シンポジウム「殺処分ゼロバブル?」(2016年11月)

2016年11月動物のいのちを考えるシンポジウム
「殺処分ゼロバブル?」

去る11月12日にNPO法人神奈川動物ボランティア連絡会さん、かわさき犬猫愛護ボランティアさん主催の、動物のいのちを考えるシンポジウム「殺処分ゼロバブル?」にEvaも参加いたしました。シンポジウムには多くの方にご参加いただき、大変有意義な会となりました。

基調講演​「殺処分ゼロバブルがもたらす弊害」講師:獣医師・西山ゆうこ様

殺処分ゼロバブルがもたらす弊害

かつての保健所は、基本的に引渡しはされてなく収容されてきた動物は全て処分。現在は譲渡が前提ですがかつてはいわゆる「処分場」でした。

「殺処分ゼロ」と言われる今、処分場とシェルターの違いは、衛生・動物愛護・虐待問題・医療ネグレクト・法律など、全て網羅されてなくてはいけません。

動物問題言葉の定義

  • 保護動物:終生飼養する飼い主がいない動物
  • 保護主:保護動物を世話している人
  • シェルター:保護動物が住んでいる所
    ※欧米式の立派な場所とは限らず、行政センター、動物愛護団体が所有する自宅及び施設も含まれる。
  • 預かりボランティア:英語でfoster
    ※預かりボランティアは、犬猫が暮らす場所がボランティアの自宅でも所有権は自治体や動物愛護団体。保護動物が逃げた、病気になった、死亡したなどさまざまな問題の時に、所有権がどこにあるかが大事でどう判断するかが問題。
  • トライアル:正式譲渡する前に、今後終生飼養されるであろう飼い主宅に試しに暮らすこと。トライアル期間中は、所有権は動物愛護団体
  • 正式譲渡:一生責任を持って飼うこと(終生飼養する)所有権は飼い主

動物が行政から動物愛護団体に行くこと、動物愛護団体から動物愛護団体に行くことは譲渡ではなく「移動」。
飼い主から迷子になりセンターに収容、その後元の飼い主に戻ること、これは返還(譲渡ではない)になる。

  • 殺処分:二酸化炭素ガス・放血 ※薬物以外で動物を殺すこと
  • 安楽死:薬物で動物を殺すこと

詳細を知りたい「センターから出た子たち」

殺処分の推移を見ると、自治体からセンター外に出て行った動物の数が、譲渡と移動と返還で同じになっているため、殺処分数はおのずと下がっています。自治体が動物を返還として出す、譲渡で出すのはもちろんですが、動物愛護団体に移動もしています。

出している動物の種別

  • 返還数:もとの飼い主に戻った個体数
  • 譲渡数:センターから終生飼育者へ譲渡した数
  • 移動数:センターから愛護団体へ移動した数

動物愛護団体に「移動」させた中で、その先の愛護団体内での生存数、死亡数、病死した数、そしてそこから終生飼養者へ譲渡された数は知らされません。本来なら動物愛護団体に移動させた行政が把握するべきです。

詳細を知りたい「殺処分されないけど、センターから出ない子たち」

地方自治体のセンターに入り、動物愛護団体に移動もせずセンターにいる動物もいますが、センター内で自然死、老衰、病死の場合、どの程度の医療手当をしたのか、またいくら医療費が使われたかを明らかにする必要があります。アメリカでは医療ネグレクトと関係してくるため当然開示します。病気の犬を放っておいて「病死した」「老衰で死んだ」は許されません。譲渡も愛護団体にも移動せず、センターで生存している個体数を、私達は知るべきですし、知る権利があります。

動物愛護団体に対しても同様で、会計報告・活動報告・使った医療費、また犬猫がどれだけ入りどれだけ出ていったのか、そして団体内で死亡した数も把握する必要があります。アメリカ人は寄附する場合、最低限その数字は見ます。大きなSPCAや愛護団体でなかったら、実際そこへ行きどういう状態で飼育されているか確認してからでないと寄附はしません。詐欺の問題もあるので、日本人も最低限チェックする習慣を持つべきだと思います。

アメリカの地域猫政策

地域猫活動をするなら地域猫の福祉向上も

それとセンターから譲渡ではなく地域猫になった猫の話しをたまに聞きますが、そもそも前提として室内で飼える猫を屋外で飼うべきでありません。地域猫は、触ることもできないシャーシャー猫で、人と共に室内で住めない猫が対象です。

外猫は非常に過酷な環境で生きています。ガリガリにやせ細り、例え太っているように見える猫でも内臓は悪く、耳ダニ、疥癬、真菌、貧血、ウイルス、寄生虫と戦っています。

地域猫のゴールは、増やすのではなく数を減らし一代限りで終わらせること。センターから「殺処分ゼロ」のために、譲渡されないから地域猫にでもなってくれればと外に出すのは間違いです。「殺処分ゼロ」ここだけを目指すとこのようなことが起きます。

アメリカではTNRは古く、TNTATrap-Neuter(early)-Tame-Adoption:捕獲-早期不妊去勢手術-慣らす-一般譲渡)です。

リターンなら、不妊去勢手術、ワクチン接種、白血病治療もした状態でリターンする対策をとらないと酷い状態から抜け出せません。マイクロチップを義務付けている自治体もアメリカでは多いです。

殺処分数は下がっていますが、移動先の愛護団体からなかなか出ない猫もいます。「移動した猫は死刑をまぬがれた終身刑」、地域猫として外に出された猫は、「死を免れたホームレス」です。「殺処分ゼロ」を謳うことによりこのような猫が増え、これは決してゴールとは言えません。

センターや動物愛護団体から出ない動物

それとセンターや愛護団体にやって来た動物の中には、医療費のかかる慢性の病気やアレルギー、エイズ、糖尿、乳のみ猫、攻撃的な犬、人慣れしてない犬猫、老犬や老猫がいます。動物愛護団体やセンターから出ない動物をどうするのか「殺処分ゼロ」を語るなら、真剣に目を向けて話さないといけない課題です。そのくせ「殺処分ゼロ」だけが一人歩きしているから譲渡されにくい動物も愛護団体に移動させてしまう。結果愛護団体から一生出ていかなくて苦労しているケースも多いです。

危険な犬

危険な動物に対し、獣医師はどう補ていしどう扱うかトレーニングされているプロですが、ボランティアや愛護団体は、正しいトレーニング法や知識を学べないのも問題です。危険な犬に噛まれたくないし、ボランティアさんに怪我をさせたくない、となるとどうしても散歩にも出さなくなり犬が孤立化します。一般のトレーナーは、飼い主をトレーニングしますがセンターにいる犬は、保護主はいても飼い主はいないので、トレーニングのやり方が異なりますし専門のトレーナーが絶対的に不足しています。

ガウガウ犬とシャーシャー猫

全国のガウガウ犬やシャーシャー猫が、動物愛護団体のケージを占領していることは動物にとっても団体にとってもよくありません。本来の動物愛護団体は、若くて健康だけど事情があって捨てられた犬猫を保護し、不妊去勢手術をして新しい飼い主を探し譲渡するのが望ましいです。ですがガウガウ犬やシャーシャー猫が入ると、若くてチャンスのある犬猫までが扱えなくなり回転が鈍ります。
そうなると「ホスピス」のような違うタイプの団体が必要になります。現在、看取るしかなく看取っている愛護団体も多いですが、費用もかかるしまた密室の中に入ったら何も分からないため、医療ネグレクトと背中合わせになります。出ない覚悟、
取る覚悟、費用、看取るボランティアの精神面、末期医療を診る獣医師不足、クオリティを持ちながらどう住まわせるか。こういった問題も多角的に解決し社会全体を改善していかないといけません。

啓発で「終生飼養」が可能か

高齢者が犬猫を飼い続けることが出来なくなる問題だけでなく、不慮の事故で亡くなったり重篤な病気で、一生飼うつもりだったけど飼えなくなることは人生の中にどうしてもあります。それをサポートするのが自治体ですし、愛護団体だと思います。
「一生正しく飼いなさい」と啓発も必要ですが、ある時は引き取らないと遺棄やネグレクトに
繋がります。実際に本当に困った人を助けられない自治体では意味がありません。殺処分が減るに連れ、動物愛護団体が増えボランティアも増え、団体に移動する動物も増えます。そのため寄附金も必要になりますが団体が増えることにより寄附金も集まりにくくなり悪循環が生じます。

また酷い所に何十匹も飼われている所が崩壊したら引き取るしかありません。高齢者の多頭飼育崩壊も予防が大切です。福祉面の高齢者サポートシステムとコラボしながら、崩壊の予防になればと思います。

とにかく今の日本は問題が山積みです。このようなことも考えず「殺処分ゼロ」なんでしょうか。

また動物愛護団体だけでなく、自治体、開業獣医師、獣医師会、生産者業界のペット業界やショップ、全て含めて面と向き合いどこの分野において誰がどういう役割分担をするのか、そういう動物はどうするべきなのか、改めて整理する必要がありますし、誰も話してないと思います。

一番のゴールはゼロにするのではなく、保護されている動物たちのクオリティーを上げること。どこかに移動して「殺処分ゼロ」になったと喜ぶことではありません。目を背けずにこういう子はどうする、こういう場合はどうしよう、高齢の子が出ていかない時はどうしたらいい、どうしたら譲渡される、譲渡できないならどうするのか、一つひとつ改善できるよう私たちが真面目に話しあって意識を持たなければいけません。それをやらない限り今の日本に「殺処分ゼロ」を語る資格はありません。

基調講演「川崎市の取り組みについて」
講師:川崎市動物愛護センター係長・獣医師・鈴木香奈子様

川崎市の犬猫収容数及び処分数

川崎市の犬猫収容数及び処分数

環境省の「無責任飼い主ゼロ」は大事ですが、無責任な人はなかなかゼロにはなりません。「殺処分ゼロ」は素晴らしい目標だと思いますが、ゼロの本質を理解してるのか疑問です。
殺処分に関しては、
炭酸ガスも薬物も関係なく職員が処分したものを殺処分といいます。

川崎市は犬がゼロですが、野犬がほとんどいないことと、攻撃性の高い犬、重篤な疾病を抱えた犬、治療に耐えられない犬がその年は収容されませんでした。なのでたまたまゼロになったということです。よく猫はゼロじゃないの?猫ももうすぐだから頑張ってと言われますが、猫のゼロはないと思います。猫の場合、交通事故で重篤な症状であったり衰弱している状態、また母親のいない仔猫などが収容されます。収容中の死亡率は高く、収容時に死亡している数も入っています。(121の中には死体として入ってきたのも含)収容中、このまま治療しても難しく苦痛を伴う場合は、センター職員、獣医師で方法がないか殺処分を含め相談し決めていきます。

殺処分されなかった収容動物は幸せか?

センターで最後まで面倒見ればいいじゃないか、センターがシェルター化して飼い主がいない動物をずっと預かればいいじゃないかと言われますが、センターは色々な動物が出たり入ったりとストレスのある場所です。そういう動物が果たして幸せなのか疑問です。最期まで飼ってくれる飼い主に譲渡される事が重要です。

元々狂犬病予防の抑留施設として設置された施設を、動物愛護法で(当時は保護法)動物保護も合わせて行う施設として、併用して使用しているところがほとんどです。狂犬病予防だと2日間抑留してその後殺処分だったので、長期間犬を保管する場所として考えられてない作りになっています。猫は狂犬病予防で保管はしないので、あとから猫舎を作った施設が多いです。もちろん猫も長期保管する場所と思って作られていません。

収容犬のために必要なことは、長期になる犬がストレスフルにならないよう環境エンリッチメントが必要です。猫は環境エンリッチメントももちろんですが、感染症の発症率が非常に高いため、すし詰めにすると人が風邪をうつしてしまいます。シェルターメディスンが必要で大きな課題です。

また相性が合わない犬がいると、同じ空間にいるのも耐えられず、吠え始めそのうち全ての犬が吠えあい毛むしりが始まります。

川崎市にはガウガウ犬はいませんが、ガウガウ犬1頭にかかるマンパワーや、ガウガウ犬が治療できるまで慣れるかどうか、例え慣れても職員にしか慣れないのであれば意味はないですし、譲渡先での事故も含め考えないといけません。ガウガウ犬に関しては、行政側がしっかり判断するべき問題で、なんでも譲渡すればいいということではありません。

川崎市の取り組みについて

本当のゴール

高齢者とペットの問題は、センターだけでなく市全体の問題で、単純に引取り拒否すればいいという事ではありません。相談の裏に問題が隠されてないかしっかり見極めることが必要です。

行政は諦めず啓発することも仕事です。ではどのようなことを啓発していくのか、不妊去勢手術の推進は必須です。センターも一般に譲渡する時は基本的に不妊去勢手術をします仔猫も1kg超えたら手術をして渡します。

ストレス管理においては、ボランティアさんの協力が不可欠です。ただ餌をもらって犬舎でずっと過ごすのはストレスがかかります。収容動物の散歩では、敷地内でにおいを嗅がせストレスを軽減します。スキンシップ、マッサージ、また事務所職員の傍で、電話やFAXの音に慣れさせます。

殺処分2,000頭のところも100頭切るところもゼロはゼロです。ですがそこに至る経緯が大事です。収容頭数が多い所が殺処分ゼロにしようとすると、ボランティアに負荷がかかり活動ができなくなります。自治体はボランティアの適正頭数を把握し、マネジメントしていく必要があります。ゼロの一歩先、動物福祉も頭に入れ協力しあうことを考えていくべきだと思います。

パネルディスカッション「殺処分ゼロを考える」

パネリスト
・獣医師 西山ゆうこ様
・川崎市動物愛護センター係長・獣医師 鈴木香奈子
・NPO法人神奈川動物ボランティア連絡会 矢吹紀子
・かわさき犬猫愛護ボランティア 廣田和子
・公益財団法人動物環境・福祉協会Eva 事務局長 松井久美子
コーディネータ
かわさき犬猫愛護ボランティア、動物介在教育・療法学会理事 事務局長 森茂樹

パネルディスカッション「殺処分ゼロを考える」

森:「殺処分ゼロ」を目標にすることが、動物のためにはバラ色であるかのような発信もありますが現実はどうでしょう。「殺処分ゼロ」は不幸な犬猫をなくすことに繋がっていないし、動物福祉と逆行している現実があるのでは。

西山:多角的なものの見方としてアメリカやドイツなど海外の情報は参考にはなりますが、日本ならではの問題が山積みだと思います。ペットショップが悪い、ブリーダーが悪い、無責任な飼い主が悪いと言っても何も解決になりません。問題点を話しどのような方向で進むか考えていくの事が必要です。

森:巷では、海外と日本を比べ、ドイツのティアハイムは「殺処分ゼロ」という発信がされることがありますが実際はどうなのでしょう。

廣田:ドイツはゼロだとみなさん言いだしたので、インターネットで調べたりさまざまなセミナーに参加したところ実はゼロではありませんでした。「殺処分ゼロ」は民間シェルターだけで、民間(企業)から寄附を集めたボランティア団体でした。民間のシェルターでも病気や譲渡不可能な出来ない犬や猫に対しては安楽死が行われていますし、ドイツには行政殺処分もあります。ドイツでは犬が一匹で歩いていた場合、猫が森にいた場合撃ち殺されます。

森:「殺処分ゼロ」展開の影響か、法律改正にも悪い影響が出ていると感じます。過去に環境省が殺処分数低減を目指して数値目標を出したときの各地の愛護センター職員が困惑していたことを覚えています。法改正で「引き取り拒否」条項が出た時はまずいと、最近では職務放棄に繋がる悪法だなんて声も聞こえてきます。

矢吹:数値目標を出すことで引取り拒否につながりますが、この引取り拒否は犬も猫も各自治体による基準があいまいです。乳飲み子、走れる猫、少しでも動ける猫は引き取らない。要するに傷病に近い状態じゃないと引き取りません。こういう場合は引き取る、引き取らないと基準を明確にし、情報として知らせ皆が納得することが大事だと思います。そして行政が引き取り拒否をするなら、なぜ飼えないのか、今後どうしたいのか、飼い主と向き合ってその後をフォローアップしていただきたいです。飼えないとなったらその後ネグレクトになります。そこで行政と民間が協働し、飼育不可になった動物をフォローする。その体制が出来て初めて引取り拒否ということを行って欲しいです。

森: 鈴木さんは行政の立場から、官民協働についてどのようにお考えでしょうか。

鈴木:目的が一緒ならそこをに目指して意見を聴きながら歩み寄ることができるのですが、10年前は行政がかなり叩かれた時代でした。ここ10数年「川崎犬猫ボランティア」さんとは真の協働になっています。その協働が数字の背景になっています。

森:川崎でも、過去には行政とボランティが対峙するという不幸な時代がありました。殺処分ゼロの展開により、動物愛護センターをアウシュビッツとか殺処分センターとか、そう捉える人も過去には多くいましたし、今もそういった行政批判をされる方もいます。

廣田:過去には行政に対し、過激派の人が会議の時に机を叩いて脅かすような人がいました。私達は市民ですし市の職員と分かりあいたいのですが、恫喝する人がいるとみな怯えて何も話せなくなります。脅かしたところで何も動きはしません。そこでまず行政の要求を聴こうということにしました。何をしたいのか、何を求めているのか、一つひとつ聞いて、分かりました、それ出来ます、出来そうですと言いました。行政職員のみなさんは、法律の枠内でしか仕事ができません。

森:全国各地の現場へ赴き現場ボランティアと協働しているEvaさん、各地のボランティアと行政との連携はどんな様子でしょうか。

松井:群馬県の例ですが、群馬県も初めは連携どころか殺処分数も多い県でした。高崎市の団体「群馬わんにゃんネットワーク」さんは、多くの人に知って欲しいと啓発目的のパネル展示をするも、行政側から「処分」に関する写真は全て却下。

ですが平成22年に高崎市が中核都市になり、群馬初の動物愛護センターが開設されました。センターには鑑札や迷子札がついていない子が殆どですが、センター職員は保護された地域に直接行って聞き込みをしたり、飼い主には適正飼育(所有者明示の必要性)の指導も行い、また区長に頼んで回覧板に載せてもらったりと、地道に飼い主探しをしました。地元の団体は、登録団体として積極的に譲渡活動も行い、そして翌年高崎市は殺処分数が8割減になりました。

また昨年今年と当協会は、2年連続で群馬県で動物愛護講演を行いましたが、昨年の講演の時に、群馬県の大澤知事が「2015年を動物愛護元年とし、積極的に動物愛護に力を注いでいく」と挨拶され、また今年は超党派で高崎市動物愛護議員連盟も結成されました。

森:飼い主の意識の問題はどうでしょう。

矢吹:最も重要なのは「終生飼養」ですが言葉だけが一人歩きしています。不適正飼い主が起こす問題、飼育者の責任の明確化が法律にも条令にもありません。現場でも不適正飼い主の相談を受けますが、行政の方に現場に行くようお願いして、現場には汚れたご飯と水の入れ物でまわりは糞だらけであっても「ご飯食べてるじゃないですか」そんな感じで指導にもなってません。紙を入れて「今日来ました。何か相談があったらどうぞ」など今の日本の指導の仕方にも問題があります。アニマルポリスなど権利を持つ所がないので、別組織でそういう所が日本に出来てもいいと思います。

森:日本は動物後進国だという表現を聞くときがありますが、動物後進国と言われるその要因は、無責任飼い主の問題もありますね。

鈴木:無責任飼い主との関わりは多いです。85歳のご高齢の方がペットショップで柴の仔犬を買って2ヵ月程度庭でつないでいたら吠えて近所迷惑になった。自分も入院するのでもういらない。といった相談を受けたこともあります。

安易な理由による相談もありますが、最近は最期まで飼おうと思っていたけど生活上の深刻な理由で飼えなくなったという相談も増えました。それは行政全体でフォローする事案だと思います。

松井:先日あるセンターを視察しました。収容されている犬の4割以上が首輪をしています。飼い主明示がされていないので飼い主のもとに戻れず返還率も大変低いです。飼い主はいなくなっても「そのうち帰ってくるだろう」と探しません。そういう犬のほとんどが公示期限を過ぎ殺処分になっています。犬に関しては、登録と交付された鑑札と注射済票を飼い犬に装着しなければいけませんが、それすら知らない人もいます。周知徹底の必要があります。猫に関しては、登録義務はありませんが、これだけ災害の多い国なので、もしもの時に室内から逃げてしまう場合もあります。そのためにもマイクロチップの装着は必須だと思います。

矢吹:あと言いたいのは猟犬の問題です。狩猟のシーズンになると新しく猟犬を飼い、猟が終わると捨てます。終生飼養する方は実に少なく、3歳で使い物にならないと捨てるかセンターに持ち込みます。ですが猟犬も愛護動物で道具ではありません。この問題もクリアしないと「殺処分ゼロ」という道はとても遠いです。

森:そして愛護団体の基準の問題もあります。

西山:活動内容、会計報告の公開と不妊去勢手術の実施が最低限必要です。

森:愛護団体と一区切りで言っても東日本大震災以降と前ではかなり違ってきました。最近ますます参入団体が増え、マネージメントも上手です。団体である以上の最低限の基準も満たさないまま寄附を募っています。街頭募金で犬を何時間も置いて寄附金活動している団体や寄付金がどのように使われているか透明性が低い団体、不妊去勢手術をせず出している団体、そういう事がおかしいと思う感覚が必要だと思います。

松井:目に見えずらい話しとして、今年の夏に関西の愛護団体が多頭飼育と人手不足で崩壊しました。レスキューが入った時は、犬約70頭、猫約85匹だったそうです。多数の犬猫を抱えれば、当然その数に見合ったスタッフの数が必要ですし、そういった中で飼養されている犬猫は、まさに生き地獄のネグレクト状態です。適正な管理が出来ない保護団体に犬猫が引き取られることにより、表面化せず命を落している犬猫がいます。

またある悪質な動物愛護団体の情報を耳にしました。保護している動物の環境はまさに不衛生で劣悪、犬はフンまみれで、猫も床でトイレをしている状態です。不妊去勢手術も行われていません。その団体はブリーダーから心臓の悪い犬を引き取り、募金を集めたり里親を見つけそれまでの高額な医療費を負担させます。譲渡の際は、施設内は見学させず近所の公園でお見合いをさせたと聞きました。遺産相続の話しもあるそうです。寄附する側にも団体を見極める目が大切だと思います。

廣田:また動物を救うという意味で愛護団体の犬の扱いがひどいです。チョークチェーンで引っ張りあげる、蹴り上げる、犬が嫌がっているので触りまくって懐いたと。医療面、施設面ももちろんですがトレーニング面はもっとひどく、あなたたちは犬を救いたいのか、自分が気持ちよくなりたいのかどっち?と思います。

矢吹:あと問題なのは、動物取扱業の一種も二種も、ある社団法人や協会の通信教育簡単に取得できること。それを取ることで色々な動物に関わる事業を起こすことが可能で、そこからまた負の連鎖が始まります。動物取扱業は、通信教育のペーパーだけじゃなく、正しい知識を習得させるべきで国は本気で考えなければいけません。そうでなかったら動物問題の解決の糸口はないと思います。

西山:行き場のない譲渡されない子たちは、どこかで誰かが見なくちゃいけない、だとしたら団体だけでなく社会でそれを担う人たちがそれぞれ自分の出来る範囲で行う必要があります。開業獣医師の病院でケージが2つ空いてるなら、末期の腎臓病やエイズの猫など、もらわれずに医療手当が必要な子を引き取り最期まで診るとか。各病院で2匹看れたら全国13,000軒の動物病院で26,000匹の行き場のない譲渡動物がそこでケアされます。何らかの形で社会に貢献してシェアする世の中になればいいと思います。

森:「殺処分ゼロ」にむけて、譲渡の推進とか法律論は注目されますが、他にも大きな要因として動物の命を軽んじるという人としての問題があります。そこを焦点に発信する取り組みは少ないです。最近では子供たちに「命の教室」を通じて命の大切さ、共感力、想像力を醸成させる、教育的取り組みの必要性が認識され始めています。

廣田:私達は小学校12年生を対象に出前教室をしています。ふれあって「温かいでしょ、心臓の音がするでしょう」というのは当たり前、そんなおしつけのような「ふれあい」はやっていません。ふれあいたいならまず動物をよく知るところから始め、子どもたちに何が必要か考えてもらいます。最初はよくわかってなくても、最終的には、まず一番にお金が必要、次に責任のある愛「ハート」が必要と必ずこういう答えがでてきます。

森:「殺処分ゼロバブル?」今回これをテーマにさまざまな課題があげられました。一つひとつの課題は本当に奥が深く、簡単に解決できることではありません。さらに次回はそれぞれのテーマを掘り下げたシンポジウムを開催したいと思います。

収容動物を減らすために-私たちにできること

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講師:行政書士 田代さとみ、税理士 中島まり子

自分に万が一のことが起きたら…、日本の法律ではペットにお金は残せません。残されるペットを飼ってくれる人を指定し、その人に財産の一部を残しペットの居場所を確保するという対策は、今後飼い主の責任として必要です。万が一の病気や施設への入所、そういう場合、最終的に取り残されるのはペットです。今後ペットを飼うときには、このような対策を心がけましょう。またこういったことができない人、つまり万が一の時に自分の代わりに飼ってくれる人をどうしても思いつかない人は、「ペットを飼うことができない」。ということが当たり前な社会になれば、取り残されるペットもいなくなります。

朗読会『どうぶつと生きるということ』

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出演:にくキューレスキュー@大人女子アナウンス部

あの子との日々、あなたはどんな時間を過ごしましたか?どうぶつと人との時間を過ごした物語「ドリー」と「わすれられないおくりもの」の朗読をお送りいたしました。にくキューレスキュー@大人女子アナウンス部は、『朗読』を通して、改めて人と動物との関わり方をみんなで考える女子アナウンサーによるボランティアグループです。  

動物のいのちを考えるシンポジウム 「殺処分ゼロバブル?」

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