2023年1月31日、京都地裁にて判決の言い渡しがありました。判決主文は求刑どおり懲役1年6月、3年間の執行猶予に保護観察処分が付されました。
◆判決言い渡しの内容
判決は、起訴されたすべての事実を被告人が行ったものと認定し、動物愛護法44条1項違反と判断しました。
被告人が争ったのは、1のスコティッシュフォールドの虐待に関連することで、具体的には以下の点でした。
ア.スコティッシュフォールドの爪を根本まで切った → 傷つけるつもりはなかった。
これが普通だと思っていた。
イ.同猫の舌を切断した → やっていない。壁にぶつけたときに自分で噛み切ったのは。
凶器も特定されていない。
ウ.同猫の胸腹部を圧迫して、外傷性ショックにより殺害した → 猫のしっぽをつかんで
壁にぶつけて遊んだが殺すつもりはなかった。
これらについて裁判所は、
求刑満額回答となった量刑の理由は以下のとおりです。
猫の爪を根本から切ったことに「傷つけるつもりはなかった」とか、舌を切断したことについても「やってない、ぶつけた時に自分で噛み切った」などと言い、1のスコティッシュフォールドの殺害について争っていましたが、殺害の故意が認められそれらが排斥されたことに安堵しました。
ですが、このような猟奇的な動愛法44条1項の動物殺傷事件であるにも関わらず、たった懲役1年6月、しかも3年間の執行猶予がついてしまうことに改めて司法の壁を感じます。
1~5の時系列を見ると、自宅には、名前も付けず種類も分かってない可愛がる目的ではない3匹か4匹の猫がいて、それらを次から次と爪を深く切断したり振り回したりし外傷を与えました。これまでの公判で「分からない」「特に意味はない」を繰り返す被告人には、動物の痛みや悔恨の念にかられている様子は微塵も感じられませんでした。
本当に腹立たしい限りで怒りがおさまりません。二度とこのような事件を起こさぬよう、そして自分の力ではどうにも出来ず殺されてしまう動物がいなくなるよう定期的な監視監督をお願いしたいと思います。
(2023年1月31日)
2023年1月10日、Evaは京都地裁で行われた動物虐待事件の第4回公判の傍聴に行ってきました。
総計3件の起訴において被告人が否認し争っているのは、8月に起訴された18本全ての爪を根本から切断した上、舌までも切断したスコティッシュフォールドの件であり、論告弁論ともこの点について多くの時間が割かれました。
◆改めてその内容について
◆検察官による論告
交通事故の場合、頭蓋骨や顎が傷つくことが多いが、そのようなことはなかった。また猫が高所から自ら降ちた場合は、四肢から骨折するがそれも見られない。その上で、解剖結果からは、人が故意に鈍的外傷を与えたとしか考えられない、との主張がなされた。
解剖した法獣医師は、年間300体解剖をしている専門家で合理的見解は信用できる。
ちなみに、同様にして死亡した別の猫については、ここまでの解剖結果が得られず、スコティッシュフォールドに関しては、被告人が自ら生命保障制度を利用するために動物病院に持ち込んだ先の獣医師による遺体を冷蔵保存させた判断が奏功したと言えます。
◇殺害の故意について
胸腹部圧迫の程度は、長時間相当強度の力であった。また舌を切断するという生命軽視の姿勢である。死亡後すぐに獣医に見せず、外に放置し蛆虫が沸いても驚かず放置したことから、想定内であり死亡を容認していたと推認できることから、肯定できるとした。
合計5匹購入し虐待を繰り返した。人と動物が共に生きていける社会を目指すという基本原則に反している。弁解を重ねていたことから違法性の認識もあり、常習性も認められるとして、一般予防からも厳しくするべきで精神疾患を考慮するべきではない。
同種事犯を起こす可能性がある。求刑は懲役1年6カ月。
◆弁護人弁論
舌の切断をするなら猫が抵抗したはずで、被告人にその影響があったはずだが見られず凶器も特定されてない。留守中に誰かがやったことも考えられる。被告人が外出中第三者が舌を切断し、帰宅後出血が止まっていたことも考えられる。
殺意については、他の猫にも尻尾を振り回すなどの同じ行為をしながら、その行為によって死んだのがこの猫だけだったことは殺意がなかったことを示す事実である。
結局被告人の行為は
比較的軽微なものであり、軽率ではあったが残虐性はなく、深爪は無知からくるものだった。加え4年前からの鬱病により感情が持ちづらい。前科前歴はなく今後は両親の監督もあることから寛大な刑を求める。
今回、猫の遺体を専門機関に送ったことによる、科学的事実が検案書として出されたことは非常に功を奏したと言えます。
弁護側は、しっぽを持って振り回した際に、たまたま壁に胸と腹がぶつかり、かつ舌が切断されたのは他人がやった可能性があり、殺すつもりは毛頭なく、唯一ひげを燃やしたことは反省しているとし、殺害したことについて軽微なものであると発言したことに非常に驚きました。すべての爪を根本まで順々に切断し続けた時、猫は想像を絶する痛みに苦しみ叫んだでしょう。それを繰り返し行い続けたこと、そしてその上舌を切断するという常軌を逸する行為について決して軽微な罪で終わらせてはいけないし、検察の発言のように再犯の可能性も多いにあると思われます。
また鬱になり通常の感情が持ちづらかったとのことですが、通常の感情が持ちづらい人間が、生命保障制度を使うために死亡診断書を求めるとは思えず、生命保障制度を悪用し次なる虐待のターゲットを入手しようとしていたのではないでしょうか。
被告人は最後、極めて淡々と「深く反省しています。以上です。」とだけ述べ、詫びや悔いる思いや更生の意志といった感情は全く感じられませんでした。
繰り返し行った行為は残忍な拷問で、しかも目的はその反応を見たいがためとしか思えず異常性を感じます。次回判決の言い渡しは、令和5年1月31日(火)です。
(2023年1月11日)
2022年12月19日、Evaは京都地裁で行われた動物虐待事件の第3回公判の傍聴に行ってきました。今回は被告人質問が行われ、主に以下のような質疑応答がありました。
【動機について】
Q.猫を購入した動機は何だったのか。
A.1人暮らしが寂しかったので、猫で寂しさを埋めたかった。虐待目的での購入ではない。
Q.猫は死んでもいいと思って虐待行為に及んだったのか。
A.いいえ。
【具体的な虐待内容について】
■深爪を負わせた件
Q.深爪を負わせたことは故意であったのか。
A.いいえ。
Q.爪からの多量の出血に気が付かなかったのか。
A.気づかなかった。
Q.誰かに正しい爪切りの仕方を教えてもらったのか?
A.教えてもらっていない。
Q.猫の爪は何本あるか知っているか。
A.わからない。
Q.深爪を負わせた際、猫は鳴かなかったのか。
A.無反応だった。
■尾を持ち振り回した件
Q.何故猫の尾を持ち振り回したのか。
A.振り回した後猫を床に置くと、よたよたと目を回して歩く様子が面白かったため。この遊びは何回かやった。
Q.死因が肺出血であった猫について、肺出血を引き起こした原因に心当たりはあるか。
A.はい。居間の椅子に座り、猫の尾を持ちくるくる振り回して遊んでいた。
その際、猫がクローゼットにぶつかったことが原因だと思う。
Q.猫の尾を持ち振り回し、壁にぶつかったことが死因であると被告人は認識している。しかし、その後同様の行為をやめなかった理由は何か。
A.深い理由はない。壁にぶつからないようにはした。
Q.何故同様の行為を繰り返しても猫は死亡しないと思ったのか。
A.わからない。
Q.壁にぶつかった際、猫の反応はどうであったか。
A.無反応だった。
■ひげを焼失させた件
Q.どのようにして猫のひげを焼いたのか。
A.玄関でタバコの火を使って焼いた。
Q.ひげを焼いたら猫は痛がり、怪我をすると思っていたのか。
A.いいえ。
■舌を切断した疑いの件
Q.舌を故意に刃物で切断したのか。
A.いいえ。振り回して壁にぶつかった際、舌を切ったのではないか。
Q.舌からの出血に気が付かなかったのか。
A.はい。
【猫の購入資金について】
Q.当時無職だったとのことだが収入はあったのか。
A.雇用保険からの収入があった。
Q.総額100万円程にのぼる猫の購入費用は、生活の負担とならなかったのか。
A.はい。クレジットカードで決済した。
【その他】
Q.今回飼った猫が初めてか?
A.はい。
Q.猫に名前をつけていたのか?
A.いいえ。
Q.猫の生年月日や品種について記憶しているのか?
A.いいえ。
Q.6月24日に猫が死亡しているのを発見した時、どのような状態であったか?
A.普段と特に変わりなかったが、動かなくなっていたので死んだと思った。
Q.猫の死体にうじが沸いている様子を見て、何も思わなかったのか?
A.何も思わなかった。
Q.生き物に対し、愛おしい・可哀想という感情を持っているのか。
A.いいえ。4年前にうつ病を患いそういった感情はなくなった。しかし、うつ病になる前はそういう気持ちを持っていた。
Q.感情を失い可愛くもない猫を飼って、寂しさが埋まると思ったのか。
A.そうなるかなと思った。
【今後について】
Q.社会に戻ったら、二度と生き物を傷つけることはしないと約束できるか。
A.はい。今後二度と動物は飼わない。
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「わからない」「理由はない」等の回答が繰り返され真相は不明なまま閉廷しました。
もし、虐待の動機が本当にないのであれば、常人の理解の範疇を超えており大変不気味です。
裁判官からは「かわいいと思わない猫をどうして飼ったのか?」「1匹目の猫が死んだのは、自分のしたことが原因だったかもしれない、と思っていたのに何故2匹目の猫にも同じことをやったのか?」「しっぽを脱臼した猫は1匹目、2匹目の猫が死んだ後だったがどうして同じことをやったのか?」と畳みかけるように追及をしていました。自分がしっぽを持って振り回し壁にぶつけたことで猫は死んだと認識していながら、何故同じことをしたのか、また何故可愛いと思えない猫を次々と購入したのか?それは虐待目的だったからではないのか、と鋭く被告人と対峙していました。
また、やり取りの中で「深爪どころか爪が全く残らないような切り方をしていると証拠記録にあったが、あなたの爪がこんな風にされたら痛いと思わないのか」との質問に対し「自分がされたら痛いと思うが、猫にした際は何も反応をしていなかった。」と返答。猫が何も反応しなかったというのは到底考えられず、誠実に答えているとは思えませんでした。
裁判官からは「今のあなたに動物を飼う資格はない」との強い発言もありましたが、この言葉を被告人はどう受け止めたのか、、、「二度と動物を飼わない」という発言もありましたが全く信用が出来ないという印象でした。
また、手元に現金がなくてもクレジットカードの分割払い等でペットショップから簡単に動物を購入できてしまうのが現状です。販売側は「動物が売れさえすればいい」ではなく、購入者をしっかり見極める責任もあるのではないかと感じました。
次回の公判は2023年1月10日(火)、論告弁論が行われる予定です。
2022年11月15日、Evaは京都地裁で行われた動物虐待事件の第2回公判の傍聴に行ってきました。
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今回は、追起訴された2件についての公判でした。公訴事実は以下です。
【公訴事実】
■第2の起訴
(※1)この猫はその後死亡しましたが「被告人の行為以外の死因も可能性としては考えられる」との鑑定医の見解を踏まえ、公訴事実は傷害のみ。
■第3の起訴
※被告人はすべての犯行を認めた。
検察官冒頭陳述による本件の経緯は以下の通りです。
【経緯】
■第2の起訴
■第3の起訴
いずれも、8月3日の家宅捜索の際に、被害が発覚。
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また、前回のスコティッシュフォールドの件(詳細は初公判レポートをご覧ください)について認否の変更がありました。
①18本の爪すべてを爪切りで根本まで切る。⇒認める(認否の変更をした)
②同猫の舌を切断する。⇒否認を維持
③同猫の胸腹部を圧迫して、外傷性ショックにより殺害する⇒否認を維持
また、スコティッシュフォールドの件に関する被告人の自白調書の内容が一部読み上げられました。
(※2)検察が証拠として提出している鑑定書では、噛みちぎったような切り口ではないので、自分で噛み切った可能性はない、と記載されているとのこと。
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虐待目的で猫を次々とペットショップから購入。合計100万円近い出費をしています。短期間にこれだけの大金を注ぎ込み虐待をした意図は何であったのか。何故、仔猫が殺傷されなければならなかったのか。
次回は被告人質問となります。
(2022年11月16日)
2022年10月18日、Evaは京都地裁で行われた動物虐待事件の初公判の傍聴に行ってきました。
起訴状によると、京都市の無職男性、酒井修平被告は、今年6月19日から23日までの間に、自宅で飼い猫(スコティッシュフォールド、ロング)の18本全ての爪を、爪切りで根本から切った。
また27日までの間に舌を切断、また胸腹部を圧迫し外傷性ショックにより殺害した。
この起訴状に対し、被告は、弁護側から渡された紙を読み上げて意見を述べましたが、
とのことでした。
検察官からの冒頭陳述は、以下の様なものでした。
被告人は、今年6月にペットショップで猫を218,170円で購入。生命保証12カ月が適応されていたが、死亡診断書が必要であった。
同23日に、動物病院に猫の爪を切ったと診断依頼。
翌24日、動物病院に死亡診断書の作成を求めたが、死体を確認していないので作成を断られた。
翌25日に、ペットショップに生命保証による代替猫の提供を求めるも、死亡診断書がないため断られた。
その後27日に、同動物病院に死体を持参したが、死体にはウジ虫が湧いていたとのこと。
不審に思った獣医師が、ペットショップにて遺体の冷蔵保存を提案した。
MCで固体識別ができた。
鑑定調査によると猫の舌には、歯形のようなものは見られず鋭利な物で切られ、もとまで深く切られた全ての爪も血液により赤くなっていたことから、生きているうちに人間が故意にやったもので間違いない。
自宅に他人が侵入したこともない。
以上から、被告人による犯行で間違いない。
この被告人の家には、他の1匹の猫の死骸と3匹の猫もいたとのことで、次回11月15日の第2回公判では、第2・第3起訴内容について行われると思われます。
舌を切断したり、しっぽを持って死ぬほど壁に打ち付けることが殺害の故意ではないなど通用しません。
また被告人は被害猫に名前もつけてなく、猫の種類も分かっていないことから、虐待目的でペットショップから購入し、更に生命保証制度で次の被害猫を入手しようとしていたと容易に想像できます。
逃げることも被害を訴えることもできない仔猫を、残酷に痛め付け殺した行為を到底許すことは出来ません。
動物愛護法の動物虐待罪の厳罰化は、2020年に倍以上に引き上げられました。残虐で悪質な行為について厳正な判決を望みます。引き続き裁判のゆくえを見届けたいと思います。
▼関西ニュース(参考)
https://www.asahi.co.jp/webnews/pages/abc_16825.html
(2022年10月19日)