京都ブリーダー無資格帝王切開事件(2023年4月)

 京都ブリーダー無資格帝王切開事件

第6回判決公判傍聴 (2024年1月18日)

1月18日、獣医師免許を持たない者による繁殖犬の帝王切開事件について、京都府京丹波町の犬の繁殖業の元代表とその妻の判決公判が京都地裁であり傍聴してきました。


令和6年1月18日13時10分~ 京都地裁202号法廷
判決言渡期日、弁論再開等ほかの手続きは無し。
被告人両名に対する獣医師法違反の判決を述べる。

主文
被告人の元代表について
懲役1年2ヶ月及び50万円の罰金に処す。この裁判確定の日から3年間その刑の全部の執行を猶予する。

被告人の元代表の妻について
懲役10月及び30万円の罰金に処す。この裁判確定の日から2年間その刑の全部の執行を猶予する。

理由:構成要件事実
元代表は、第1種動物取扱業とし、代表取締役として業務を管理統括していた。またその妻は、事業本部長として犬の飼育・販売を行なっていた。

①2人は共謀の上、令和4年10/1~12/13の間、21回に渡り事業所内にて21頭に対し麻酔のうえ帝王切開を行った。

②また令和4年10/15、10/18に飼育動物2頭に対して、注射器を使いマイクロチップをそれぞれ体内に入れ診療行為を行なった。

(1)自己所有の動物において獣医師法17条の「飼育動物」に該当しないという弁護人の主張について
獣医師法は1条の2で「飼育動物」は一般に人が飼育する動物と定義している。獣医師法は、飼育動物の保健衛生、公衆衛生の向上を目的とし、「業務として」診療等を行う場合を犯罪とする要件を設けることとしている。

(2)被告人らの行為の獣医師法17条構成要件該当性
元代表は、ペットの販売を目的とし代表取締役として、その妻は事業本部長として従事、動物の繁殖・販売を反復継続して行い、「業務として」に該当。獣医師の資格を有せずの帝王切開手術は繁殖業務のため、マイクロチップ装着は販売業務のために行っている。帝王切開手術で仔犬を出産、注射を用いてのマイクロチップ装着は、いずれも動物の身体への高い侵襲性があり動物の保健衛生に影響がある。よって構成要件該当。

(3)自己所有動物なら財産権があるから、「飼育動物」に該当するとすると、ペットの飼い主の日常的な治療行為が罰されることなるという弁護人の主張について
獣医師法17条は「業務として」を要件とすることで、処罰対象を過剰になることを制限している。ペットの飼い主の日常行為は、「業務として」に該当しないため処罰対象ではなく不当に拡大されることはない。業務性、反復性で、生まれた仔犬を客に販売し営むことから、業務として行なっていたことから本件とは異なる。

(4)畜産動物に対し、農林水産省指針で、飼育者に去勢等の実施が認められていることは、獣医師法17条の「飼育動物」には自己所有動物が含まれないことの証左となるという弁護人の主張について
指針は、飼育者が去勢手術を獣医師でないのに行ってよい、ということを明言したものではない。また、ペットの診療業務、健康管理、繁殖のための診療と、畜産業務のための去勢手術等では、目的や業務としての侵襲性、歴史的経緯から同一視する事出来ない。規模が異なる。

(5)手術が適切に行われていたから違法性が阻却されるという弁護人の主張について
獣医師法は、17条の獣医師免許のある獣医師に限定して業務として診療を行うことを制度化することによって、動物の保健衛生、公衆衛生を担保することとしている。手術が仮に適切であったとしても違法性を阻却するものではない。

量刑
保険衛生を軽視し、法を守る意識が乏しく多数繰り返していた点から、悪質性が高く罰金のみでは相当でない。実際に代表取締役で犯行の主導者であるから責任はより重い。一方、犯行を認めて反省している点、前科なし、親が支援する点、二度と違法行為をしないと誓っている点から執行猶予が相当。

元代表、懲役1年2ヶ月、罰金50万円、懲役に対し執行猶予3年。
その妻、懲役10ヶ月、罰金30万円、懲役に対し執行猶予2年。

<法令適用:刑法60条、獣医師法17条、21条1号>

という判決内容でした。
今回の裁判で一番気がかりだったのは、逮捕時の動物愛護法違反がおとされ、獣医師法違反のみで起訴されていたことから、動物虐待には当たらないと主張し、その上自己所有の動物は診療に当たらない、畜産業界では獣医師資格を持たない者の去勢手術等が行われている、また適切な方法で手術が行われていたとし獣医師法違反については無罪を主張していました。ですが、判決では被告人の行為は違法性が阻却されるものではないとし、獣医師法違反で執行は猶予される判決となりましたが、有罪が言い渡されました。

この裁判が、無罪となったら、今後若しくは現在どこかで密かに行われている無資格者の帝王切開やマイクロチップ装着の診療行為が認められてしまうことになります。この手の裁判では、それを行う理由として、母犬と仔犬の命を守る為と主張しますが、だからと言って無資格で侵襲性の高い手術が許されたら、高い志を持って資格を有している獣医師が存在する意味はなくなるし、何より専門知識を学んでいない素人が、見様見真似の「手技」とも言えない方法で動物の健康を守れるはずもありません。当たり前に考えたら分かることで動物の命を守ることとは到底言えない行為です。

二度とこのような無資格者による動物への傷害事件が起きないことを、切に願います。

獣医師法

(飼育動物診療業務の制限)
第十七条 獣医師でなければ、飼育動物(牛、馬、めん羊、山羊、豚、犬、猫、鶏、うずらその他獣医師が診療を行う必要があるものとして政令で定めるものに限る。)の診療を業務としてはならない。

(診療簿及び検案簿)
第二十一条 獣医師は、診療をした場合には、診療に関する事項を診療簿に、検案をした場合には、検案に関する事項を検案簿に、遅滞なく記載しなければならない。

第5回公判傍聴(2023年11月30日)

11月30日、獣医師免許を持たない者による繁殖犬の帝王切開事件について、京都府京丹波町の犬の繁殖業の元代表とその妻の第5回公判が京都地裁であり傍聴してきました。今回は、論告、求刑、最終弁論でした。

論告・求刑

(論点)

  1. 自己所有動物は獣医師法17条の「飼育動物」に該当するか。
  2. マイクロチップ挿入は診療行為に該当するか。
  3. 被告人は診療を業としていたといえるか。

1.飼育動物に該当する

【獣医師法17条】獣医師でなければ、飼育動物(牛、馬、めん羊、山羊、豚、犬、猫、鶏、うずらその他獣医師が診療を行う必要があるものとして政令で定めるものに限る。)の診療を業務としてはならない。

飼育動物とは、一般に、人が飼育する動物をいう。自己所有か他人所有かにかかわらず、飼育動物である。獣医師法上、自己所有と他人所有は区別されていない。弁護人の「自己所有の動物は飼育動物にあたらない」という主張は失当である。弁護人の主張を是とするならば、ペットショップ等の動物たちは獣医師法に規制されないということになり、不当な結果を招く。
畜産業界においては獣医師でなくても侵襲行為が行われている、との弁護人の主張については、農林水産省の指針においても、痛みを伴う処置については不可とされているし、代替手段があるならば不可とされている。
また、「自己所有」というのは、永続的に飼育することが前提であり、被告人らの飼育していた動物のように、いずれ売却することを前提とする動物は自己所有とはいえない。
新たに提出された弁12号証は、獣医学生が臨床実験を行う場合についての論文であり、ペット販売業者に該当するものではない。
被告人らの行為は、第一種動物取扱業者を規制する省令(令和三年環境省令第七号)に明確に違反している。同省令には、帝王切開は獣医師に行わせなければならないと明記されている。被告人らは、第一種動物取扱業者として動物に関する保健衛生を遵守する義務がある。
ペット販売業者の飼育する動物と畜産動物とは全く異なる。畜産動物は、第一種動物取扱業の規制対象から除外されている。これらを同一視する弁護人の主張は失当である。

2.マイクロチップの装着は診療行為である
動物愛護法第39条3により、マイクロチップ挿入は獣医師が行い、証明書を発行することとされている。同条は、マイクロチップ挿入が獣医師法上の診療行為であることを前提としている。従って、獣医師でなければマイクロチップ挿入は許されない。

3.診療を業として行っていたといえる
被告人らは、動物に対し、繰り返し同じ行為を行っているものであり、業として行っているといえる。
弁護人は、自己所有動物であることを強調するが、動物繁殖販売業者の所有する動物と、ペットとして所有することは異なる。
獣医師法は、診療行為そのものによって直接利益を得る行為のみを対象としているのではない。被告らは、帝王切開やマイクロチップ挿入によって獣医師に払う費用を節約する目的で、自らこれらの行為を行ったものであり、間接的に診療行為によって利益を得ている。
4.情状酌量の余地はない
被告人らは、獣医師の勉強をしておらず、獣医師としての知識もない。このような知識のない者が動物に対し診療行為を行うことは、その生命を脅かす行為である。
被告人らは、獣医師が行っていないにもかかわらず、出生証明書やマイクロチップ挿入証明書を偽造している。
食用肉となる畜産動物とペットは全く異なるにもかかわらず、同一視する主張を繰り返している。第一種動物取扱業者としての責任を意に介さない、無責任きわまりない主張である。
代表者が主要な役割を果たしていたが、妻もこれを知りながら漫然と同調し、帝王切開を手伝い、マイクロチップ挿入にも関わっていた。
被告人らは、動物を大切にしていたと主張しているが、真に動物を大事に思うならば、自ら執刀するべきではない。
被告人らは、帝王切開手術にかかる獣医師の費用27,500円や、マイクロチップ挿入にかかる数千円を支払わず、獣医師を受診させる手間や費用を削減することを目的として、自ら診療行為を行っていた。2回にわたり保健所の立ち入りを受け、指導を受けたにもかかわらず、指導を無視して診療行為を続けた。
その法規範無視の態度は著しく、第一種動物取扱業者としての責任を果たしていない。反省の態度も見受けられず、情状酌量の余地はない。

5.求刑
懲役1年6月及び罰金50万円に処するのが相当である。

最終弁論(元代表)

(骨子)

 ①事実関係は争わない。
 ②獣医師法は他人所有の動物が対象であり、構成要件に該当しない。
 ③被告人の行為は社会的相当性があり、直ちに公益性に反するものでもなく、違法性が阻却される。

1.構成要件に該当しない
自己所有動物に対する診療は診療業務にあたらない。診療業務にあたるという解釈は、社会通念に反する。
獣医師法17条のいう「診療を業とする」というのは他人所有を前提としている。
所有動物の生命活動の維持・促進・保持は、所有財産の使用収益として憲法上保証されている権利である。畜産動物でも同様である。
被告人は、ペットを何匹を飼っている飼い主と変わらない。被告人の行為が許されないとするならば、飼い主が、所有するペットを消毒したり、絆創膏を貼ったり、縫ったりする行為一般も禁止されることになってしまう。
被告人の行為の是非について判断するにあたっては、被告人が①完全に善意であり、心から動物の治癒を望んでおり、②完璧な診療をしているにもかかわらず、それでも違法になるのかという観点が必要である。
動物に対する虐待は、動物愛護法によって規制されているが、本件では動物愛護法では起訴されていないことはきわめて重要である。
畜産業界においては、去勢、避妊、断尾等、侵襲性の高い行為が獣医師ではない者によって行われている。獣医師の診療頭数と畜産頭数を比較すると、診療頭数の方が圧倒的に少ないということは、1,000万頭を下らない動物に対する診療行為が畜産農家により行われているということである。
農林水産省は、必ずしも獣医師による去勢等を求めていない。また、畜産農家が獣医師法違反によって起訴された例は不見当である。つまり、畜産農家による診療行為は不可罰と解されているということである。
弁13号証によれば、畜産農業の小分類の中の畜産類事業に愛玩動物飼育業が含まれている。畜産動物は罰せれないのに、愛玩動物であれば処罰されるというのはおかしい。畜産動物について処罰されていないのは、自己所有動物に対する侵襲行為は「診療業務を業とする」にあたらないから処罰されていないと解するべきである。畜産農家は起訴せず、ブリーダーの行為、しかも動物虐待にあたらない行為のみを起訴するのは差別である。
自己所有動物に対する帝王切開やマイクロチップ挿入は、診療行為にはあたらない。特に、帝王切開をするのは販売を予定していない母体であり、明らかに自己所有動物である。被告人の行為は、所有財産の自然果実の安全な収受行為として許されている。
2.違法性が阻却される
被告人による帝王切開の手術痕は、58cmであり、化膿した形跡や、縫合痕がずれた形跡などはない。止血剤、強心剤も常備しており、保育器や酸素濃縮器も備えていた。手術に要した時間は45分程度であり、適切な方法でなされていたといえる。
また、マイクロチップ挿入については、なおさら身体侵襲が少ない行為である。被告人の行為は社会的相当性を有しており、検察官において公益性を害することを立証しなければならないが、当該立証はなされていない。よって、被告人の行為は違法性が阻却され、推定無罪である。
3.量刑事実について
被告人の行為は、自己所有物に対する行為であり、他者の法益を侵害していない。
獣医学生の実験に関する論文(弁12)においては、動物の「所有者の同意」を違法性阻却事由として挙げている。本件においては、所有者の同意があることは明らかである。
また、マイクロチップ挿入については、侵襲性がきわめて低い。
よって、いずれの行為についても、かりに犯罪が成立するとしても、明らかにその罪は軽くなるべきである。
被告人は、直接対価を得て診療行為をしたわけではなく、間接的な利益を受けたにとどまる。この点からも、診療行為によって直接対価を得た事案に比して、罪は軽くなるべきである。
農林水産省も、自己所有動物に対する避妊去勢等を容認しており、獣医学生による実験行為も許されており、被告人には自らの行為に対する違法性の認識がなかった。保健所の立ち入り検査時も、獣医師法17条違反の指摘は受けておらず、やはり違法性を認識することはできなかった。被告人には、自身の行為が適法であると信じるに足りる相応の理由があったといえる。
被告人の逮捕時には動物愛護法違反が被疑事実であったにもかかわらず、動物愛護法で起訴されていないということは、検察官も、被告人らの治療行為が適切であったと認めているということである。被告人はあくまでも動物の幸せを願って、適切な治療行為を行ったのである。
被告人は、実名や会社名が報道され、動物愛護団体による発信もなされ、1億円以上の経済的損害を被った。また、逮捕によって子の卒業式にも参加できなかった。既に大きな社会的制裁を受けているといえる。
弁11号証のとおり、会社の代表者は第三者に代わっている。会社近くに診療施設を置き、獣医師1名を配置した。それ以外にも獣医師と協力できる体制を築いており、再犯のおそれはない。
また、被告人の父親も監督を誓っている。
よって、被告人は無罪であるが、かりに有罪であるとしても罰金刑が相当である。
最終弁論(元代表の妻)
(争点に関する弁論は、元代表と同一であり、省略)
量刑事実について
1.犯情
被告人は、夫である相被告人に追随するしか選択肢がなかった。会社の固定電話を自らの携帯電話に転送し、家事育児に加えて24時間ブリーダー業に従事しており、まともな判断ができる状態にもなかった。
被告人は、相被告人の従属的な立場であり、多大な酌むべき事情がある。
自己所有動物に対する行為であり、所有者の同意があることから、獣医師法上の法益侵害はない。獣医師法は社会的国家的法益に対する規制であり、個々のペットの利益は動物愛護法で規律されているが、本件では、動物愛護法違反での起訴はなされていない。
診療行為そのものによって、対価を得ているわけではない。

2.一般情状
被告人らは、ブリーダーとして表彰も受けており、愛情をかけて動物を育てていた。固定電話を自らの携帯電話に転送し、24時間対応をしていた。診療行為自体には全く問題がなく、獣医師と同様のレベルの行為であった。
逮捕後、実名や会社名が報道され、動物愛護団体によって公判の様子が発信され、多くの従業員の給与も払えない経済的苦境に立たされた。
被告人らが住む京丹波町は狭い地域であり、逮捕・起訴は皆の知るところとなり、肩身の狭い思いをすることになった。子の卒業式にも参加できないなど、様々な社会的制裁を受けた。
会社近くに診療施設を置き、獣医師1名を配置した。それ以外にも獣医師と協力できる体制を築いており、再犯のおそれはない。
両親や子らに多大な負担をかけたことからも、同様の行為を繰り返すことはない。相被告人とは同居しているが、従属的な関係は解消している。
被告人の両親は、献身的にサポートし、保釈中の身元引受人になっている。
以上から、被告人がかりに有罪であるとしても罰金刑が相当である。

最終意見陳述(元代表者)
本件事件により、自分も妻も大きな影響を受けた。
人生を賭して20年以上この仕事をやってきた。利益が出れば、動物たちの環境を整えるために使ってきた。
一度も弁明の機会なく逮捕され、刑事罰とは比較にならない精神的金銭的損害を受けた。数人の子がおり、卒業式に参加することができなかった。
私の住む地域で、私たちが逮捕されたことを知らない人はいない。従業員にも迷惑をかけてしまった。
妻は私の言うとおりに生活を送ってきただけであり、まさか自分が逮捕されるとは思っていなかったと思う。妻や子を巻き込んでしまったことを、後悔し反省している。
すでに会社の取締役は退任している。現在、会社は、飼育動物診療施設を併設して獣医師が常駐しており、再び同様のことは起きない。

最終意見陳述(元代表者の妻
言いたいことはありません。

判決日
令和6年1月18日(木)


といった内容でした。
検察官は、被告人らの有罪を求刑し、弁護人は、被告人らの無罪を第一とした弁論をしつつ、有罪となった場合を前提とした情状酌量についても言及していました。
被告人らは、最終弁論において、動物たちを「自己所有財産」と表現し、自ら帝王切開を執刀したり、マイクロチップ挿入処置を行ったりすることは、「使用収益行為」「果実の収受」として許されると主張していました。被告人らがどれほど弁明しようとも、被告らの考え方の根底には、動物たちを「所有物」「所有財産」とみなし、温かい命を持った存在として愛護的に取り扱う意思が欠落していたことは、最終弁論からも明らかでした。
被告人らは、自分たちは動物を大切に思っていたと述べていますが、動物を真に心から愛し大切に思う者が、動物たちに対し、無資格のまま、帝王切開というきわめて身体侵襲が大きく生命身体へのリスクも高い行為を行うはずがありません。動物の生命身体の安全よりも、獣医師に支払う費用の節約という目先の経済的利益を追求した結果が、本件事件の本質であるというべきです。
その意味で、本件において、被告人らが動物愛護法違反で起訴されていないことは、非常に残念であるといわざるを得ません。動物愛護法違反で起訴されていないために、被告人らが「自分たちの行為は動物虐待にはあたらない」「動物虐待でないことを検察官も認めた」など主張することを許すことになってしまいました。しかしながら、被告人らが無資格である以上、彼らが行ったのは、動物に対する傷害罪以外の何ものでもありません。
被告人らが主張する情状は、あくまでも、本件事件によって、自分やその家族(つまり人間)が多大な迷惑を被った、それ自体が社会的制裁であるというもので、最後の最後まで動物の立場に立った反省の弁が述べられることは一度もありませんでした。被告人らは、自身の行為の正当性を強調するばかりであり、「動物に対する申し訳なさ」を表明することも、一度もありませんでした。
本裁判で、万が一にも、被告人らの行為が是認されるようなことがあれば、検察官も指摘するとおり、悪質なブリーダーが無資格で動物たちに帝王切開等の危険な診療行為を行う行為が横行することにもなりかねません。判決においては、無資格者による帝王切開やマイクロチップ挿入行為は、決して許されない違法行為であることを正面から認め、厳しく断罪されるよう、次回判決期日にも注視していきたいと思います。

(水野彰子弁護士 記)

第4回公判傍聴(2023年11月2日)

112日、獣医師免許を持たない者による犬の帝王切開事件について、京都府京丹波町の犬の繁殖業の元代表とその妻の第4回公判が京都地裁であり傍聴してきました。今回は、元代表の父親そしてその妻の母親による証人尋問が行われ、その後それぞれの被告人質問がありました。

元代表の父親 証人尋問
弁護人から
父親で関係性は良好。2015年(H27)に定年退職した。今回は息子が動物を大切にしていたことを証明したい。幼少期から動物好きで小学生の時、うずらや手乗り文鳥、クワガタ、カブトムシを飼育。高学年の時は、シベリアンハスキーを飼育。20歳の時、チワワを飼い始め、2223歳頃、そのことがブリーダーの背景となった。会社では出産を終えた犬を犬舎で面倒見ていた。省令改正で出産終了年数が早くなったため、里親に出していたが金はもらっていない。飼育環境は、ケージを積み重ねることはなく、運動場もあり犬同士の相性も見ていた。従業員は、2021年(R3)の省令前から十分いて20数名いた。周辺に鳴き声も臭いも出していない。犬舎にも行ったことがあるが、犬は健康で走り回っていた。痩せていたり傷のある犬はいなかった。みんなのブリーダーから優秀ブリーダーとして表彰認定もされたが逮捕後取り消された。

帝王切開は一時期、動画がアップされていた。帝王切開が違法か聞いたら、自己所有の犬なら違法ではない。根拠は農水省。自己所有の犬なら違法ではないと記述があるし、畜産業はみなやっいてる。帝王切開を見たことはない。HP にアップされていた動画を見た。動画を送ってもらった。帝王切開は麻酔が効いていた。皮膚を消毒し切開は最低限。適切だと思ったのは自分は素人じゃないから。手技は高度なもので短時間で不安も感じなかった。

逮捕後は孫の世話に駆け付けた。3週間のうち8回接見し仕事上のことを聞いた。従業員に給与を払った。従業員は非常事態なのに献身的で感謝している。退職していたので問題ないが孫と従業員と犬が心配だった。出来る限りのことはするつもり。

両親の逮捕で子供が大きな傷を受けた。動愛法で逮捕されレッテル貼られ大きな罰を受けたから情状酌量して欲しい。

検察官から
前職で、開腹手術をしていたとのことだが獣医師ではない。カエルの開腹手術をしていた。両生類や魚類には規制はないから研究の一環でしていた。獣医師法のことは知っている。獣医師でない者が手術するのは適切ではない。本人も反省している。

元代表の妻の母親 証人尋問
弁護人から
母親で関係性は良好。娘は幼少期から生き物好き。しっかりして面倒見よく優しい子。知り合いの犬が殺処分されそうになり、保健所から引き取ったことがある。2歳半くらいから3匹飼っていた。テーマパークや遊園地、わんわん王国で犬の触れ合いも好きだった。犬以外の動物も好きだったが特に犬が好き。家の犬は7割娘が面倒見て、3割が母親。散歩も行っていた。ブリーダーをやっていたのは知っていた。身元引受書の時、娘から逮捕されるかもと聞いた。逮捕の当日に主人から聞いた。すぐに孫の面倒を見てあげたかった。学校に行かせないとと京丹波の自宅まで行きずっと面倒見ていた。子供の世話は、小さい時にご飯を作ったり子守りをしていた。実名報道され下の男の子は表情に出ないが、上の女の子はショックを受けていた。帰ってきた娘に「大変やったね」と言うと頷いていた。保釈されて精神状態が心配で3日くらい泊まった。今もlinelineの電話で連絡を取り合っている。直接行くこともある。突然夫とまめに行こうと。娘をどう監督するかは突撃訪問する。

検察官から
ブリーダーの仕事とは、出産させ関わる方に売買していた。仕事は見たことがある。留置され逮捕されるって大変なことになったなぁと思った。突然家に行って中の様子を見る。具体的にどう生活や仕事を観察するかは、T先生に、犬の出産をしてないか確かめる。されてなかったら二人に注意する。T先生や他の人にやってもらえないか聞く。

元代表の被告人質問
弁護人から
帝王切開やマイクロチップをした犬の所有権は会社のもの。飼育管理上犬の健康を保ちストレスを貯めないようにしていた。犬舎の広さは、1,400坪、1,000mのフェンスがある運動場もあった。ケージの大きさは、2021年(R3)の省令に適合していた。20年前に丹波町に移設。夜間は従業員が21時~22時までいたが、それ以降は自宅が隣接していたのでほぼ24時間体制だった。

帝王切開をする判断は、難産になりやすい犬種が多かったから計画的に帝王切開していた。帝王切開の兆候は、通常体温が38度~39度のところ37度に低下し、パンティング(早い呼吸)や一次破水、二次破水が確認されたら手術室に。麻酔ガスのあと手術台に乗せ気管挿管、仰向けにして腹部の毛を刈り、滅菌手袋して滅菌機材を使って切開。滅菌機は各施設に合計3台あった。無麻酔ではない。切開は510cmで胎児ギリギリの大きさ。小さい時は狭く大きく開き過ぎないようしていた。メスを入れ出すまで5分以内。出してから子宮、腹膜、腹筋、表皮を縫合。1日~2日抗生剤を使い、合併症を起こさないようにしていた。帝王切開で気を付けていたのは、多産なのでいかに安全であるか、心停止、出血の場合いかなる場合でも対応できるようにしていた。新生児用の保育器も集中治療室に。15分~30分、35分。覚醒まで+10分で25分~45分。縫合の傷痕など病院と自分の差は、自分の方が小さく、病院と比べると予後も良かった。それは侵襲性の高い手術を回数多くやっているから。後遺症や死亡は一度もない。
自分で帝王切開をした理由は、苦しんでいる姿を見たくなかったから。夜間休日は引き受けて貰えなかった。その前は、三重県四日市市や津市。やっていい悪いの認識は全く問題ない。それは家畜商の知り合いがいて、農家の肉牛や豚の去勢手術行為を獣医師以外がやっていたことを知っていたから。他、自分がやる根拠は、保有している財産権を考慮し適正に医療行為をしていることに問題はないから。帝王切開の教材DVDを見たり三重県で手術を立ち会わせてもらった。

2017年(H29)に行政指導を受けたあと帝王切開をやめたが又再開した。書面の記憶はない。2019年(R元)東大阪で開業。獣医師の指導監督があることを勝手な解釈で始めた。動物の為、夜間いつくるか分からず死亡するケースも多く発生した。薬品の取扱いも適正だったし、再開した時、産業動物の状況も変わってなかった。

マイクロチップは、注射器の針の中にあって皮下注射。個体識別は耳もあるが脱落しないために組織の厚い所に打つ。マイクロチップで稀に血は出るがほぼ出ない。出たら圧迫止血をする。なぜ自分で打っていたかは法令で義務化されたから、遵守するため安全にやっていた。マイクロチップの痛みや後遺症は一度もない。

逮捕後は退職し今は無職。販売業者や仕入れていた薬品会社やペット保険から取引停止され損害を被った。銀行融資も止められた。薬品がストップしたら病院がままならないし犬の健康にも影響がある。全ての責任は私で妻に責任はない。共犯という認識もなかった。自分の法律に対する認識の甘さで妻に申し訳ない。風評被害で虐待していたとされ心苦しい。虐待してないとはっきり言いたい。

動物に対しては、常にシステム環境作りをしていた。逮捕されたあと父母が力になってくれ、従業員を取り仕切ってくれ、銀行に代わって金を貸してくれた。「グレー」で獣医師法違反となり、現在は会社に関与していない。

検察官から
帝王切開は17年前からでその前は動物病院で。自分でやるのは全く問題ないと思っていて農家の動物と同じだと思っていた。農水の資料は去勢切開で畜産農家から聞いた。畜産農家は自己所有はやってもよい。産業と愛玩の意識はなかった。※ここから先はQ&A形式で

  • 獣医師はどうやってなるのかは知っているか?入学して6年後、国家資格を与えられる。
  • 手続きがあるのはなぜか?それだけの技術が必要だから。
  • 獣医の勉強はしたのか又は獣医師の資格はあるのか?ない。
  • 帝王切開を自ら始めた理由は?結果が最善だから。
  • 始める前は結果は出てないじゃないか?…。夜間休日など対応できない時間があるし解消しようとしてやり始めた。夜間対応出来るところは一軒もなかった。そこまで行くまで大変になることがあった。
  • 京都にはないのか?慣れ親しんだ三重県に行った。京都で専門的にやる所はない。奈良県のT獣医師が休みの時は、京都で見つからない。京都でペット保険の担当者に聞いたり。
  • 仔犬が産まれたら出生証明書を作るのか?そのように法で決まっている。
  • 診断書や出生証明書を作成したか?行政指導によって作ったが全く知らない訳じゃないけど確認してない。
  • コーラという犬の診断書や出生証明書に獣医師の名前を書く欄があるが?知っている。
  • その欄があるのはなぜか?獣医師が産まれたことや診断内容を証明するため。
  • 2022(R4) 1017日に指導内容の不備を解消するため、コーラの診断書に東大阪のT獣医師の名前があるが?行政指導書面を記載。後日作成した。指導を受け、ないと言われあとから付けるとし用意した。後付けで作った。
  • T獣医に見せたのか?コーラと言われてもよく分からない。
  • 立ち入りで2017(H29)の時、何と言われた?手術室も薬品も廃棄しろと。適切な入手方法じゃなかったから。獣医師じゃない私の家に大量の薬があったから。
  • 2017(H29)はやってはいけないと言われていたか?聞いてない、覚えてない。薬事法のことかと思った。2017(H29)は薬事はダメだった。帝王切開はどの法律か知らないから。あってはいけない物、薬品があったから注意を受けた。全身麻酔薬とか病院じゃないところにあることがいけないことは理解していた。
  • 2019年(R元)5月に開設したあと帝王切開は?東大阪でやったり。薬事が適正で指導監督が受けられるとし自分でやるようになった。犬舎から車で1時間半。帝王切開は東大阪で稀にやってた。帝王切開は京丹波のワンラインの手術室で。2022(R4)12月病院開設してその前はないけど手術室はあったが届出はしていなかった。診察受けて処方されたらいいと思っている。詳しい知識はない。
  • 薬品の勉強は?作用は勉強したが法令のことは知らない。
  • なぜ薬事法は解消されたと思ったか?勝手に解釈した。内部通報で確認させて欲しいと言われた。
  • 2022(R4) 10月~1213日の間、立ち入り後にやってたのはなぜか?深く考えてなかった。理由は分からない。410日にやっちゃいけないって言われた。
  • 会社のことを考えたらもっとちゃんと考えないといけないんじゃないの?その通り。マイクロチップは件数が増えたから。注射の件数は少ないけど、それ以外は妻がやってた。
  • 自分でやろうと思ったのはなぜ?危険性が少ないし義務化されたから。
  • 義務化と自分でやることがどう繋がるのか?全頭やらなきゃいけない。診察の上で何ら問題ない行為だと思ったから。
  • それは何か見たり誰かから聞いたりしたのか?診察したら適法と理解した。皮下注射と同じだから。
  • マイクロチップはいつからか?5年程度かな。
  • 「グレー」と捉えかねない、「グレー」と言ったけど?逮捕拘留までされたから重く受け止めてるが、適法と思っていたから司法判断に任せたい。
  • 退職後、会社がどうなってるかは知らない。取引停止のことは留置所にいる時に聞いた。2023年(R5)の123月に動物病院で手術したって資料があるが?資料は分からない。記憶にない。
  • 会社に関わっているのか?車を運転しただけ。

裁判官から
登記はそのままだけど、会社の代表取締は退任したか?はい、変えた。今は第三者。

元代表の妻の被告人質問
弁護人から
帝王切開は10なん年前から。自分で病院が見つからなかったからやるようになった。三重で世話になっていたところに行っていたが時間が掛かっちゃうから。仔犬が死んだり母犬に負担がかかる。三重はブリーダー専門ではなく一般の人も行っていた。

帝王切開の兆候があって夜間休日に近くのところにお願いしたことあるが、かける所断られた。一度目と二度目に同じ動物病院でやった犬の手術に時間がかかった時、お腹の癒着があり大変だったと言われた。前回の帝王切開の時に問題があったのでは?と思った。他のブリーダー情報で帰ってきてから母犬が亡くなったという話しも聞いた。仔犬が目覚めなくて亡くなったり。
計画的に早く産ませることについて、兆候がないのに先生の都合で計画的に早く産ますと、母性がまだないから、産んだ後子育てしないとか攻撃するなどがある。3日違うと仔犬の大きさや体力が全然違う。おっぱいを吸う力が弱かったり。

元代表に、ここで出産させたい、一人じゃできないから手伝って欲しいと言われた。薬品、器具の購入準備には関わってない。大丈夫なのか?と思いそう言っていたと思う。問題点については、自分の飼っている犬にやる分には問題ない。その話しは養豚の友達から、歯や尻尾を切ったり去勢手術を自分たちでやっていると聞いた。自分の役割は、消毒したり麻酔の操作。無麻酔の手術はない。準備の時は固定したり消毒したりおしっこシート敷いた。手術中、滅菌してからは母犬には触れちゃいけないから触らない。仔犬は拭いたりするから触ることはあった。手術の作業は元代表に教えられた。母犬が体調急変して死亡したことはない。産まれてきた子は保育器に。母犬に抗生剤を投与。状況によって痛み止め。病院は30分~1 時間くらいのところ。傷跡は小さく、小さい方が回復が早い。
病院で手術を見たことは、ガラスの扉になっているので見ようと思えば見れる。去年12月の指導に立ち会った。元代表に違反ならやりたくないと言ったが自分では判断できない。やるって言われたらやる。

ブリーダー業を始めようと言ったのは元代表が三重県で。準備は元代表。自分は世話担当だった。京都で法人化も元代表。自分は主体性持ってやってなかった。元代表に言われてやってた。産まれてくる現場の総括は自分。従業員のこととか。営業時間以外は電話が 24時間自分の携帯に転送。常に離さず寝ている時も鳴ったら取る。丸一日考えない日はない。休みはない。

2022年(R410月の行政指導の関係で書類の不備があった。体裁とか業務が増え全て自分が指示を受け対応した。精神面は色んなことが不安でご飯も食べられず寝ることも出来なかった。給与はずっともらっていない。利益から生活に必要な金を横領することはない。マイクロチップをやろうと言ったのは元代表。最初装着は元代表。自分は義務化が決まり件数増えてから。工程は、読み取りリーダーを当てて確認し首の後ろを消毒して装着。先端にマイクロチップが付いた針で首の後ろの付け根に装着。重要な神経はないと聞いてた。体調悪くなったことはない。2022年(R41017日行政指導のあとにやった記憶はない。T先生往診。往診してない時私。18日に付けた記載はその前に打ったこともある。帝王切開は奈良の動物病院。今は敷地内の病院で勤務獣医師。対応できない時は奈良の病院。2023年(R54月まで連れていってた。それ以降は奈良に。元代表から言われたことは従う。24時間体制の業務で優先するのは、自分の子供より犬のことが第一だった。今は元代表は退職してるので指示はない。また帝王切開するから手伝ってと言われたら、違反だから二度とこういうことになりたくないから二度とやらない。違反については人から言われた。報道で極悪非道のブリーダーと見られ悔しい。ブリーダーは犬の頑張りがあっての職業。感謝して過ごしていきたい。
表彰は接客した人とか、犬の評価や施設だったり、迎えてもらったお客から。拘留中はどうしたらいいか一人ぼっちで不安だった。起訴事実で無罪を主張してるのは弁護士から意見聞いて同意した。

検察官から

  • 自分たちでやる前、病院で時間かかったり術後良くなかったことがあったか?あった。
  • 時間がかかると犬に影響はあるか?ある。正月に非番の獣医がやって、終わったあとその後妊娠することはなかったと聞いた。
  • 元代表から聞いて大丈夫かな?とは何が大丈夫かなと?漠然と犬が大丈夫なのかなって。
  • 獣医師資格持ってないと知っていて、あなたも持ってないのに帝王切開は影響あるって思わなかったか?大丈夫だと思った。
  • 不安とか伝えた?大丈夫なの?って聞いた。
  • 元代表は何て?覚えてない。納得したからってことだと思う。
  • 犬の帝王切開と養豚の歯や尻尾が同じと思っていた?思っていた。
  • 尻尾切って死ぬことはある?知らない。
  • 知らないのに養豚の歯とか尻尾のことと同じと何で思うのか?切っていることは同じだから。もともと病院で獣医がやっていたのを自分でやってた。
  • 国家試験で免許がいると思うが?考えたことない。
  • 帝王切開で悪い影響が残るんですよね?聞いた話し。悪い影響を及ぼされて産めなくなったと聞いただけ。
  • 実体験もありましたよね?いいえ。
  • 時間かかった時、癒着したって言ってたのは実体験じゃないの?実体験です。
  • マイクロチップは最初から全部か?覚えてない、最初は病院。
  • なぜ自分たちでやるようになったのか?元代表の指示。
  • 何も思わなかったか?思ったかも知れないけど曖昧。
  • 2022年(R41017日に行政指導があり、18 日のマイクロチップの挿入は自分ではしてないということか?元代表がやったかも分からない。
  • マイクロチップ装着証明は誰が?スタッフや色々な人がやったり。
  • マイクロチップ装着証明書は、獣医師の名前でT獣医師の名前が書いてあるが誰が記載した?分からない。
  • あなたか?私ではないと言い切れない。
  • T先生の名前がどうして書いてあるのか?考えてなかった。
  • あなたか元代表がやったのなら嘘なんじゃないのか?…。
  • あなたがマイクロチップをやってT先生と記載したのか?あったことがあるかも。
  • あなたの名前は書いてないのか?書いてない。
  • どうして?T医師ってなっていた。
  • T医師の名前でってなってたのは何か?特に何も考えてなく。
  • 実際と違っていても何も考えなかったのか?何も考えてなかった。
  • 装着証明書は犬を買った人に渡していたか?渡していたかな?登録書の方か?
  • 購入した人から装着証明書をもらっていますが?それならそうだ。
  • 言われたら出すのか?そうかも。
  • あなたや元代表が装着したと言うのか?言わない。
  • T医師と書いてあったら客もそう理解するんじゃないか?そう思うと思う。
  • 買ってくれた人にそれでいいのか?書類の重要性を思わなかった。
  • 暮れに立ち入りがあってどういうことを言われた?聞いてない。立ち入りは知っていた。
  • 何で立ち入りなのかどんなこと言われたとか気にならなかった?あまり聞かなかった
  • 2022年(R412月の立ち入りで何言われたか知ってる?手術室開けて下さいと。
  • どういう指導だったか?書類で書けてなかった所とか。
  • 2022年(R410T医師が往診あったか?往診あった。
  • T医師にお願いしようという話しにはならなかった?私は決めることはしてない。指示に従っていた。
  • 生活にかかる費用は会社からもらってないのか?目の前にある物で生活してた。
  • 水道とか電気とかお金がかかるがどうしていた?引き落としで自分は関わってない。管理は元代表で元代表の名前で。今は会社の業務はメインではなく犬の世話はする。
  • 1月~4月犬の帝王切開を奈良県でやってたの把握していたか?はい。
  • 領収書の 27,500 円は一頭の代金?そう。
  • 今は違法かどうかは分からない?私には判断できない。
  • あなたは犬の世話はしていくのか?目の前で犬がいたらやらなければならない。
  • 会社に関わるのか?一人では決められない。今の段階でそういう話しはしてない。今の生活費は元代表から、犬の販売代金でやりくりしている。

次回論告・弁論、結審

11/30(木)11:00 から 202 号法


といった内容でした。
相変わらず自己の所有する財産権のある動物に対し、所有者自ら帝王切開を行っても問題ないとか、豚の去勢、断尾、歯切りは獣医師以外が行っていると畜産農家から聞いたから問題ないなどと自己弁護を並べました。獣医師資格もないのに手術の手技は高いと手術方法について饒舌に語る姿はアニマル桃太郎と全く同じ。一方「すべての責任は私」「法律に対する認識の甘さ」と獣医師法違反は認めつつ、グレーだから司法に任せたいと無罪を主張するなど矛盾も感じます。犬を大事にしていたから虐待なんて言われて悔しいと言い、獣医師資格の難しさや資格の必要性が分かっていながらも、大切にしていたはずの犬を無資格者が帝王切開していたことについて、反省の色はなく無罪主張とは憤然たる思いです。

次回は論告・弁論、結審。最後までしっかり注視していきます。

第3回公判傍聴(2023年9月)

9月12日、京都府京丹波町の犬のブリーダーで代表を務めていた夫とその妻の第3回公判が京都地裁であり傍聴してきました。

検察官
日本獣医師会によると、家庭飼育動物の診療、麻酔、MC装着は動物福祉愛護の観点で…、
農水の資料によると、注射針を使った獣医療行為は獣医師がやらねばならない
(※声が小さい上に発言が明瞭でなく全く聞き取れず。内容が不確実であることをご了承ください)

弁護人

  • 去勢手術について、畜産関係の公益法人によると除角、去勢においては獣医師指導のもと、健康等確認し行う。
  • 農水省畜産振興課の家畜のQ&Aでは、「去勢、断尾、歯切り等を行う際に、「獣医師等の指導の下」とあるが、「等」とは誰を指すのか。に対し「獣医師等の「等」は、当該処置に係る知識と熟練した技術を有する者である。
  • その他、日本獣医師会や東京都、製薬会社の資料を例にあげ、
    ・ペットを所有している者の外科は診療には当たらない、としているため獣医師法違反
     ではない。
    ・利益を持ってではないため業務ではない。
    ・自己の所有する財産権のある動物を所有者自ら行っても診療行為に当たらない。
    ・製薬会社の職員が実験動物に行う場合それに該当しない。

弁護側としては、公訴事実もなく追加立証もないことから公益目的に従って意見を弁論で述べるだけ。


前回に続き非常に納得のいかない公判内容でした。
そもそも獣医師法違反だけで問うから、医療行為に当たらないとか利益は得ていないなどといった理屈になります。動愛法違反であれば、明らかに無資格者による帝王切開は殺傷行為になるでしょう。
なんの知識も技術もない素人が行う帝王切開によって、これまでどれだけの動物が痛み苦しんだのか、そこでどんな行為をしてきたのか、また薬剤の入手など、それらが全く明らかにされない裁判で、ただただ獣医師法は無罪であるとその理屈だけ並べられる裁判を、傍聴席から聞くことしか出来ない世の中の不条理を心底痛感します。

次回は、11月上旬に被告人質問、情状証人。下旬に論告、結審 となります。

第2回公判傍聴(2023年6月)

京都WANLINE(ワンライン)第2回公判

6月13日、京都府京丹波町の犬のブリーダーで代表を務めていた夫とその妻の第2回公判が京都地裁であり傍聴してきました。

傍聴レポート

罪状認否
元代表の男、前回の公訴事実について変更はありません。
弁護人、構成要件に当たらないので無罪を主張します。

元代表の妻、変更はありません。
弁護人、元代表同様、構成要件に当たらないので無罪を主張します。

弁護人冒頭陳述
元代表、元代表の妻共通
帝王切開とマイクロチップの装着、獣医師法第17条飼育動物に当たらないので無罪

獣医師法

第十七条 獣医師でなければ、飼育動物(牛、馬、めん羊、山羊、豚、犬、猫、鶏、うずらその他獣医師が診療を行う必要があるものとして政令で定めるものに限る。)の診療を業務としてはならない。

自己所有の犬であり、自己所有の動物は飼育動物に当たらない。診療業務とは言えない。

他人所有の物で、診療に限定されていることから獣医師法第17条に抵触しない。

マイクロチップの装着も診療行為とは考えられない。
農水省に問い合わせたところ、除角、断尾、歯切り、烙印も獣医師とは限らない。
利益を持ってやるに限られていて、今回の帝王切開やマイクロチップの装着は、診療ではない。

動物愛護管理法39条2第1項、動愛法施行規則では、獣医師法第三条の免許を取得している者、愛玩動物看護師法第三条の免許を取得している者とあるが、これは動物愛護法であり獣医師法ではない。
畜産動物はよくて犬にだけは違法なのか。自己所有である牛や豚と同じく情状に考慮されなければならない。

次回期日は未定


という非常に納得のいかない陳述でした。このような行為が動愛法で裁かれていないこと自体問題だし、利益を得ていないとか自己所有の動物とか、そういった獣医師法を逆手に取ったこじつけの理屈で無罪を主張することに腹立たしさを感じます。当たり前に考えたら、獣医療を学んだことのない獣医師資格のない素人が、帝王切開やマイクロチップの装着を正しく出来る筈はありません。利益を得ていないからといっても、利益を削減するために獣医に診せず自分達で行っていた訳ですから、間接的に獣医師が得るはずの利益は損なわれていたことになるではないでしょうか。

昨年10月には、大阪府泉佐野市のブリーダーが、獣医師免許を取得していないのに犬にマイクロチップを装着したとして、獣医師法違反と偽造有印私文書行使の罪で有罪判決が出ました。

今回、当協会は、動愛法違反の愛護動物傷害罪(動物愛護管理法第44条1項違反)で再捜査の上、訴追していただくよう京都地方検察庁宛に要望していますが、現在、動愛法違反は問われていません。しかもこの先獣医師法さえも無罪となったら、今後自己所有の動物の安全性が担保されなくなってしまいます。引き続き厳しい処罰を切に望みます。

(2023年6月14日)

京都地方検察庁に訴追の要望書提出

このたび当協会Evaは、京都府京丹波町の犬のブリーダーで代表を務めていた夫とその妻に対する獣医師法違反事件について、愛護動物傷害罪(動物愛護管理法第44条1項違反)で再捜査の上、訴追していただくよう京都地方検察庁宛に要望しました。

獣医師以外による帝王切開は、法令上明確に禁止されています。

第一種動物取扱業者及び第二種動物取扱業者が取り扱う動物の管理の方法等の基準を
定める省令
(令和3年環境省令第7号)

第2条6号チ
「販売業者~にあっては、販売~の用に供するために犬又は猫を繁殖させる場合であって、帝王切開を行う場合にあっては、獣医師に行わせるとともに、出生証明書並びに母体の状態及び今後の繁殖の適否に関する診断書の交付を受け、5年間保存すること」

この省令は、動物取扱業者の基準遵守義務を定める動物愛護管理法21条1項を受けて環境省が制定し、令和3年6月1日に施行され定められています。(前記省令の施行日と同日に環境省が作成した「動物取扱業における犬猫の飼養管理基準の解釈と運用指針」の第3の6にも同じ記載があります)。

繁殖犬の帝王切開は、獣医師以外の者が行ってはならないことが法令上明確であり、犬猫の身体に対する重大な侵襲を伴う帝王切開行為は、違法であることはいうまでもなく、動物愛護管理法違反(第44条1項)に該当していると考えます。

帝王切開手術には、感染症や出血、麻酔薬の量やタイミング・管理、術後の疼痛管理などさまざまなリスクがあります。獣医療の知識を得ていない者は、これらの問題点を何一つクリア出来ないことから、無資格者の帝王切開は、到底手術などとは言えず単なる腹を切る殺傷行為に他なりません。本件において、被告人が麻酔をしていたことをもって、みだりに傷つけたとの立証が困難と検察庁が判断したとしても、獣医療に関する知識の全くない無資格者が、適切な麻酔の量やタイミングを図れるはずもなく、また何層にも渡る腹部の切開や縫合の手技も自己流の杜撰なものであったに違いありません。ましてや、素人が術後の疼痛管理を出来る筈はなく、無資格者による帝王切開が、犬にとってどれだけの危険と予後が苦痛であったか火を見るよりも明らかです。
長い期間、獣医療を学び獣医師国家資格を取得した獣医師の技術と経験をってしても、帝王切開は、慎重かつ危険を伴う手術であることから、無資格者が適正に行えるものではありません。

現在、長野地方裁判所松本支部で公判中の長野県松本市、犬の繁殖業者「アニマル桃太郎」の動物虐待事案において、長野地方検察庁松本支部の検察官は、繁殖業者の元代表による無資格・無麻酔帝王切開について、動物愛護管理法違反(第44条1項)として追起訴しました。
被告人は、ドミトールという薬剤を使用していたとして動物傷害罪の成立を争っており、当該薬剤を使用していたかの事実が大きな争点となっていますが、麻酔の有無に関わらず、無資格者が安易に腹部を切開することに相当の苦痛があったであろうことが複数の証人により明らかになっています。

獣医療資格を持たない者による帝王切開について、当協会Evaは、殺傷行為として動物の愛護及び管理に関する法律違反(同法第44条第1項愛護動物殺傷罪)としてあらためて捜査し、訴追していただくよう要望します。

(2023年5月18日)

初公判傍聴(2023年4月)

京都WANLINE(ワンライン)初公判

4月26日、京都府京丹波町のチワワ・ボストンテリア・パグ・フレンチブルドッグ等の犬の繁殖、販売業で代表を務めていた夫とその妻の初公判が京都地裁であり傍聴してきました。

この事件を知ったのは、2月末。長野県松本市の無資格者による帝王切開事件に続き、またもや獣医師免許を持たない者による帝王切開が行われていたことに愕然としました。その内容は、昨年10月に京丹波町事業所内で、フレンチブルドッグ2匹に個体認証用のマイクロチップを注入器で装着した疑い。また、同月1~24日、フレンチブルドッグ3匹とボストンテリア3匹に帝王切開をした獣医師法と動物愛護法違反の疑いです。

傍聴レポート

獣医師法違反について審理
検察の公訴事実
京都府内の繁殖事業者本部内にて、共謀し、
令和4年10月~(おそらく12月までの間)21回、21頭の犬に麻酔をかけ帝王切開をおこなった。また飼育動物2頭に注射器を使いマイクロチップを装着した。

裁判官から黙秘権の告知

罪状認否
元代表:各事案について間違っていない。
弁護人:公訴事実について間違いはなく争わない。が、獣医師法に違反しているか慎重に検討されたい。

元代表の妻:各事案について間違っていない。
弁護人:公訴事実について間違いはなく争わない。が、慎重な判断をお願いしたい。

証拠調べ手続き、冒頭陳述
元代表は、繁殖の代表取締役で元代表の妻は事業本部長。13年前から元代表は、帝王切開を行い元代表の妻、補助をしていた。
マイクロチップは、当初元代表が行っていたがその後元代表の妻が装着をしていた。

平成29年、令和4年に保健所から指導を受けていたが続けていた。

証拠意見
元代表弁護人・元代表の妻弁護人:全て同意します。

各犬の種類、事業所を明らかにするもの、事業所の手術室を明らかにするもの、獣医師の供述調書「マイクロチップ、帝王切開共にやっていない」との旨。
12~13年前に始めたこと、帝王切開は元代表の妻は補助で犬に触れることはない。マイクロチップのやり方を元代表の妻に教えやっていた。
平成29年行政指導があった時は、帝王切開はある程度慣れてきていた。

マイクロチップは令和4年6月に義務化されてから装着率が増え、元代表の妻がやっていた。

次回公判は両名とも6月。


公判では、動物愛護法違反が取り下げられ獣医法違反のみでした。その理由が麻酔をしていたからだとしたら非常に納得いきません。麻酔の量やタイミングはもちろんのこと、獣医師の資格を持たない素人が、帝王切開などといった大掛かりで母犬にも仔犬にもリスクのある手術が満足にできる訳がありません。しかもやったことは認めるが獣医師法に違反しているか慎重に検討して欲しいとは呆れます。

昨年10月には、大阪府和泉佐野市のブリーダーの男が、香港へ輸出販売する犬7頭に対し、獣医師でないのに自宅で注射器を使ってマイクロチップを装着する医療行為を行った獣医師法違反と、輸出する犬2頭の検査を空港で受けた際、獣医師の記名と押印がある偽造の証明書を提出した偽造有印私文書行使の罪で、懲役2年 執行猶予3年の処分が下されました。

今回の事案は、無資格者による殺傷の罪(動愛法44条1項)でも問えるような行為であることから、麻酔いかんによらず厳しい処分を切に望みます。

Evaオリジナルグッズの販売ぺージへ

teamexpo2025

地方創生SDGs官民連携プラットフォーム

いのち輝くこどもMIRAIプロジェクト

yahooネット募金

つながる募金

Otameshiおトクに試して社会貢献

『公益財団法人 動物環境・福祉協会Eva』に、いいね!やシェアだけで支援金を届けられます。~ NPO/NGOを誰でも簡単に無料で支援できる!gooddo(グッドゥ) ~