この度当協会Evaは、56の動物愛護団体等とともに、ばんえい競馬廃止の要望書を帯広市長に提出いたしました。
2021年4月18日に、北海道帯広競馬場で行われた能力検査にて、第2障害の上り坂でひざをつき、立てない牝馬ドウナンヒメの顔を、騎手が足で2度蹴った行為に対し、ソーシャル・ネットワーキング・サービス上を中心に大きな波紋を呼んでいることは貴殿も把握されていることと存じます。その後当協会には、一般市民及び全国の動物愛護団体から、この虐待行為をはじめ、ばんえい競馬そのものについても問題視する声が多く寄せられました。そしてその後4月30日の帯広市の会見では、同日に厩務員が他のレースでも馬の顔を蹴っていたことが判明したと報告がありました。
馬の顔面を蹴ることは、愛護動物に対し、みだりに、その身体に外傷が生ずるおそれのある暴行を加えることを禁じた「動物の愛護及び管理に関する法律」(以下、動物愛護管理法という。)の第44条第2項に該当し、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられるべき、れっきとした犯罪行為です。これは当該騎手に対し、戒告処分と当面の騎乗自粛という軽い処分では到底すまされない行為であり、私どもは、貴市は今回の動物虐待行為について、きちんと警察に通報すべきであるとまず申し上げます。
そして、問題は今回の馬の顔を蹴るという行為のみにとどまりません。そもそもばんえい競馬は、最大1トンにもなる重い鉄ソリを馬にひかせること、またソリをひかせながら更に加重される山を登らせること、足場の悪い砂場で競わすこと、そしてレース中の手綱による過度な強い鞭打ちなど、馬にとって非常に過酷で苦痛を伴う競技といえます。
また「レースの見どころ」とされている第2障害では、ひざをつく馬、障害で力尽き倒れこむ馬が頻発し、2018年にはニュータカラコマが心臓発作でレース中に死亡しています。近代日本の動物愛護運動は、明治時代に苛酷な重労働を強いられていた牛馬の保護から始まりました。立つこともままならぬ極限状態の馬の姿を「見どころ」として賭博に用いることは、動物への福祉を著しく逸脱した時代錯誤なレースと言わざるを得ません。また、公正を害する行為や競馬法違反を見ても「世界唯一」不名誉な競馬ではないでしょうか。
動物愛護管理法の基本理念には、「国民の間に動物を愛護する気風を招来し、生命尊重、友愛及び平和の情操の涵養に資する」とあり、対象動物は飼養動物全般です。
また国際的な動物福祉の基本原則である「5つの自由」は、あらゆる人間の飼育下にある動物の福祉の基本として世界中で認められています。
1.飢えと渇きからの自由
2. 肉体的苦痛と不快からの自由
3. 外傷や疾病からの自由
4. 恐怖や不安からの自由
5. 正常な行動を表現するための自由
動物福祉という世界の潮流に反し、動物に苦痛やストレスなど多大な負担を強いるこのばんえい競馬の廃止を決断し、ばん馬を廃馬にすることなく余生を全うさせる手段を検討していただきたく、以下56の動物愛護団体等とともに強く要望いたします。