犬猫の殺処分ゼロをめざす動物愛護議員連盟 第11回PT

2017年12月 動物愛護法改正 第11回PT レポート

12月6日(水)Evaは、「犬猫の殺処分ゼロをめざす動物愛護議員連盟 第11回PT」に参加いたしました。今回は、公益社団法人動物福祉協会 獣医師調査員 町屋奈氏と当協会理事長杉本彩を講師として開催されました。

議題は「多頭飼育の現状と課題、動物虐待現場へ立ち入り、緊急保護、飼育禁止命令等」ということで、議論されました。

Eva報告(理事長杉本彩)

動物愛護法改正 第11回PT レポート

当協会に寄せられた2件の相談事例について、そして千葉仔猫虐殺事件、猫13匹埼玉元税理士事件について報告しました。

  • 札幌の多頭飼育と飼育放棄問題
    札幌市内で、施錠された飼い主不在の酷い臭気の家に数十匹もの猫だけが家の中にいて、餌や水をもらっていない。命のタイムリミットが近づいてきていてこのままでは全頭餓死してしまう!助けて欲しい。
     
  • 川崎市飼い主による犬虐待事例
    公園で、泥酔した飼い主から日常的に虐待を受けている犬を保護したが、警察から返還を求められ、警察はこれ以上関わりたくないから、今後当人同士で話すよう言われた。どうしたらいいでしょうか。

ここで問題なのは、明らかに積極的な虐待をしているにも関わらず、「死んでなければ虐待ではない」「明らかに死亡しそうであるか、もしくは傷付けられ血を流している状況でない場合は虐待とは言えない」「これ以上関わりたくないから当人同志で解決するように」「飼い主には、所有権があるため返還しろ」「返還に応じない場合は窃盗だ」とされた現場の行政と警察の対応です。それにより現場の動物は保護されず、解決の糸口を見いだせなくなる状況に追い込まれます。

動物愛護管理法で虐待について書かれている部分は以下の通り

第44条 愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者は、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金に処する。
愛護動物に対し、みだりに、給餌若しくは給水をやめ、酷使し、又はその健康及び安全を保持することが困難な場所に拘束することにより衰弱させること、自己の飼養し、又は保管する愛護動物であつて疾病にかかり、又は負傷したものの適切な保護を行わないこと、排せつ物の堆積した施設又は他の愛護動物の死体が放置された施設であつて自己の管理するものにおいて飼養し、又は保管することその他の虐待を行つた者は、100万円以下の罰金に処する。
3 愛護動物を遺棄した者は、100万円以下の罰金に処する。

動物愛護法改正 第11回PT レポート

児童虐待防止法においては、明白な証拠がなくても、虐待の可能性が疑われれば通報義務があり通報できるため、今後児童虐待を例に動物の一時保護、また所有権を剥奪せず一時保護(所有権の一時停止)が出来る仕組みを作れないか等説明してきました。

いずれも条文を見ればわかること、適正な44条の運用とそれに加え虐待を行った者に対し、飼育禁止措置も必要不可欠です。(札幌事案の飼い主は保護された猫の返還を求めている)
個人の所有権より重要なのは「命あるもの」の保護と、地域社会における環境保全であり、個人の所有権を強引に施行することで、命や地域社会に害を与えることは理解できないことで到底許されることではありません。社会の健全化を図るためにも、これらの虐待事例に迅速かつ適正な対策が講じられるような法改正を行っていただきたいです。

  • 千葉仔猫虐殺動画事件
    両前足にガムテープを巻きつけ拘束、激辛チリソースを塗った綿棒を口の中にねじ込み、その後ティッシュペーパーで乱暴に肛門をこすり続け、肛門から出血させるという虐待・傷害行為を行い、強くつかみ激しくゆすり続けることで骨折させ死亡させた。
    9月8日略式起訴され、同日付で罰金20万円の略式命令。
     
  • 猫13匹に熱湯をかけ、バナーであぶり殺した埼玉元税理士大矢誠事件
    捕獲器で猫を捕獲し、バーナーで火あぶりにし、熱湯をかける。
    捕獲器に爆竹を投げ入れ、熱湯をかける。
    パイプにロープをかけて猫の首を吊り、熱湯をかける。
    懲役1年10月、執行猶予4年の判決。

2例ともあまりに軽い判決であり当協会は動物虐待罪・遺棄罪の罰則強化を求めます。

動物殺傷罪については2年以下の懲役又は200万円以下の罰金⇒5年以下の懲役又は500万円以下の罰金にひき上げ虐待防止を強化、罰則を強化

  1. 行政による緊急一時保護を可能にする
  2. 殺傷・虐待・遺棄事案で有罪判決を受けた者に対し、動物の所有を一定期間禁止する

動物福祉協会報告(町屋奈氏)

積極的(意図的)虐待とネグレクト、劣悪多頭飼育問題、アニマルホーダーそれぞれに対する説明がありました。
アニマルホーダーの分類

  1. 世話がいっぱいいっぱい型
  2. 搾取型
  3. レスキュー型

ホーダーの特徴と発生率
【特徴】

  • 常習性(再発)100%
  • 年齢60歳以上46%、30歳代から始めることが多い
  • 2/3が女性、2/3が独身
  • 教育レベルは高い
  • 経済レベルは多様
  • 発生率700~2000件/年

アニマルホーダー飼養動物の問題
人慣れしていない警戒心の強い個体が多いため、新しい飼い主を探すことにかなり苦慮し、新しい飼い主が見つかってもかなり長期間要す。場合によっては安楽死も考慮する必要がある。

またアニマルホーダーの再発率は100%で予防は困難を極める。虐待現場(疑い)への立ち入り権限や緊急保護と飼育禁止(停止)命令など法整備が必要不可欠。

虐待現場(疑い)への立ち入りには飼い主が暴力的で攻撃的な場合もあるため警察の同行は必須。また精神医療分野など他機関と連携・協働する場合、役割を明確にしそれぞれの専門家に任せる。

質疑応答と意見交換

動物愛護法改正 第11回PT レポート

浅田美代子様

悪徳繁殖業に行政はなかなか立ち入り検査をしてくれない。ペットショップで販売されている子犬の親の姿は明らかに虐待とわかる程酷い。

環境省
自治体によって様々で、通常であれば虐待の疑いがあれば立ち入り検査をする。そこで問題があって改善・指導しない場合、また指導してもなかなか進まないこともある。問題は、業として営んでいる一方で、業者の方の改善を見守ってしまい皆さまからご指摘されてしまう。本当に虐待なんじゃないかという酷いケースもある。なぜ自治体が強く言えない悩みがあるのかは、現場の獣医師の多くが食品衛生分野の方がペットの分野に来る場合、担当する獣医師のスキルアップをしなくてはいけないから。スキルアップをするために、そこに注目した研修をやり始めている。虐待を科学的に調査する人材育成をしようと今年から始める。運用体制の向上の努力はしている。

福島みずほ議員
児童虐待防止法、DV防止法では、虐待の疑いがある場合、通報しなければならないことを義務にしている。法案を作る際にどのくらいのボリュームにするか議論するが、児童虐待防止法も何回か改正をしてきて、拒否しても家を開けるようにするとか、通報を義務にするとか少しづつ家の中に公権が入れるようにしてどう救うか話してきた。そういったことや外国の例を参考にしてはどうか。

生方幸夫議員
前は「物」、今は「命あるもの」に変わった。所有権の問題で命あるものに所有権が主張できるのか。所有権を主張するがために立ち入りができないのはおかしい。そのあたりとどう位置づけていくのか、所有権というのが相変わらず物扱いしていることが大きな問題だと思う。

岩屋毅議員
慎重な検討が必要。諸外国先進国の事例など研究していただき、検討を深堀していかなくてはいけない。

高井たかし議員
警察がこういった問題に対し、十分に理解されてないのではないか。実際は警察と自治体がやらなくてはいけない。環境省が警察にもっとお願いするとか依頼するとか指導するとか、自治体に対してもそうだけど中々それはできないんですか?つまり環境省の権限がどこまであるか分からないから警察に言いづらく、普段の連携体制とか法律にもあるわけで、予算も取られているわけで定員も増やされているのだからそうすれば出来る事ではないですか。

環境省
個々のケースにおいて地元の自治体が主導で動くので、自治体と警察が虐待事案全般に関して行うが、しばしば環境省と警察庁と色々やりとりはある。最近ではトラバサミを使うのは、虐待の可能性があるという見解を出したが、出す前に警察庁と確認し出している。

高井たかし議員
環境省の権限で出せるのか。

環境省
警察庁からは、県警にしっかりやるよう伝えていると聞いている。

動物愛護法改正 第11回PT レポート

福島みずほ議員
環境省と警察との間でどういう議論を今までしてきたのか、どういう指導をしてきたのか。例えば法律に細かく書く事は難しくても、通達とかマニュアル作りなど警察と共有するとか、通知の徹底をしてもらうとか。

高井たかし議員
しばしば連携と言うがどのくらい?ガイドラインなどがあれば警察も周知しやすいと思う。

環境省
虐待を科学的に判断する研修をやっていくと言いましたが、人間の場合、法医学でなぜこの人がこういう症状になっているのか見るが、動物の場合、獣医さんの中でしっかり知識を持った方がやっていただいて裁判の証言に立っていただく。そういう事が今はないという現状で可哀想と思う方が、虐待だと言っても獣医学的に見て虐待をどう証明していただき現場で判断できる人を作っていくか。ただ明らかに虐待で積極的な事案の場合、積極的に対応してもらえるように各自治体には色々な会議の時に伝える。

中野洋昌議員

地元兵庫県でよく聞く話しでは、虐待している人なり家庭なりが孤立していたりとか、世帯そのものが課題を抱えていると聞く。動物虐待を地域で無くしていくために、色々な人が連携する仕組みを作っていかないと、一つ一つの事案に対応する事は大事だけど抜本的な解決にはならない。自治体によっては問題意識を持ってやっていこうという所もあると聞いている。

高井たかし議員
熱心に取り組んでいる自治体もあれば全くやってない自治体もある。自治体任せ、都道府県任せではなく、そういう事を定例的に義務付けるとかはできないのか。環境省としてどの程度連携しているなど把握してないですよね。

環境省
多分、政令市、中核市くらいの規模であれば、都市型でもあるしそんなに警察署の範囲と大きく違わないと思うのでそこそこコミュニケーションが取れる。
115自治体の調査については、法律を施行している部門で都道府県が基本で政令市、中核市以外の市町村は県の主体に入る。県民トラブル系は、市町村範囲の方が問題解決に近いのでそのためにはどうしたらいいのかといったところ。

岩屋毅議員
今日両団体から紹介された明らかに顕著なケースをどうさばけばいいのか、法改正するならどこまでが妥当かそうでないのか。そういう事も含め外国の事例などあれば勉強して紹介して欲しい。

福島みずほ議員
多頭飼育問題や虐待問題を、社会福祉施策として連携し予防の段階から入っていける仕組みを作れないか。全国的な事例を集め何が必要か新規予算として取り組んでいきたい。警察との取組み内容や外国の事例など環境省から出して欲しい。

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環境省がいう、虐待の科学的知見、獣医師のスキルアップ、それらは虐待が疑わしい場合には判断材料として必要かもしれないが、明らかに虐待であり緊急性の高い進行形の事案については、一刻を争う現場でどう動く事が出来るかが保護につながります。全国あらゆる場所で、一般飼い主や繁殖業者などによる動物虐待事案が起きているにも関らず、どうにも進展が望めないケースが多発しています。虐待の科学的知見、獣医師のスキルアップは、そんな切迫した現場にとって机上の空論にしか過ぎず、必要なのは救命のための一時保護の仕組みと言えるでしょう

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