Eva理事長 杉本彩
本日は、たくさんの方にご参加いただき心より御礼申し上げます。申込み締め切り後も参加したいとご連絡いただき、いかに次の法改正が多くの方に注目されているかということを実感しています。
皆様におかれましては、人と動物が幸せに共生出来る社会の実現の為に日々一生懸命取り組んで下さっています。動物愛護団体の方々、個人でボランティア活動をされている方々大変お疲れ様です。そして本日ご参加の国会議員そして地方議員の皆様、私達の活動をご理解いただき、日々ご尽力いただきありがとうございます。
本日は、素晴らしい講師の方々のお話しを聞いて、改めて動物を取り巻く問題と課題を共有させていただきたいと思います。
前回2019年に改正がありましたが、ほとんど手付かずのまま取りこぼした課題も多数あります。5年に一度なので可能な限り多くの問題の解決に向けてしっかりした改正をしていただきたい。今日は改めてこのシンポジウムで皆様と課題を共有し、来年の法改正に向けて力を合わせ全力で立ち向かっていきたいと思います。
調査概要
「悲願」の数値規制(飼養管理基準省令)ができたが、
2023年12⽉調査の結果
動物取扱業に関る全国107自治体に聞いた、21年6月に飼養管理基準省令の段階的施行が始まってから…
全ての犬猫等販売業者への立ち入り検査を
省令の条項(基準)に適合していない自治体があった…103自治体
一つの事業所に3回以上の「指導」を行うケースがあった…51自治体
飼養管理基準省令の効果(2022年12⽉調査の結果)
「指導が徹底できるようになった」「⽝猫の飼養環境は向上している」「指導のばらつきは確実に少なくなった」「具体的な指導がしやすくなった」といった高評価の声がある一方で、問題点も指摘された。
飼養管理基準省令の問題点
「勧告や命令は業者にとって重い。慎重な判断をせざるを得ない」
「優良業者は指導すれば改善するが、⾃分のやり⽅を曲げず、改善しない業者もある」と明かした上で「そうした業者には何とか改善してくれるよう、繰り返し指導するしかない。何度も電話をかけ、何度も現地に⾜を運ぶこともある」
「⾷品関連や動物関連で、事業者と接してきたが、犯罪者を作るために監視、指導にあたるのではない。法令違反があれば、犯罪者にならないよう是正してもらうのが仕事」
「繁殖引退⽝猫を複数頭飼養している事業者がほとんどで、事業所で飼養される⽝猫全てが適切に飼養されるためのルールが必要」
「ケージ等の基準や従業員数の基準を満たせば、いくらでも規模が拡⼤可能、さらに繁殖引退後に販売に供される⽝猫は規制から外れるため、善悪に関らず経済的状況によって起こる飼育崩壊の危険性は残ったまま。『命』が他の『物』と同じ状態であることに無理がある」
業界側の省令への「対応」状況
「今年5⽉に逮捕、動愛法違反は「嫌疑不⼗分」の和歌⼭県の業者は、⼈⾥離れた所に⾏政に⾒せない⽝舎を無登録で別に持っていた。このように⽝舎を隠す業者は⼀定数出てくる」
「MIX⽝の繁殖が増える傾向。JKCは登録されているメスが6胎を超えて出産した場合、⾎統登録を⾏わない。⾏政に対してはいくらでも出産回数をごまかせるが、⾎統書のない純⾎種の⽝猫は販売しにくい。このため、⾎統登録が不要なMIX⽝の出産を挟む。MIX⽝を挟むことで、何度でも交配、出産させることが可能になる」
任意規定から「強⾏規定」へ
8週齢規制の問題点
「『⽣年⽉⽇をごまかしている業者がある』という通報が寄せられることもあるが、証拠の集めようがない」
「環境省のデータベースで登録情報にあたったところ、帳簿に記載されたものとは違う⽣年⽉⽇が登録されていたことがあった。担当者は「業者による詐称が可能で、⽣後56⽇より若い⽝猫の販売が⾏われている疑いがあっても指導が困難。業者の⾔うことをうのみにせざるを得ない」
出⽣⽇偽装を防ぐには?まず、個体ごとの管理台帳を新設、インターネット上への公開を義務付けた上で、8週齢規制違反者への直罰規定の導⼊を。
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採卵鶏の現状
採卵鶏の世界状況
ケージフリー(平飼い・放し飼い)卵の割合
スイス、オーストリア(100%)、スウェーデン(98%)、独(95.4%)、オランダ(88%)、英国(77%)、仏(73.1%)、豪州(61%)、米国(38.5%)、韓国(7.4%)メキシコ(1%)
日本(3.5%)中国(2%)インド(0%) (鶏鳴新聞24年10月15日記事を基に作成)
採卵鶏のケージ飼育実態
牛への虐待・劣悪飼育環境
茨城県畜産センター
6月末で40度の暑さの中、供卵牛が全身を上下させ荒い呼吸をしていた。運動場にはわずかなひさししかない。事件発覚後に外部有識者として調査した大学教授も「牛がゼイゼイ息をしていた」と大きな懸念を持っていた。
元従業員の訴えで、夕方からの夜間放牧に切り替わった。だが牛舎の中も35度で送風機しかなく、職員が帰る時には電気代節約として、それも切られた。
また、殴る、蹴る、竹棒で腹を突くなどの暴力や「ほら行け!」などと怒鳴ることも。
同センターは「動物実験施設」である。動物実験で行う胃液採取では、訓練されていない職員が行ったため、プロなら通常1分で終わるのに20~30分かかった。牛は鼻から血を出し、よだれを大量に流して抵抗。センター長は、今後も胃液採取の手技を学ぶ教育訓練をやる予定は「ない」と取材に答えた。
24年2月、4つの動物保護団体は同センターと虐待した職員を動愛法違反で刑事告発。
茨城県は6月、センターのアニマルウェルフェアの取り組み状況を県サイトに掲載。 外部有識者の調査を踏まえ、暴力については「対人反応は良好」とした。フリーストールベッドの砂の掘り起こし、金属製すのこの改修、運動場の「日よけ」などを発表した。
幾つか改善点は見られたが「大声でどなる職員に牛が怯え、後づさり、右往左往していた」という元職員の証言がある。「日よけ」は農作物用の寒冷紗に過ぎない。換気扇しかない牛舎の根本的な暑熱対策は記されず。現場取材を再三申し込んだが断わられ、実情は不明。
産業(畜産)動物関連施設を動物取扱業に加える
産業(畜産)動物に対する虐待を罰したり、アニマルウェルフェア(AW)の観点から保護する法的規制はない。採卵鶏農場の元従業員は「現場でAWという言葉を知っているのは農場長ぐらいだった。ただ『農水省指針には罰則がないから、うちだけやると損だ』とやる気はなかった」と話す。
不適切な取り扱いや低レベルの飼育環境を改善するためには、大元の法律である動物愛護管理法に愛護動物と同じように、産業・実験動物を動物取扱業に入れるしかない。全国にある農水省管轄の家畜保健衛生所は、家畜伝染病予防法に基づき農場を把握し、日常的に伝染病防止のための指導、検査等は行っているため、登録の作業は可能であると思われる。
動愛法10条の取締り除外規定を削除し、すべての動物を行政が指導監督できるようにする
第10条の除外規定 25条第4節の不衛生な飼育環境や虐待などの取り締り対象から、産業動物と実験動物は除くとしている。このため、たとえ虐待や劣悪な飼育実態が明らかになっても、都道府県には立ち入りや勧告、命令などを行う権限がない。
茨城県畜産センターに対しても、県畜産課の職員は現場には行かず、センター内の職員だけの聞き取り「調査」をさせた。その報告を基に「虐待はなかった」と結論づけている。
PETAが動画を出し、4団体が刑事告発したこともあり、県は外部有識者の大学教授に現場視察を依頼したが、第三者委員会などの独立した機関で調査したわけではない。
問題の所在
捜索・押収(憲法35条、刑事訴訟法218条):裁判所の令状に基づく強制捜査
犯罪捜査と関係ない動物は押収困難。留置の必要がなくなれば所有者に還付しなければならない(刑事訴訟法123条)
没収(刑法9条、19条):有罪判決が言い渡されるときの付加刑
有罪判決まで時間がかかる。被害動物は没収の対象にならない
避難等の措置・立入(警職法4条、6条):警察官は、人の生命・身体・財産に重大な損害を及ぼす虞れがある危険な事態がある場合、危害防止のために通常必要と認められる措置を取れる。危害が切迫した場合は、やむを得ない場合は、合理的に必要な範囲で他人の土地建物、船車の中に立ち入ることができる
車中に置き去り事案に使えるかもしれないが、それ以外の虐待事案にも使えるのか。動物が被害に遭っている場面を想定していない規定
動物の緊急一時保護制度の必要性
自宅などで犬猫がネグレクト状態にある多頭飼育崩壊事例が全国で多発し、社会問題化している。また、犬猫が車中に置き去りにされる事案や、独居飼い主の死亡、被疑者の逮捕勾留により自宅に放置される事案は以前からある。
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保護団体などがレスキューを希望した場合、任意に譲渡されれば問題ないが、飼い主が頑なに拒否した場合は、強制的には保護できない(所有権絶対の原則)。犯罪捜査の手段として裁判所の令状に基づき動物を差押すれば一時的に保護しうるが、警察が動かない事案も多く、また、捜査が終われば飼い主に返還する必要。
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所有権も絶対的なものではなく、公共の福祉による制約=法令で制約される場面は多々ある(例:法禁物、強制収用、建築規制、自己所有の動物を殺傷すると犯罪成立など)。
不適正飼い主の所有権問題は、現場の最前線で動物保護活動をしている人たちが必ず直面する。動物を思うあまり犯罪(住居侵入、器物損壊、窃盗)も厭わないという人も。心ある保護関係者を犯罪者にしてはならない。
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そこで、公共機関による強制力の行使として、動物の緊急(一時)保護制度が必要。現場関係者や有志が20年来、法改正を求めてきた重要課題
動物の緊急保護制度の意義
飼い主の所有権に対する法律上の制限を正当化する根拠
従来は、1の視点のみが強調されてきたが、2の視点(近年の動物愛護法改正で徐々に反映)や、3の観点(貧困・高齢・障がいある人の福祉)も重要
児童福祉法33条に基づく一時保護制度
「児童相談所長は、必要があると認めるときは、第二十六条第一項の措置を採るに至るまで、児童の安全を迅速に確保し適切な保護を図るため、又は児童の心身の状況、その置かれている環境その他の状況を把握するため、児童の一時保護を行い、又は適当な者に委託して、当該一時保護を行わせることができる。」一時保護の期間は原則として2か月間。延長可
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被虐待動物(またはそのおそれある状態)については、動物愛護管理センター(動物愛護法37条の2)に一時保護権限を与え、外部委託も可能にする方法が考えられる。
検討事項①(保護の開始段階)
検討事項②(保護継続中)
検討事項③(保護の終了段階)
緊急一時保護について、できない理由をあげるのではなく、導入するにはどのような点を
詰める必要があるのか、どのような仕組みとするのか、さらに、建設的な議論が必要
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第2種動物取扱業の問題
横行する「愛護ビジネス」
現在は「届出制」のため、事件化して有罪となっても行政による業の取消しができない。
よって「届出制」は廃止し「登録制」を導入する。
「飼養施設の有無」や「取扱う動物の数」に限らず、金額を問わず有償で譲渡を行う者は、第1種動物取扱業と同様に登録制へ。
動物愛護管理法44条2項
動物を虐待した場合
(現行法)1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
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(改正案)3年以下の懲役又は300万円以下の罰金
産業動物、実験動物また人間の飼育下にあるすべての野生動物、そして爬虫類、両生類、魚類、鳥類等、これらの動物の福祉も守る実行力ある動物愛護管理法へ。
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現行法の問題点
動物福祉とは
動物福祉とは、飼育下の動物全てに提供しなければならない最低限の身体的・精神的ニーズ。動物愛護という言葉もあるが英語には訳せない。愛し方は人それぞれで感情的。一方動物福祉は科学である。
そもそも動物福祉とは(The state of the Animals)
“how an animal is coping with the conditions in which it lives”=「生きている環境で、動物がどのような状態であるか」
エビデンスの示す良い動物福祉とは
健康、快適、栄養状態が良い、安全、本来の行動を示すことが可能、痛み、恐怖、
苦痛等の不快な状態ではない
疾患予防、獣医療、適切な飼養環境、飼養管理、栄養、苦痛のない取扱、苦痛のないと殺身体的および精神的ニーズを満たすこと
飼育下動物の福祉の発展
Management-based measures(飼養環境)+Resource-based measure(管理方法)=
Animal-based measures(動物の状態)
全ての飼育下の動物伴侶動物、産業動物、実験動物、飼育下の野生動物(野生動物ペット)
野生動物の福祉の問題
飼育下においては、野生動物の動物福祉を担保できる施設は限られている
現行法では、野生動物の福祉を担保するための規制がない
展示野生動物
動物園・水族館、公園、ペットショップ、動物カフェ第1種動物取扱業 展示・販売
動物カフェ(およそ1,000軒)
動物カフェの実態
公衆衛生および動物福祉の問題
野生動物の福祉の問題