Eva理事長 杉本彩
私が動物愛護の活動を始めたのが約25年ぐらい前になりますが、動物問題と向き合ってるうちに、犬や猫の問題だけではなく、人間の管理下にある全ての動物においてさまざまな問題があることに気づかされました。
「動物・環境・福祉」という言葉を協会の名前に入れたのは、実験動物や毛皮、展示動物、畜産の問題など全てを視野に入れて活動していくためです。今回初めて、畜産をテーマにシンポジウムを開催させていただけることを、とてもありがたく思っています。
野菜やお米などは、自然農法や、有機農法などを意識して商品を選んでいらっしゃる方も多いと思います。しかし、卵や牛乳やお肉については、まだまだ情報が乏しく、正しい知識を持ち、厳選して消費されている方は少ないのではないでしょうか。これからの時代、自分の健康のためにも、環境のためにも、より良いものを正しい知識を持って選んでいくことが問われる時代になっていくのだろうと思っています。
ぶぅふぅうぅ農園の飼育について
◆放牧養豚
山梨県甲府市の少し西にあります韮崎市という南アルプスのふもとで、40年程ほぼ変わらず放牧養豚を営んでおります。繁殖豚、母豚が20頭ほどのとても小さな農場です。
うちの農場では、生後10日目位になると子豚もかなり脚がしっかりしてくるので、外へ自由に出られるようにしています。そこから出荷まで「土」とは切り離さずに、全期間放牧となります。
生後30日を過ぎると、親子放牧で放牧場付きの豚舎に移します。親子で放牧している姿というのは、日本では見ることができないと思います。ここで約30日~45日まで過ごした後、離乳になります。
離乳した子豚はまだまだ小さい(育成期)ので、放牧場付き育成舎で育てます。放牧場は雨が降ると結構水浸しになります。豚は暑さに弱いので、泥遊びが大好きです。自分の鼻でマイお風呂を掘り、貯まった水のところに鼻から一気に突っ込んだりします。そんなことをしながら、自由に過ごします。
その後、120日ピーク後期(肥育期)になると、1,000平方メートルの放牧場に20頭強ごと移動し出荷まで育ちます。
◆抗生物質投与ゼロ
生まれてから出荷まで、基本的に抗生物質や抗菌剤は使わないやり方をしています。
通常は23、24日で離乳しますが、うちの場合は「45日」です。母乳で育てる豚ということでやっています。
23日は早期離乳になるので、当然人工乳で育てますが、その中には抗生物質が入っています。私自身とにかく全ステージ、出荷まで抗生物質を使わない育て方をしたいと思い、試行錯誤を重ね、最終的に「45日飼育」要するに穀類を食べても、消化できる腸内細菌が育った時期(離乳時期)を探り出しました。
◆環境を考えた餌
餌は、通常の農場は90パーセント海外に依存です。しかし、私は日本の廃棄物問題を考え、約80パーセントをエコフィード(食品工場から出る副産物・食品残渣飼料)を使用しています。
アニマルウェルフェアについて
アニマルウェルフェアとは「家畜も人間も、満ち足りた生活を与えあう」この「満ち足りた」というところが大事です。「満たされて生きる」そういう生活環境の中で育てることをアニマルウェルフェアと言っていますが、しかしアニマルウェルフェアはなかなか浸透しません。一時は、オリンピックの食品の条件にもなったので、もう少し広まるかと思ったのですが進みません。
飼育施設を変えるというのは、ストールの問題にせよなかなか難しいです。でも、どこかで変えていかなきゃいけない。ですから、皆さんに知っていただき、アニマルウェルフェア的な飼育をした畜産物が少しでも多くなるよう、色々な方に話しをし伝えていってほしいと思います。
ページトップに戻る
【一般的な豚の飼育について】
■生まれてから出荷まで180日(約6カ月)
■2m×0.6m程のストールの中で飼育。寝るのと立つぐらいの行動しか許されない大きさ。
■妊娠期間中は、妊娠ストールへ。この枠の中でお産をする。このストールは、親豚が産まれたばかりの子豚をつぶしてしまわない為に設けられている。
■哺乳期間は23~24日。
■離乳後は高床式網などの区画の中で育つが、足元はスノコ。スノコで脚を滑らせたり、脚を取られたりする。
■40キロ程になると部屋が狭くなるので、場所を移るが、このときの飼養面積がアニマルウェルフェア的に狭すぎると問題になっている。
■養豚場には大体1~5千頭近くの母豚がおり、子豚はその10倍いるので、大体1万頭規模の農場になる。養豚場もかなり大規模化している。
埼玉県 寄居町で採卵養鶏場を営んでおります。約18万羽ほどの鶏がおり、養鶏の家業としては50年を迎え、私は四代目で、会社としては二代目となります。
われわれ日本の生産者が作っている卵ですが、実際鶏はどのように飼育されているのかと言うと、大半は鶏舎の中でのケージ飼いです。弊社も大半はこのような形で卵を生産しています。
従来型ケージ
従来型のケージ飼育は、鶏が卵や糞と接触しないため衛生的で、また自動的に卵を回収できることから効率はいいのですが、1羽あたりの面積が非常に狭く、大体50~60cmの中に、7羽から8羽を入れています。約iPad 1枚分(430平方cm)前後の大きさです。ただ、日本では「どれぐらいの面積で飼いなさい」というルールがないので、生産性を上げたいと思えば、ここにもう1羽入れて飼うこともできますし、これは生産者の考え方次第で変わってくるというのが現状です。
では、世界はどうか。EUに関しては、今日本で使っているこういった従来型ケージは使えません。アメリカも、地域によっては使用禁止になっています。また韓国の従来型ケージは日本より広いです。
改良型(エンリッチド)ケージ
鶏には、本来の行動欲求というものがあります。暗いところで卵を産みたい、止まり木に止まりたい、砂浴びがしたい、ついばみたい、羽を広げたい。そういった行動欲求があり、そこをしっかり満たさないとストレスになります。
では、その行動欲求を満たすにはどうすればいいのかという事で、改良型(エンリッチド)ケージというシステムがあります。飼育面積が大体従来型の3倍くらいのパーテーションなしでつながっている中で、砂浴びができる場所、巣箱のエリア、止まり木のあるエリア、こういったところを自由に動くことができます。この改良型のシステムは、ヨーロッパやアメリカでも現在普及しています。
日本でもこのシステムで飼育をされている方は何軒かいらしていて、われわれとしても十分機能しているとは思いますが、中には、とは言ってもこれもケージですよねというお考えの方もいます。
平飼い
皆さんがイメージしやすい平飼いの場合、先ほどの行動欲求はほぼ満たされると思います。餌を食べたり水を飲んだり、運動したりと常に移動することができます。ですが一方で鶏の足元には糞が溜まるため、鶏や卵が糞と接触するリスクがあります。また、鶏は必ずしも、巣箱に卵を産むわけではないので集荷がしにくく、なかなか少ない人数で管理する場合、逆にたくさん飼えないところが平飼い飼育の大変なところでもあります。床の上の敷料に糞を溜めっ放しにしているところは、ネズミや害虫の発生もあり、また巣外卵のリスクから飼育面積の限界がどうしても出てきてしまいます。
エイビアリーシステム(直立多段式ケージフリー)
平飼いのリスクを減らし、ケージ飼いの利点を生かすというシステムが、弊社で導入しているエイビアリーシステム(直立多段式ケージフリー)という飼育環境になります。今ヨーロッパやアメリカでも急速に普及しているシステムです。
止まり木のある休息エリア、給水エリア、卵を産むエリア、運動エリアなどがあり、鶏が自由に移動することにより、先ほどの行動欲求を満たすことができます。また弊社の場合、屋外の運動場に自由に出入りできるようになっています。鳥インフルエンザといったリスクがあるので、本来は外には出しませんが限りなく外に近い環境になっています。カーテンなどはありませんが外に面した壁が金網になっているので、野鳥は防ぐことは出来ます。運動場では鶏がよく砂浴びもしています。
卵はエイビアリーシステムの巣箱で産みます。巣箱の床面は網ではなく、マット状になっているため卵を産みやすく、また産まれた卵は下が少し勾配がついているため、のれんの向こう側に転がっていきます。そしてベルトに乗った卵が引っ張られ集荷しパック場に持っていく流れになります。
日本の場合は卵の生食文化があるため、エイビアリーシステム内の床で産んでしまった卵は、食品衛生上、いつ産んだ卵か推定は出来ますが断定ができないので、弊社の場合は、加熱加工に回しています。
糞については、網になっているところで糞をし、ベルト上になっているところに落ちるようになっているので、鶏と糞を分けることができます。ベルトを動かすと、鶏舎外に搬出されるので、臭いも少なく害虫も湧きづらい方法になっています。
世界の動きと今後の日本
良い卵の基準というのは、栄養価が高い卵が良いのか、完全に放牧しているのが良いのか、安い卵が良い卵なのか、また、それぞれの人の考え方によって違うと思います。
先ほど、アメリカやヨーロッパでは従来型のケージは使われてない、もしくは禁止に向かっているという話をいたしましたが、例えばマクドナルドやケロッグ、スターバックスなど皆さんが必ず知っているような会社が、ケージフリーの卵に切り替えていく、というような宣言をしています。2025年からなど年数はまちまちですが、日本以外ではどんどん進んでいます。
ですから日本でも、こういった動きは止められない、われわれ生産者としては、意識していかないと今後置いていかれてしまいます。世界の状況をしっかり勉強して、どういった方法で生産していかなければいけないのかを考える時期にきているのではないかと思ってます。
ページトップに戻る
山地(やまち)酪農について
私は、岩手県岩泉町の「なかほら牧場」というところで働いておりました。ここは、30年以上、中洞正という牧場長が牛と一緒につくりあげてきた、野シバの山の広々とした牧場です。ここで行っている山地(やまち)酪農に魅せられ、去年6月に神奈川県山北町にあります大野山に土地をお借りして、ジャージー牛5頭を迎え山地酪農を始めました。
まず、山地酪農というのは、猶原恭爾(なおはらきょうじ)という、植物学者の方が提唱した酪農のやり方です。人の手が入っていない山に牛を入れることにより、まず地面に生えている草を牛たちに食べてもらいます。なかなか人間が入るのも大変なぐらい、草がぼうぼうに茂ってしまっているところを牛にきれいにしてもらって、その後人間が入って、山の手入れ、間伐や、枝打ちなど、林業の仕事をやっていきながら、牛と一緒に山の管理をしていきしょうという酪農です。この山地酪農は、岩手県岩泉町の他に北海道や高知県など、日本にも何箇所かありますが、まだまだ数ヶ所にとどまっています。
この山に、再生力の強い「野シバ」という植物を使って、山の管理を最終的にやっていきます。この「野シバ」という植物は、牛の食べ物にもなり、牛が食べた後またすぐに伸びてきてくれる利点もあります。また、野シバの根っこはすごく細かくぎっしり地面の中に土を捕まえてくれるので、大雨や台風がきたときにも、山を土砂崩れから守ってくれる役割を果たします。
薫る野牧場について
薫る野牧場では、24時間365日放牧をしています。
山の斜面に牛を放して、山に生えている自然の草を主に牛の食べ物としています。
朝と夕方の2回だけ小屋に牛が戻ってきて小屋で搾乳をしたり、おやつを食べたりします。それ以外は全部山で過ごしています。搾った牛乳はソフトクリームミックスに加工します。生乳にお砂糖を混ぜて、加熱殺菌をしたものを、カフェや飲食店さんに卸しています。
牛はもともと20年生きる動物ですが、今、日本で飼われてる牛は、大体5、6歳になると、穀物の餌を与えられてる分、内臓に負担がかかってしまったり、あまり運動しないので、足腰が弱ってしまい立てなくなってしまうなどの理由で、屠畜に回されてしまうという牛が多いです。
しかし、なかほら牧場でも、牛の寿命を全うするように飼っておりましたし、私のところでもそうしていきたいのと、できるだけ日本で飼われている牛がそうなるようにと願っています。
また、牛のお産と母乳ですが、雌牛が子どもを産んで、その子どもに飲ませるためにお乳を出します。ですから、お母さん牛が出してくれるお乳は全部子どもの為のものなのです。
また、牛のお産というと、人間が引っ張って、何時間もかけてやっと産まれると思っている方も多いですが、実際は、牛も自分で赤ちゃんを産むことができます。しかし、牛舎で飼われていたり、足腰が弱いと、自分の力で子どもを産むことができず人の助けが必要になります。
山地酪農では、山でよく運動しますので、基本的に牛は自分で赤ちゃんを産み、子どもはお母さんのおっぱいを飲んで大きくなります。子牛の免疫を獲得する上でも、お母さんのおっぱいは非常に大事です。
子どもが大きくなって、草を食べるようになり、お乳を飲む量が減ってきたら、搾った牛乳の残った分をこちらで加工に回しています。
最後に、まだまだ、日本の酪農は「牛舎で飼う」というのが主流ですが、この山地酪農を、日本の酪農のスタイルの新しい選択肢の一つとして広めていきたい。また、日本の山の管理方法の一つとして、山地酪農という方法もあるんですよ、という事を広めていきたいと思っています。
なかほら牧場 中洞正様より
岩手からはるばる教え子のためにやってまいりました。
私の場合は酪農地帯で、こんな変なやり方をしていたものですから「奇跡のりんご」の木村秋則さん(※絶対に不可能と言われた無農薬りんごの栽培に成功した青森のリンゴ農家)がわざわざ訪ねてきて「岩手にも随分変わった奴がいるな」と言われたぐらいです。しかし、お客さんがちゃんと買い支えて下さるので、今日があると思っています。私は頑張ってもあと10年か15年だろうと思うので、その後が心配でたまらなかったんですが、全国各地に何名かいる山地酪農家たちが、日本の酪農を変えてくれる、必ずやってくれると、今は信じています。皆さん、ぜひご支援のほどよろしくお願いいたします。
ページトップに戻る
【日本の酪農の現状】
■飼養戸数:15,700戸(昭和38年/1965年を境に年々減少)
■飼養頭数:1,328,000頭(前年比5,000頭増)
■一戸当たりの飼養頭数:84.6頭(前年比3.9頭増)
※酪農家さんの軒数は減ってるが、牛の数は増えている。大規模化が進んでいる。
■年間平均搾乳量:8,500kg/頭
※牛は大体1年間のうち、10カ月間お乳を出します。平均1日20~30キロ出すのは当たり前で、50~60キロや、海外の100キロ近く牛が牛乳を出すように改良されたり、そういった飼い方をしているところもあります。
(数値は、平成28年度畜産統計より)
■飼育方法:牛舎の中に牛がずらーっと並び、人間によって餌を与えられ、排泄をし、搾乳をする。ある程度、牛が動き回れるよう工夫されているところも増えてきたが、身動き取れない状態でつながれ、一生をそこで過ごし、外に出るときは出荷されるとき、という所もまだまだ多くある。
■飼料:本来草食動物の牛に、乳量増加、肥育のために、トウモロコシ等の穀類を大量に与える。そのため内臓の病気が多発。
■乳脂肪分の取引基準の引き上げ(1987年):乳脂肪分の取り引き基準が、3.2%から3.5%に引き上げられたため、酪農家さんたちは買い取り価格が引き下げられないように、トウモロコシの餌をあげたり、運動量を減らしたりし、乳脂肪分を高く保つようにしている。
なるべく牛に負担をかけない飼育をと思ってはいてもこういった現実が存在している。
八雲牧場について
八雲牧場は北海道の八雲町にあります。敷地面積は370ヘクタールです。夏山冬里方式で、夏の間はずっと放牧をし、冬は牛舎飼いとなります。餌は全て牧場の牧草。つまり、購入飼料はゼロですので、典型的なグラスフェッドの牛肉です。化学肥料、農薬、除草剤を一切使用しない草地管理、つまり有機的な管理に徹しているということです。系外からの飼料導入なしの、完全な循環型畜産をやっています。
お産は、基本的に自然分娩です。子牛は、生まれてから半年間は母乳で育ちます。夏の間は特に、好きなときに、好きなだけ食べなさい、どこにでも行きなさいという、育て方をします。
大体30カ月で体重が700キロぐらいになるとお肉になります。ですから、その30カ月はできる限り幸せに過ごさせたいというのが、私たちのスローガン、思いであります。
私たちの牧場は生産が目的の牧場ではなくて、学生実習の場でもあります。学生たちに、食べ物を生産するという事はどういう事かを、教えています。
世界の人口と食料、そして環境問題
現在の世界の人口は73億人です。1900年以降、急に人口が増大しました。これは、窒素合成、ハーバー・ボッシュ法で食料が安定的に生産できるようになった結果です。また、日本は、多くの窒素を外国から輸入していて余剰窒素が185キロも発生しています。余剰窒素が増えると、硝酸態窒素として、川の水や井戸水が汚れます。川の水が汚れれば、当然流れつく海の水も汚れます。水だけではなくて、大気も汚染します。窒素余剰の他国(オランダ、ベルギー、韓国)では、窒素の効率的な利用を農業全体、国全体で進めていますが、日本ではそういった取り組みはありません。つまり、日本はたくさんの窒素を輸入して、国内の農地で余剰窒素を発生させ、その結果さまざまな環境問題を引き起こしている、という事になります。
食料自給率を見てみますと、日本の食料自給率は38%です。間違いなく世界で一番低いです。皆さんが食べている食品の6割は海外からの輸入品というわけです。では、食料自給率がこんなに低い原因は何かというと、農業予算の削減です。農業算出額に対する農業予算の割合ですが、アメリカ65%、ドイツ62%、フランス44%、イギリス42%、日本はたったの27%です。ものすごく少ないです。
また、食品廃棄の問題もあります。日本は621万トン廃棄しているというデータがあります。日本の米の収穫量が850万トンであることを考えれば、ものすごい量を捨ててしまっているということになります。ですので、先進国、どこでも食料廃棄を減らしましょうというスローガンを出していますが、一方、世界では栄養不足人口8億4000万人というデータがあります。ということは、8人に1人が栄養が足りていないという実体です。
日本のように多くの窒素を輸入して、余剰窒素を発生させながら、食料自給率が38パーセントと低い国がある一方で、世界全体では食料が足りておらず、さらに食料廃棄という、大問題が起きているという、大いなる矛盾が生じているのです。
余剰窒素問題の解決策は、外国から窒素を輸入しないこと、つまり食料を自給することが重要です。そうすれば、環境汚染を起こさず、輸入品に頼らずに、国内で食料を生産する農業を行うことにつながります。畜産では、循環型畜産という考え方があって、これをやっているのが八雲牧場なんです。
アニマルウェルフェアの普及
アニマルウェルフェア畜産は、先ほどもお話しした通り、水質保全、大気保全に貢献します。重金属汚染も防ぎます。しかし、こういったことは普通の方はご存知ないのです。私たちにも責任があります。また、消費者が産業動物や生産者と切り離されて、現状を知らないことが一つの根源的な問題だと思います。どんな過程を経て生産されたお肉なのか、あるいは牛乳なのか、卵なのか、知らないことが問題の根源にあります。あとは、慣行的な畜産が推奨される仕組みを農水省が引いていますので、そういうこともあります。
畜産の先進国、欧米では、産業動物に対する、アニマルウェルフェアの考え方が広く浸透して、飼養方法に具体的な基準値を設けています。例えば、イギリスの場合には、RSPCAだとか、ヨーロッパでは、EUスタンダードがあって、動物が本来どういう性質で、どういう生き方をするのが自然であるのかを重視した飼養方法について、具体的な基準値を設定しています。この基準値をクリアしたものだけがRSPCA Assured Foodという認定を受け、ちょっと高く販売するようになっています。先ほどもお話しがありましたように、ネスレや、マックなどの世界企業が、この基準を守らない畜産品を買わないとまで言っています。ぼやぼやしていると、日本だけが取り残されてしまいます。
しかし、今すぐ全ての畜産農家がアニマルウェルフェア型の飼養形態に移行することは無理があります。現状の畜産全体を規制するのではなく、新たな付加価値を認めた上でアニマルウェルフェア畜産を、国策として誘導すべきだと思います。そのためには、生産者、消費者とも、アニマルウェルフェア畜産をよく理解することが必須です。
また、小さいころからの食育も重要だ思います。幼稚園ぐらいのときから、食べ物はこうやってつくるんだよ、お肉はこうやってつくられるんだよ、ということを教える。これがすごく大切だと思います。
ページトップに戻る
東都生活協同組合 渡辺様
東都生協の商品についての考え方ですが、精肉、卵、牛乳は全て産直です。いつ、どこで、誰が、どのように育てたかが明確です。与える飼料はもちろん、作り手の飼育管理やお届けまでの過程も全て明らかにしています。抗生物質などにも頼らない、健康的な飼育を目指しています。
その中でも、今日は平飼い卵をご紹介したいと思います。特徴は、日の当たる、開口鶏舎で飼育していること。餌がNON-GMO(非遺伝子組み換えのもの)とPHFコーン(収穫後に農薬を散布することのないトウモロコシ)そして、国産の飼料米10パーセントを餌に混ぜてることが特徴になっています。平飼いの卵は全体の1割程度になりますが、前年比103~105パーセントなので、皆さん買っていただいてる傾向にあります。
この平飼い卵、東都生協では約40年間取り扱っていますが、40年前「東都生協で平飼い卵を扱いたい」と養鶏場の方に言っても断られ続けました。理由は、お金と時間と手間がかかるからです。その中で、いろいろ尋ねてまわったところ、手を挙げてくれたのが、今の平飼い生産者である野村さんで、もともとは野菜を作っている農家さんでした。
鶏舎の中では、羽をはばたかせたり、走り回ったり、止まり木で遊んだり。止まり木には大抵、雄の周りに雌がいました。雄は、雌を守る習性があって、雌も雄が近くにいるとあまりストレスを感じないそうです。
最後に、東都生協は、組合員さんが「こういうものが食べたい」というリクエストに合わせて、色々な商品を集めています。ですから「アニマルウェルフェアだからやろう」とか、そういうものではなかったのです。ただ、40年前から組合員さんは安心安全なものというのは、その動物の本来の生育環境にできるだけ近い畜産物だ、ということをよく考え理解していらっしゃったんだと思います。
ページトップに戻る
一般社団法人アニマルウェルフェア畜産協会 清水様
今日この会に参加させて頂きましてありがとうございます。私共はアニマルウェルフェアの普及と認証をやっています。アニマルウェルフェアの畜産をやるいというのは、農家のほうにはすごく負担なんだと思うんです。経済にそのまま流されれば、現在のかたちの畜産になるわけですから。そうじゃないのをやるのは、本当に大変なことだと思います。だから、やった人が報われなきゃいけないと。
私たちのところは、実際に審査員が農家に行きまして、基準がクリアされてるかどうかを見ます。
クリアしてる場合は「アニマルウェルフェア畜産」として認証しています。
今日のお話しにも出ましたが、そういった商品がちゃんと売れるようになり、農家が報われるかたちにしたいです。この仕組みをどう作るのか、これからの課題として取り組んでいきたいと思っています。
ページトップに戻る
Eva 理事長 杉本彩
私は、動物問題と向き合ってる中で、この畜産におけるアニマルウェルフェアの大切さに気付かされ、消費行動ががらりと変りました。どういう環境で飼育されているのかということを、大変注意深く意識して購入するようになりました。
やはり、値段は高くなってしまいますが、飼育環境がしっかり分かれば、それは決して高いとは思わない。またそれをいただいたときに、別格においしいのです。そして、本当に自分の体に良いものだということを、食していて実感すると共に安心していただけることがとても大切だと思います。
真摯にアニマルウェルフェアに取り組んでいらっしゃる生産者の方を、私たち消費者が少しでも応援し、こうした大切な取り組みが持続できるよう、そしてこういった生産者の方々がもっともっと増えていくように、この未来は、私たちの意識と行動にかかっているということを、改めて今日心に刻ませていただきました。
ページトップに戻る