パネルディスカッション「多頭飼育問題」について

 パネルディスカッション「多頭飼育問題」について

平塚ライオンズクラブ講演

6月4日、Evaは平塚ライオンズクラブさん主催の「どうぶつ愛護講演会」に参加してきました。
第1部の記念講演では、「人と動物の共生社会を目指し私たちにできること」とし、動物虐待の罰則強化や長野県松本市の史上最悪の動物虐待について。そして次期法改正の課題について、なぜそれが必要なのか分かりやすくお話ししてきました。

第2部多頭飼育問題についてパネルディスカッション

パネルディスカッション「多頭飼育問題」

パネラー

  • 福原美千加様(みかん動物病院獣医師)
  • 串田誠一様(弁護士、参議院議員)
  • 松永新一郎様(神奈川県動物愛護センター 所長)
  • 杉本彩

コーディネーター
臼井照人様(平塚ライオンズクラブ会長)


臼井コーディネーター
パネルディスカッションの意見を募集した所、昨今多発している多頭飼育崩壊問題が多かった事から、パネラーの方へお聞きして参ります。「多頭飼育崩壊」とは、商売目的含め飼い主が不妊・去勢手術を行わず増やし、飼育環境が崩壊し糞尿や死骸が山積する環境で、近隣住民も騒音や糞尿の異臭等で生活環境を侵されてしまうという事案です。

昨年、伊勢原市で、大型犬を含め犬100頭、猫60匹という神奈川県で最大級の多頭飼育崩壊がありました。

<経緯>
5年前から、近隣より騒音や糞尿の異臭で保健所に相談。改善されず頭数が増えてしまったと、別居している飼い主の息子さんからボランティアへ「助けて欲しい」と相談があり発覚。犬100頭は、法律で定めている狂犬病ワクチンも5年間未接種のまま。飼育場所は無人。大型犬含め係留されていない犬と猫が脱走し咬傷事故が起きる危険性があり、警察がセンターに一時保護を打診。県側は、センターは「譲渡目的の見学施設である為」1匹4,000円の手数料を払い、所有権放棄をしない犬猫は譲渡が出来ないので、虐待現場であっても一時保護は難しいとの返答。狂犬病ワクチン未接種ということで、せめてワクチンだけでも接種して貰えないかとボランティアが保健所に要望するも、センター課長より「犬が脱走し咬まれ感染してしまった人にはお気の毒だが、犬と人間を隔離するので他へ感染する心配はない」「所有権のある飼い主に対し、無理やり狂犬病ワクチンを接種はすることは、指導に限界があるので難しい」との回答。

狂犬病は治療方法がなく、2020年にはフィリピンで犬に咬まれた方が日本に来日後3か月後に狂犬病発症し死亡した事例がある。

行政で、未接種のままを「指導の限界」とせず、接種出来る方法や多頭飼育崩壊へ行政が立ち入り、命令等は出来ないのでしょうか。

串田様
行政の立ち入りは勿論出来ます。飼い主には所有権があるが、警察官職務執行法第六条1項で、名古屋で犬を救い出す事例があり、警察庁指揮官であるトップ官僚に、国会で「救い出す事が出来る」と答弁して頂けました。

全国でこのような事案があった時は、その質疑の資料や動画が残っているので、是非救い出して頂きたい。今後の法改正で、必ず救い出せる法律を作って行きたいと思っていますが、現行法でも救い出す事は可能である事を知って頂きたい。この事は、行政も警察官も知らない人が非常に多い。飼い主に対しては、動物愛護法441項2項で刑事罰の処罰があるので、厳しく処罰して頂きたいです。

臼井コーディネーター
多頭飼育崩壊でセンターに動物を収容する場合、14,000円を払わせ所有権放棄をさせるとの事ですが、多頭飼育崩壊の飼い主がすぐに数十匹分は支払えない、しかし、明日にも死んでしまうような虐待現場の動物に対しどのように対応していますか?

松永様
その方の支払いの限度というのもあり、今のセンターはかなり頭数たくさんいるというのもあり実際に何十頭ではなく少しづつ頭数を分けて頂き、調整しながら入れていくという形になります。もちろん入れない間にどんどん増えてしまうこともある。その場合、その方の生活の困窮などがある場合は、獣医師会とも連携しているので不妊・去勢手術も出来るので手術して頂いた上で調整しながら少しづつ入れていくという形が現状です。

臼井コーディネーター
神奈川県は、他県にはない収容動物の治療やしつけ費用に充てる寄附を募り運用しています。その「かながわペットいのち基金」は、現在1億円あるそうです。多頭飼育崩壊で、本来センターに収容すべき動物の枠がなく、ボランティアが保護した場合、現在は、狂犬病ワクチンも含め、全てボランティアが費用を捻出していると聞いており、ボランティアも逼迫しているとの事ですが。

松永様
いのち基金ということで多くのご支援を頂いてますが、実際には次の飼い主さんに譲渡するために使わせて頂くことが条例で決められています。怪我や病気の治療含め順化させることがメインです。ただ多頭飼育崩壊で実際に経済的に追い付かない方に対しては、センターの方で基金を使い不妊・去勢手術をし慣れさせていく活用の一つになっています。ボランティアさんが引き取った場合、ワクチン接種や疾病治療など現状お支払いする形にはなっていません。

臼井コーディネーター
生かすための基金なのですから、県でどういった事なら出来るか検討できるのではないか。県獣医師会に所属する動物病院で、虐待現場から救ってきた犬猫であると証明を付けていけば県所定の動物病院で、ワクチン接種やメディカルチェック、急を要する治療が出来るのではないか?仕組みさえ作れば出来ない話しではないと思います。

センターの収容動物の治療を行っている状況や、治療推進の観点からのご意見や「いのちの基金」の活用方法に関して何か提案はございますか。

福原様
6人体制で曜日を決めて1週間おきにセンターに行ってます。オファーのあったものに関し、可能な限り診療しています。また治療して欲しいとも伝えています。譲渡できる状態になるまでもって行く、緊急で治療もしています。「いのちの基金」は3月から施行になったフォスター制度が普及していけばよい。ボランティアやフォスター制度で皆が参加し治療に使っていければいいと思う。ボランティアが同じ方向に向かいまとまって行く必要があると思います。

臼井コーディネーター
センターに収容しない事例というのはEvaで抱える刑事事件でも類似のケースはありますか。

杉本彩
刑事事件の場合、告発された側からしてみれば私たちは告発した側でいわば敵なので交渉の場からは外されます。環境省の虐待ガイドラインには、「動物が虐待されていたとしても、その動物が行為者により飼養されている場合、動物の所有権は行為者にあることから、必要に応じ行為者が所有権を放棄するよう積極的に働きかけること」とあります。ですのでこの虐待ガイドラインに則り、所有権放棄の働きかけを行政に要望しセンターに収容してもらえるよう手を尽くすのですが、「所有権放棄のお話しはしています」と言うだけで、一頭も所有権放棄させず実態の分からない団体に移動させられることも。行政には、所有権放棄の話しはしたという既成事実だけ作るのではなく本気で所有権放棄させるために熱量を持って臨んで欲しいです。

臼井コーディネーター
2019年の神奈川新センター設立の際に、杉本理事長より、職員の業務をお手伝いする「京都式」の人員確保の提案を、当時のセンター所長に提案したとお聞きましたが、その「京都式」についてご説明頂けますか。

杉本彩
私が名誉センター長を務めている京都動物愛護センターでは、毎年30名位の方が一定期間学んだ後ボランティアとして認定され活動し、3年で卒業となります。業務内容は、動物のお世話だけでなく来所した方への案内や啓発、機関誌やSNSでセンター業務を発信します。卒業後はその経験と知識を生かし、それぞれの方が暮らしている地域で動物愛護の推進に貢献して頂きます。行政が責任を持ちボランティアさんをハンドリングし、誰が入ってきても同じように仕事が出来るやり方です。飼育経験者でないとなれないということではなく、むしろ物事の捉え方やバランス感覚が重要とされています。

臼井コーディネーター
京都式はセンターにとってもよい方法なのでは?京都式を研究され進めてみようなどのお気持ちはどうですか?

松永様
京都式については引き継いで聞いています。実際に多頭飼育などで日々状況が変わる中、一つ一つ猫の状況からそれを踏まえずっと繋ぎながらやっている状況で、そうした中で大きな捉え方として特定の職員がやっていくと。お手伝い頂くお掃除については事業者にお願いしています。ボランティアさんをハンドリングというのは、私共の実力不足というのもあり、ボランティアの方々は経験に裏打ちされた知識ということで3年の期間に限らず更新して貢献していただきたいと思っています。

杉本彩
それと、センターの役割が見学目的というのは初めて聞きました。保護はセンターの重要な役割で、それがあるからこそ新センター設立の際に応援団長として、在り方検討委員会で意見させていただいたり、神奈川県のコンサート会場で募金箱を持って募金活動するなどやれる事は全力でやらせて頂きました。良いセンターが出来ると多くの方が期待しご寄附し、そしてそのベースは皆さんの血税です。納税者の皆さん、ご支援してくださった方々が納得する施設になるよう頑張っていただきたいです。

臼井コーディネーター
多頭飼育の届け出制について問題や意見などはございますか。

杉本彩
届け出をしてなければそもそもその存在を行政は把握出来てないので、そこで何かあって無届けを発見したとしても、そこに置かれている動物がどういう状態なのか確認しないまま「届け出を出してください」とそれで終わりになることが多い。度を越えた多頭飼育の果ては衰弱や死亡に繋がることから、虐待とはどういうことかを今以上にもっと明確にして、それを尺度にして保護していかないと動物の被害が長引くだけです。

当協会が扱う全国の事例を見ると、虐待を行う者はもちろんですが、行政にも問題があります。出来ない言い訳を並べてその責務を果たさず被害を大きくしたり長引かせるケースが非常に多い。体制体質を変えない限り罰則のない届け出制は意味がないと思います。

串田様
神奈川県は、届け出制はあるが過料がなく、ちなみに山梨や千葉は過料5万円が定められている。一方東京は届け出制度さえもなく関東でもマチマチ。なので県会議員の皆さんにお願いして条例を変えていかなければならないと思う。繁殖制限をしないと1匹の猫が3年後には2,000頭にまで増えてしまいます。センターに入る7割が多頭飼育なので制限すれば解決に繋がります。

臼井コーディネーター
最後に私たちにできることはなんでしょう。

福原様
増やしてしまう人は孤独であったり心に問題を抱えている人が多いのでカウンセリングなどの対応も必要。色々な機関の連携も。議会が動いて制度を変えて頂きたい。

串田様
多頭飼育は高齢者の方も多い。優しい気持ちで飼い始め、増えていくことにコントロール出来なくなることも。隣近所のお声掛けなど動物の問題だけではなく町全体で高齢者の方を見守る必要があります。ここ平塚は、動愛センターも多頭飼育の届け出制もあり、神奈川の重点地区になる所なので、ぜひ多頭飼育をなくしていく活動を進めていただきたい。

松永様
多頭飼育の方のもとに数年通っても心を開いて下さるのはほんの少し。心や経済など色々な問題が含んでいるので市や町、福祉部局の方々から情報をいただき連携していきたいと思います。

杉本彩
行政の働きかけ、福祉関係、近隣住民、自治体と連携し、手の施しようがなくなる前にいかに予備軍を食い止めることができるかが大事。

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