの機関が行うのか? 恣意的判断とならないことが重要
Ex 裁判所、愛護センター、獣医師
cf イギリス:RSPCA所属の獣医師以外の第三者的立場の獣医師
・引取り施設
自治体(動物愛護センター、保健所等)
愛護団体・動物病院(協定が必要)

人間による動物保護のためのシステム構築(法制度化)の必要性
動物はモノという法的なポジションはあるが故に大きな壁がある。しかしながら動物はモノという認識を持っている国民は少ない。動物は単なるモノではない。感情もあるし感受性もありますし我々はさまざまな恩恵を動物から受けている。動物は苦しみから助けてと声をあげて行動することが出来ないことから、我々が主体的に動物を守っていく必要性があり、それには動愛法の法整備が必要である。

法律と犬猫販売展示規制
(弁護士 細川敦史様)

弁護士 細川敦史様

犬猫の展示販売規制の経過

  • 1973年 動物保護管理法 規制なし
  • 1999年 第1次改正 届出制が開始
  • 2005年 第2次改正 登録制に強化
  • 2012年 第3次改正 登録制は維持
    深夜販売規制(20時~8時の禁止)、幼齢販売規制(附則により45日→49日と不十分)対面説明義務(インターネット販売規制
  • 2019年 第4次改正
    8週齢規制の実現(日本犬の一部例外あり)業者の遵守基準の具体化、数値化、犬猫等販売業者に対するマイクロチップの装着・登録義務

22条の5 幼齢の犬又は猫に係る販売等の制限
犬猫等販売業者(販売の用に供する犬又は猫の繁殖を行う者に限る。)は、その繁殖を行つた犬又は猫であつて出生後56日を経過しないものについて、販売のため又は販売の用に供するために引渡し又は展示をしてはならない。

21条 第1種取扱業の遵守基準の具体化
動物の種類、習性、出生後経過期間等を考慮して、次の事項を環境省令で定める

  1. 飼養施設の管理、設備の構造・規模・設備の管理
  2. 従事する従業員の数
  3. 環境の管理
  4. 疾病等に係る措置
  5. 展示又は輸送の方法
  6. 繁殖回数、繁殖動物の選定その他繁殖の方法
  7. その他

法改正によって改善したか?

  • 国民生活センターの相談件数
    2020~2022年度は1500件~1600件で推移
  • 問題ある繁殖業者が劣悪な飼育環境で多数の犬猫を飼育。
    刑事事件に発展することも(長野県松本市、大阪府寝屋川市、さいたま市)

繁殖業等に対する強い規制

  • 現行法には「繁殖業」の業態はなく、「販売業」として登録制の対象
  • しかし、問題繁殖場は全国各地に相当数ある。数値規制はできても、マンパワー不足などの理由で調査できていない
                                               
  • 登録制から許可制へ(=実効的な監督ができる規制へ)
  • 許可制の他の業法
    産業廃棄物処理業、建設業
    土壌汚染処理業、風俗営業
    古物営業 など
    ※貸金業は登録制だが厳しさは許可制レベル

許可制と登録制の違い

  • 「原則禁止」か「原則自由」か?許認可要件、自治体側の裁量の有無が異なる
  • 取消事由(裁量的取消or必要的取消)
    取消事由があったとき自治体は必ず取り消さなければならない(裁量の余地なし)貸金業は登録だが必要的取消事由あり
  • 監督処分の公告
    許可取消処分・営業停止処分をしたときの公告義務。国土交通省HP「ネガティブ情報等検索サイト」で過去の処分歴を確認できる。勧告を受けた業者が期限内に改善しなかった場合、その業者を公表できる

繁殖業等に対する強い規制

段階的規制(自治体の人的資源の問題)
 第1段階・・・届出制 (現行の第2種動物取扱業)

 第2段階・・・登録制 保管、貸出し、訓練、展示、譲受飼養業(現行の第1種動物取扱業)

 第3段階・・・許可制 繁殖、販売、競りあっせん業

海外のペットショップ禁止の流れ

国立国会図書館『諸外国における犬猫の販売規制』—アメリカ・イギリスの動向(2018.10)

アメリカ

  • 一部でペットショップ販売規制
  • 市町村条例:アルバカーキ(2016)、ロサンゼルス(2012)、シカゴ(2014)、ボストン(2016)、サンフランシスコ(2017)、ダイア―(2021)など
  • 州法:カリフォルニア(2017)、メリーランド(2018)、イリノイ(2021)、ニューヨーク(2022)など

イギリス

  • イングランド及びウェールズにおいて、生後6か月未満の犬猫をブリーダー以外(ペットショップや仲介業者)が販売することを禁止(2019・ルーシー法)
  • 生後8週未満の犬、猫、フェレット、うさぎの販売禁止。
  • 購入者は、ブリーダーの施設に出向き、子犬と母犬を一緒に見て、対面説明を受けること

フランス

  • 半数以上の世帯がペット飼育する一方、年間10万匹の動物が遺棄されている。
  • 2020年末から政府が「#StopAbandon」キャンペーン展開
  • 2021年動物保護法の制定
  • 2024年1月1日以降、ペットショップでの犬猫の販売を禁止。ショップでは、保護犬猫の展示を行う
  • インターネットでの愛玩動物の譲渡を原則禁止(条件付き例外あり)
  • 被譲渡者は義務と知識の保証書に署名し、交付から7日間は譲渡不可

日本での可能性

  • 8週齢規制は、動物の健康・安全確保を目的とする規制
     ↓これに対し
  • 6か月未満のブリーダー以外の販売禁止や、ペットショップでの販売禁止は、犬猫の健康安全を目的とするというよりは、ペットショップでの子犬・子猫の衝動買いを防止する(買主・消費者の保護)、あるいは劣悪繁殖業者で生産される犬猫をなくすという「政策的な目的」の規制
  • 日本でどこまで参考になるか
  • 社会(飼い主)の意識改革を待っていたら、いつまでたっても変わらない。
  • 一方で法律を作るには、一般的には、社会的な理解、多数意思による裏付けが必要
  • もっとも、フランスのペットショップ禁止は、捨てられる犬猫を守るために、飼い主のニーズに反する規制ともいえる

閉会挨拶

Eva 理事長 杉本彩

Eva 代表理事 杉本彩

本日は、長時間に渡りどうもありがとうございました。
講師の皆さまにおかれましては、ご尽力いただき誠に感謝申し上げます。改めてお話しを聞き、抵抗力も多いですしハードルの高い改正になるだろうということは重々承知していますが、やはり私たちの民意で社会を変えていくんだ、動物を取り巻く問題を解決していくんだと、強い意志を持ち皆さんで力を合わせて取り組んで行きたいと思います。動物愛護団体だけでは実現は難しいので一般の皆さまのご協力とご理解が必要です。
私たちは動物の代弁者です。その意識を強く持ち、次期法改正に向けて必ず議員の皆さまに変えていただけるよう、またしっかり運用されるよう今後も全力で取り組んでいきたいと思います。本日はどうもありがとうございました。

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