シンポジウム「改正動物愛護管理法を考える」レポート(2017年9月)

2017年9月「改正動物愛護管理法を考えるシンポジウム」

シンポジウム「改正動物愛護管理法を考える」

去る9月19日にEva主催(協力:犬猫の殺処分ゼロをめざす動物愛護議員連盟)で「改正動物愛護管理法を考えるシンポジウム」を行いました。8週齢規制、飼養施設の数値規制、マイクロチップの方向性、動物取扱業の許認可制、また動物虐待における罰則規定など、現実的かつ実効的な法改正にむけて報告、議論されました。

第2部「パネルディスカッション」

開会挨拶

自由民主党参議院議員 尾辻秀久様

自由民主党参議院議員 尾辻秀久様

今年3月から開催された、「犬猫の殺処分ゼロをめざす動物愛護議員連盟」の動物愛護管理法改正に向けたプロジェクトチーム(PT)では、毎回多くの問題点が議論され、6月の総会では、中間報告をまとめました。議員連盟の名前に「殺処分ゼロ」というワードが入っていますが、さまざまな動物問題について皆さんにわかりやすく趣旨を伝えるためこのような名前にしています。今日はこのシンポジウムで、議連PTで議題に上がった多くの問題をみなさんと共有していきたいと思います。

第1部

ペット流通について(講師:朝日新聞社 太田匡彦様)

ペット流通について 朝日新聞社太田記者

今現在、猫に比べてこれだけ犬の殺処分数の減少割合が大きいのは、やはり以前は動物取扱業者から引き取る割合が多かった。

これだけ殺処分数、引取り数ともに減ってくる中で、今までは法改正以降、引取りを拒否することで殺処分を減らしてきたが、一方で、リピーターやアニマルホーダーなど、現場で引取り拒否の対象になっている人たちこそ、問題のある飼育者の可能性がある。今後はドイツのように不適切な飼い主からセンター等が積極的に犬を保護し、新たな飼い主を見つけるというような考え方も必要なのではと思う。

もうひとつは、今、動物愛護団体の負荷が増大しているが、これは行政から民間の業者に「殺処分ゼロという事業を委託している」と考え、何らかの支援、補助等をしていく必要がある。一方で第二種動物取扱業者になっている動物愛護団体も、自分たちの活動のありかた、保護のしかた等々に対して、新たな眼差しを向けていく必要もあるのではないかというのが殺処分を巡る現状だと思う。

法改正前に、犬の引取り申請書という、飼い主が犬の飼育放棄をする際、自治体に提出する書類を情報開示制度で集めた。その中には、業者からの申請書もあったためそれを集計すると、少なくとも純血種の4匹に1匹が、動物取扱業者が自治体に引取りを求めたものだった。この数字は、身分を偽ったり一匹ずつ分散して引取りを求めた可能性も考えると氷山の一角と言える。

他にも、法改正以前には、化製場法違反と狂犬病予防法違反で逮捕された兵庫県尼崎市のペットショップ経営者が、尼崎市に対して引取りを求めたり、また茨城県阿見町の繁殖業者が、茨城県の動物指導センターに引取りを求めるなど、たくさんの犬や一部の猫が、以前から、自治体のほうに引き取られている現状があった。

これらは、大量生産、大量販売、大量消費の流通モデルの中から漏れ出てくる結果であり、大量に生産しようとしたら、当然ながらその後繁殖できなくなってしまう繁殖犬、繁殖猫が大量に出てその結末として犬猫たちの処分に困る。小売業というのは、どうしても在庫を抱えて行うビジネスのため、不良在庫として売れ残りが出てくるのは当然のこと。そういった犬猫たちが、これまで殺処分されてきた。

法改正で行われた規制は、週齢規制については、49日目まで。繁殖制限、飼養施設規制等は、前回の法改正では、専門家の意見評価を待ちましょう、ということで見送られた。移動販売も、業界団体は禁止を求めていたにもかかわらずそのまま行われており、登録制から許可制への話も見送りになった。一方、インターネット販売等が規制されたにもかかわらず、販売代理業のようなものが登場し、規制の網の目を潜り続けるといった現状がある。その結果として、犬猫の引取り屋ビジネスや回しっこの活発化、そして虚偽通報事件などが起きた。

JKCの永村武美さん(元JKC理事長)が、都内で行われたシンポジウムで、「あまりにも急激にその規制強化がなされると、たとえば、新聞紙上をにぎわせております大量遺棄、廃棄というようなことが、これ必然的に起こってくる。要はブリーディングができなくなるわけですから、保健所でも引き取っていただけない。となると、じゃあどうしたらいいか。もう知恵の出しどころがなくて、大量廃棄をする、遺棄をする」とご説明されていた。こういったことから、法改正後のペット流通の中から、引取り屋に行ったり、大量に遺棄されたりといった事件が後を絶たないという状況があることがわかる。

また一方で、遺伝性疾患も含めペットを買ったら病気だったというケースが、流通業者を経た犬猫に多く見られる。国民生活センターへの相談事例では、例えば格安スマホでは16年度に1,045件、話題になった水素水は15年度に705件。急増する事案でこの数字だが、ペットに関しては、毎年1,000件を超える水準で、非常に問題の多い流通であることは間違いない。

また猫ブームについては、ペットフード協会のデータでは、犬の飼育意向は徐々に減少傾向だが、猫の飼育意向はほぼ横ばいで、おそらくこれから犬や猫を飼いたいという人の割合は同程度になってくる。ペットショップで購入する割合は、ほぼ前年と変わらないが、20代では、「ペットショップで猫を購入する」と「野良猫を拾った」が同数の約23.5%。野良猫を拾い飼うという事はこれまで一般的なイメージだったが、若い世代では、ペットショップで買うのと野良猫を拾うのはほぼ同じくらいの割合になっている。大手ペットショップチェーンでも、販売数が前年比約2割増の勢いで増え、朝日新聞で調べた流通量を見ても、15年度は前年度比で犬が12%増だったのに対し、猫が17%増えている。かつ、ゴールデンウィークあたりの競り市の市況を見ると、仔猫は、すでに仔犬よりも高くなっていて、仔犬が10数万程度に対し、仔猫は20万円を超えたと言われている。

あるペットショップのデータでは、今まで犬をやっていた繁殖屋が、猫を始める割合が増えているそう。猫は、季節繁殖動物で、日照時間の長さにより、繁殖できる頻度が変わってくる。あるペットショップチェーンでは、「繁殖効率をあげるために、1日に12時間以上、蛍光灯を当てましょう。そうすると猫は年間3回、4回と繁殖します」と指導を行い、猫の増産体制に入っている。猫でも、遺伝性疾患等の問題が出ている。猫のほうが、当然ながら個体群が少ないため、一度、遺伝性疾患が蔓延したら、これを取り除くことはなかなか難しい。現在、折れ耳が可愛いと人気猫種のスコティッシュフォールドは、優性遺伝する骨軟骨異形成の原因遺伝子を持っているが、そうした個体まで繁殖されている現状がある。鹿児島大学の大和修先生のお話しによると、猫は犬よりも遺伝性疾患が広がりやすいと言われ、昨今の猫のブームは、ペット流通を考えるうえで、絶対に考えておかないといけない問題と言える。

また、2015年度の犬猫等定期報告届出書を集計すると、犬は12%増、猫は17%増。かつ死亡数は、年間犬で約19,000頭(死産、繁殖用の成犬・成猫等販売及び引退後の個体は引き渡し数に入るため含まれず)。殺処分数よりも多い犬が、繁殖から販売に至る過程で、死亡していることは、非常に重い数字である。北海道のあるペットショップの定期報告届出書を情報開示請求し、集計した結果では、ショップによっては、78%の犬や猫は店頭で死んでいるという事例もあった。結局、さまざま問題を抱えた流通小売業という大量生産、大量販売、大量消費が、法改正においてそのビジネスモデル自体にはメスが入らないままになった。なかなか法律として有効な手を打てていないのが現状である。

法改正のポイント(講師:細川敦史弁護士)

法改正のポイント 細川敦史弁護士

動物取扱業者について

自治体は人員不足だから仕方がない、という現実的な問題について提案をしたい。
前回の改正では、従来型のペットショップ、トリマー、ペットホテル等の第1種動物取扱業に加え、シェルターを持つ動物保護団体の第2種動物取扱業という2つの動物取扱業の枠ができたが、これを3つに分けてもいのではということで考えてみる。

1つ目は、よほどひどいことをしない限り、辞めさせられることがない届け出制の第2種動物取扱業、そして2つ目は、従来通りのショップの形をとる業者、3つ目は、生体を扱う販売業者や、前回の改正で業者に入ったオークションなどを許可制にする。

一番大切なのは、命を生み出すということ。先天性疾患などが、沢山産まれたら、その後すべての業者に関わってくるため、繫殖時でしっかりしておく必要がある。そうなると、3つ目について多少自治体業務が忙しくても、1つ目、2つ目が忙しくなければ、3つ目のある一部に対して、自治体の力を注げるという理由で3つに分けた。

これまでの業態の中で「繁殖」は、「販売」の枠に入れられていて、繁殖をしたら当然それを売るということから「販売業」の中に入っていたが、この「繁殖」を業とする1つの業態として独立させていいと思う。

皆さんが許可制に何を求めているのかというと、実効的な監視、監督が出来る仕組みが欲しいということだと思う。他の業種を見ると、許可制はいろいろあり、本来なら動物取扱業も許可制にするべきという話しになる。そこで他の業規制を調べてみると、同じ環境省の所管では、産業廃棄物処理業者があり、また他の省庁の所管では、建設業や土壌汚染処理、風俗など意外と許可制はあった。珍しい例としては、貸金業いわゆるサラ金の類は、登録制で意外ではあったが、厳しさはほぼ許可制と一緒だった。この貸金業を目指しても悪くないのではと思う。

本来は、「それはだめ」と都道府県から言えるのだが、今の法律の書き方が、「取り消すことができる」いわゆるやってもやらなくてもいいとあるため判断が非常に曖昧。そうではなく取り消し事由が発生した場合、必ず取り消さなければならない、裁量の余地なくやらなければならないとなっている方が、自治体としても判断に困らずどちらにしようか悩まなくて済む。法律に、「取り消し」と書いてあるから仕方ないと業者にも言える。ちなみに、必要的な取り消しという条項は、貸金業についてもある。こんな時は必要的、こんな時は裁量的とそれぞれ分かれていて、比較的軽い違反の時は、裁量的だが、とても重い違反で有罪判決を受けた場合などについては必要的となっている。あとは、監督処分を受けた際には、この業者はこんな違反行為をしたということが省のネット上に公告されるが、動物取扱業にはそれはないため、こういうものを設けてもいいと思う。あとは、立ち入り検査等が行われる時には、居留守を使われるなど色々問題があるが、他の業規制を見ると、そういう場合にはペナルティが設けられたりしているので、そういったものも作ったらいいと思う。

飼い主規制について

飼い主規制については、法規制になじまないということで飼い主のモラルとしてまとめられる傾向にある。それについて有効性自体を否定するつもりはないが、同時に啓発して改善できることは進め、実際届いていない層については、法規制が必要だと思う。

一般的な飼い主までいきなり及ぶのではなく、例えば、多頭飼育問題の場合、規制することにより、何が得られ何が得なのかといったことを考えてみる。もちろん、劣悪な環境でどんどん産まれ、死んでしまう命は可哀そうと言うのは分かるが、それだけではなく、周辺の生活環境が損なわれるという人の問題も付与できるので、これが規制の必要性だと言えば合理的。一方で制限される利益というのは、「俺は飼いたい、俺の権利だ」という財産権なので、そこは規制する側の理由の方が強いのではないかと言える。となると、多頭飼育という定義において、多頭飼育状態になっている人に関し、不妊去勢措置をとる義務付けする。実際にお金がなさそうな人に義務付けてどうするという考えがあるかもしれないが、ひとまずそこは不妊去勢措置をとりなさいということは、必ずしもおかしくないと考える。

もう一歩進み、先ほど、一般の飼い主にまで、いきなり及ぶのではないと言いつつ、不妊去勢の義務付けを多頭飼育状態のみならず、原則として、繁殖規制の措置をとってくださいということは、法律ではないが、環境省の告示で、決めているものではある。これはすでに謳われていること。このことは、前回の終生飼養の時のように法律にあげたらいいのではないか。これは意外と厳しく、努力義務ではない措置を講じることと締めているため、原則やりなさいというのが共通基準。

猫については、原則としても外れてはいるが、外で猫を飼う際には、繁殖制限の措置を講じることが原則で、そこは義務付けになっている。ただ法律に書いてないため、守られなかった時のペナルティが書かれてなく、そこがいまひとつ使われていないし、皆さんに知られてもいない、という状態になっている。

虐待について

統計を見ると、虐待の件数は増えている。皆さんご承知のように、最近は、ネットで公開する愉快犯的なものも出てきている。刑を3年に上げるべきだ、という案もあるが、私の意見は、ここは思い切って5年くらいに上げるべきだと思う。我々弁護士は、刑事弁護もやるが、3年という軽微な犯罪の場合、被疑者の側から捕まった際に、別に国選の弁護士がつかなくてもいいというくらい軽く見られている。そのため、憶測ではあるが、検事も略式でいいだろうというような判断をされているのではないのかと思う。

軽い犯罪だから、軽く見られているため3年でもまだ軽いのでは。5年になってくると、国選が付くくらいの悪いやつと見られるので、5年くらいを考えてもよいのではないかと思う。

もうひとつ、「緊急的な一時保護」という制度があり、これは、児童福祉法に規定がある。2か月間保護するという制度があり、2か月後には、親の親権停止のような制度があるため、これを使い2年未満の停止又は喪失をさせる。これが、いわゆるペットの所有権の剥奪につながっていくわけだが、このあたりを参考にするのがいいと思う

虐待について(講師:Eva理事長杉本彩)

虐待について Eva杉本彩

矢板市の引取り屋について

昨年、NHKクローズアップ現代でも報道された、栃木県矢板市の引取り屋

動物愛護法442項(ネグレクト)違反しているにも関わらず⇒不起訴

狂犬病予防法違反⇒略式命令ですがたった10万円の罰金

▼不起訴の理由

被告発人の施設で健康状態が悪くなったのか、被告発人に引き渡された時点で罹患していたのかを立証することが困難

▼これを不当と考える理由

動物愛護管理法442項は、「排せつ物の堆積した施設又は他の愛護動物の死体が放置された施設であって自己の管理するものにおいて飼養し、又は保管すること」⇒これが罰則の対象であり、排せつ物が堆積し、一部は変色していたことから、排せつ物を長期間放置していたことは明らかであり、適切な飼養管理がされていない(ネグレクト)という証拠にもかかわらずこれがネグレクトであったと認められなかったことが納得しかねるところである

被告発人が引き取った時点で犬猫が衰弱していたか否かは、全く無関係。

 熱湯やバーナーで猫12匹虐殺 埼玉県税理士

少なくとも13匹のネコを熱湯を繰り返し浴びせたり、ガスバーナーであぶり残虐きわまりない虐殺だった。動画は身元が特定されないよう公共の通信環境を利用して匿名の動画投稿サイトに投稿していた上、ネット匿名掲示板「2ちゃんねる」などに掲載をほのめかす書き込み。動物虐待マニアが集まるコミュニティーでは「カルおじ」や「神」呼ばれ、もてはやされる有名人。動物虐待愛好家を自称の犯人は、有害動物の駆除であり、法律違反になるとは考えていないとのこと。

9/19起訴が確定した。裁判で罰金刑ではなく、懲役刑を求刑することを東京地検に求める署名が、約6万集まっている。(2017年9月19日現在)

渋谷寛弁護士がおっしゃっていたように、今後は厳罰化や、ネット上で犯行をあおった人にも幇助罪(ほうじょざい)を適用するなどの対応も必要なのではと思う。

 子猫虐殺動画

EvaNPO法人 動物実験の廃止を求める会(JAVA)は、連名で告発、起訴と動物愛護法における最高刑懲役2年の求刑を求める文書を横浜地方検察庁小田原支部に提出したが、残念ながら略式起訴され罰金たったの20万という非常に残念な結果であった。

子猫虐殺動画事件 地検に要望を

残酷極まりなく、罰金20万円では到底許せるものではない。当協会にも納得できないなどのコメントが多数寄せられた。周知のとおり、動物虐待・虐殺は、人に対しての凶悪犯罪にエスカレートする危険性が高いことは、国内外で広く指摘されている。動物虐待者は非常に危険な犯罪者であるにもかかわらず、私の知る限り日本では動物虐待者に対して懲役刑が下ったことはない。

これは社会が動物虐待を軽視している証で、こういった状態では、動物虐待やその様子をインターネットで公開するといった残虐かつ悪質な犯罪は増える一方になる。

米カリフォルニア
21匹の猫を殺害した26歳の被告に収監16年の判決が下った。(2017年)

米オレゴン州
最高裁が、飼い主が扱う(または酷使する)動物を単なる所有物(器物)ではなく、それ以上の者としてみなす。ひどい扱いを受けた動物は法的な”被害者”とみなされ、虐待から守られるべき対象となる。(2014年)

次期法改正に向けて

  1. 2年以下の懲役又は200万円以下の罰金⇒5年以下の懲役又は500万円以下の罰金にひき上げ。
  2. 虐待防止のための緊急一時保護を可能にする。またアニマルポリスに代わる機関、例えば司法警察権を付与し捜査権限を持たすような仕組み作りについて訴えていきたい。

動物取扱業における不適正飼養の対処と課題
(講師:高崎市動物愛護センター大熊伸悟様)

動物取扱業における不適正飼養の対処と課題 高崎市動物愛護センター大熊伸悟様

高崎市で27年の年明けに、ある繁殖業者(A氏)が偽計業務妨害罪により逮捕された。そこから見えた現状の法律の抜け穴についてお話ししたい。

事件の経緯は、この繁殖業者から、「私の繁殖場に、4月に3頭、8月に8頭、合計で11頭の犬が捨てられていたのだがどうしたらいいか」と一本の電話が入った。A氏は、柴犬の繁殖で生計を立てている業者で、繁殖場に遺棄されていたのは、アメリカン・コッカー・スパニエル、パグ、シーズー、チワワ、等の犬種が捨てられていたとのこと。4月に捨てられた時点では、皮膚疾患がひどかったため、動物病院に連れて行き、新たな飼い主を探そうと努力をした。その後8月に、また遺棄があり、自分のところには、多くの繁殖犬がいるので面倒をみきれない、ということだった。

私たちは、A氏が嘘をついている、もしくは業者間トラブルがなかったのかを考えた。遺棄されていた犬は、本当はA氏の犬じゃないのかと再三確認したが、確たる証拠がなかったため、その後こちらで引き取った。引き取った小型犬に共通して言えることは、まず血統犬種、そして小型犬、高齢、雌、巻き爪。そして繁殖経験があり健康状態が悪いということ。アメリカン・コッカー・スパニエルについては、足が黄色く変色し声帯が切られていた。もう1匹については、舌が斜めに出きっていて、皮膚の状態もあまりよくなかった。

そしてこの年の10月以降、読売新聞、下野新聞、共同通信栃木支局等、テレビ局や新聞社からこの件について取材の申し込みがあり、そしてこれらのニュースを見た人たちから、警察庁と関係者にだいぶ苦情が行き、そこから警察が本格的に我々に事情の聞き取りを行うことに至った。その後、県警による捜査が行われることになるが、そんな中警察に、繁殖犬であるアメリカン・コッカー・スパニエルをA氏に譲渡したというタレコミの電話が入った。その後、センターに引き取ったアメリカン・コッカー・スパニエルと、タレコミをしてきたそのアメリカン・コッカー・スパニエルの子にあたる犬をDNA鑑定したところそのDNA型が一致をした。

ここでA氏が嘘を言っていることが確定したが、では何をもって逮捕に向かうのかといった協議をその後警察とした。詐欺事件としては立件がしづらく、また、そもそも本人所有の犬だったので、本来であれば「動物愛護法第35条の犬猫の引き取り」だが、所有者であるA氏が、引き取りの手続きをせず嘘をつき、「同35条の3項、所有者の判明しないもの」で引き取らせたことについての罰則規定はなかった。その後、軽犯罪法違反下という話しも上がっていたが上級長と話しをしていく中で、偽計業務妨害罪でいけるのではということから、偽計業務妨害罪で立件をして逮捕に至った。罪を認めたA氏には、前橋地検高崎支部が略式起訴という選択肢をとり、同日高崎裁から30万の罰金の支払い命令がくだされた。(偽計業務妨害罪:3年以下の懲役、もしくは50万円以下の罰金)

今回の事件は、完全に動物愛護管理法の盲点だった。刑法に書かれている偽計業務妨害罪で逮捕されても動物愛護法が適用されなかったため、このA氏は結果的に30万の罰金を支払い、群馬県内の違う場所で、現在堂々と繁殖業を営んでいる。

次期法改正に向けて

  1. 動物を起因として起きた犯罪で罰金刑以上が確定した場合、動物愛護管理法に一定期間従事が出来ない制定を設ける。
  2. 虚偽の申告に詐欺罪の構成要件は非常に難しいため、法35条について、虚偽の申告をした者へ罰則を設ける。(業者より、面倒見ていた猫を増やし引き取りを求めるなど一般の事案が多くこれらを取り扱う地方自治体は非常に苦労している)
  3. 第1種動物取扱業の「土地」の問題について。移動動物園や繁殖業者の繁殖施設が建つ場合、登録申請書が上がり構造上問題がない場合、登録受け付けをしなければならないが、例えば農政関係の部署であれば、農地法に違反してるからNGといった、同じ役所でダブルスタンダードな見解を出すという事案に繋がりかねないこと。
  4. 獣医師の免許、トリマー、動物看護士、ペットシッター等の資格があれば、それぞれに応じた業務が出来るが、資格がない方は、現状実務経験を6ケ月以上積めばその資格が得られる形になっている。私どもは、動物取扱業の受付窓口になっているが、一つ例をあげると、販売で申請を出す繁殖業希望者の中に、あるセリ斡旋業者が、実務経験を積んだと証明書をつけて提出し登録をする方がいる。こういう場合、裏を調べるような手段、手法というのは全くなく非常に頭が痛い。なので、仮に例えばこの実務経験を1年以上、又は1年半以上、もしくは2年以上など、一定期間を設けることも大事だし、またこの虚偽の証明書を出した者については、罰則の新設というものも考えてもいいと考えている。
  5. 動物取扱責任者もしくはその従業員が、一人当たりで見る動物の飼養頭数も着目する必要がある。現行の法律では、例えば一人で100頭の犬、もしくは猫の面倒を見ていても全然OKなので一人で見られる飼養可能頭数を明記するべきだと思う。
  6.  今回警察とやり取りをする中で、非常に現場は無力感を覚えましたが、警察に「行政指導の回数大事だよね」などと言われると、我々はこの法律で罰則が重くなったとしても、罰則の適用をいわゆるレッドカードありきの状態で運用が出来なければ意味がないと考えている。次期法改正では、警察庁や本省などと罰則の適用が出来る仕組みづくりをお願いしたい。

移動販売の現状と課題(講師:アニマルライツセンター 岡田千尋様

移動販売の現状と課題 ARC岡田千尋様

前回法改正で対面販売が義務化されインターネット通販が禁止されたが、これにより、移動販売の現場では、不適切な飼育、輸送、展示が横行し、そして購入者にも不適切な飼育を助長し、さらに行政による動物取扱業の不適切な運用を発生させる結果になった。通販の禁止によりこれまでまったく把握されていなかったエキゾチックアニマル(犬猫、家畜以外)の隠れた売買が白日の下にさらされた利点はあるが、その問題点を把握し、適切な使用がなされるよう更なる規制が必要である。

移動展示即売会

移動展示即売会

移動展示即売会では、動物は食品パックに入れられ販売されている。心理構造的に壁を認識できない動物にとって、透明な入れ物というのは非常にストレスが大きく中でひたすらもがき続けている。狭い場所に閉じ込めたり繋がれた状態は、動物にとっては罠にかかった状態と同じことと定義され、こういった販売はもとより、家庭内の飼育方法であっても不適切であり、動物にとって大変なストレスであるということを私たちは認識するべき。

移動展示即売会

犬猫、家畜以外の動物は、人が飼養してきた歴史が短く、たとえ繁殖され人に慣らされていたとしても、その飼育は大変難しく、犬や猫より綿密なルールの基に行われるべきで、飼育自体も行ってはならないと思う。犬猫の規制が厳しくなると、それ以外の動物に人々は目を止めていき、そこでさらなる虐待が起きていくわけで、動物販売業者は動物の痛みに鈍感になる。写真は展示されている鳥のすぐ横を客が歩き回るため、短い鎖で繋がれている鳥たちは終始逆さづりになってしまう現状だった。

移動展示即売会

生まれて間もなく立つことすらできない年齢で売られている鳥も多数いた。こんな中「私は初心者で飼ったことがない」と言うと「簡単に飼えますよ」と売り込まれた。

移動展示即売会

超過密状態で折り重なって売られていた石亀について行政に指導をお願いしたが、「亀はこれでいい」いう言い分を行政は鵜呑みにし指導せずに帰ってきた。

移動展示即売会

このフクロウは一見繋がれてなく自由に見えが、両足を固く縛られている。これを犬猫で想像した場合、両足を縛られた状態で置かれていたら皆さんどう感じるのか。

猛禽類などの飼育は、動物行動学、生体を考慮すると、一般家庭やアニマルカフェでの飼育は不可能だといえる。

人が飼育してよい動物ということで、エキゾチックアニマルの平林獣医師はこのように述べている。

  1. 家庭内で飼育するには情報がまず豊富であること
  2. その動物についてよく知っていること
  3. 生体を把握されているということ 
  4. 容易に飼育環境を整えることができること

爬虫類を診ることができる獣医師は、国内に20人程度しかいないため、一定水準の診察すら受けられない、最低限の福祉すら担保できないという状態。そういった状態で安易な飼育が許されてよいのか今後考えていくべき。

こういったことを指導できない行政の体質、行政の運用の仕方について、きちんと機能する法律にして欲しい。動物行動学に基づいた、いわゆる業者が言う言い訳、都合の良い解釈ではなく、きちんとした研究に基づいた、具体的な飼養要件の策定がすべての動物種において必要である。数値基準や設備、温度管理、一頭で飼育してはいけない動物を一頭で飼育することなど、それらストレス兆候はどういったものがあるのかを明確に分かるような法律、規制にしていただかないといけない。そのことにより、国民により分かりやすい法律になり、行政が指導することができる。

動物種に対しての要望

家庭動物も他の場所で使われる動物も差別意識をなくし同一にして欲しい。例えばミズーリ州(米)では、犬猫、鳥、ウサギ、モルモット、ラット、マウス、ハムスター、フェレット、爬虫類、両生類、トカゲ、亀、カエル、魚類について、すべて飼育方法や必要な面積等規定されている。今の動物行動学の知見に照らし合わせれば、難しいことではなく、すでに研究されていることを反映すれば出来る。また現在、犬猫以外の動物について、犬猫であれば、所有頭数、繁殖数、死亡頭数など健康安全計画の提出義務等さまざまな義務があるが、他の動物についてはこういう類のものがなく、どういう状態で飼育されているか、何頭死んでいるのかなど全く把握ができないという問題を抱えているため犬猫同様に厳しくしていただきたい。

輸送の問題

また移動販売では、輸送の問題が必ず発生してくるが、現在この輸送の規制は、法律から抜け落ちている。食品カップのまま、段ボールに詰め込む。宅急便に内容物を偽った状態で送付するなど種ごとに適切な温度管理などが行われず輸送されている。

実験動物であっても拘束された状態で輸送されたり、畜産動物は殴る蹴るなどの暴力が日常化して輸送されていることが分かっている。

ゆうパックの生きた動物の輸送時の注意事項では、例えば、輸送中にエサや水の補給と、特別な手当てを要しないものや、温度や湿度、換気等特別な取扱いをしないため死亡するおそれがあることについて、承諾いただけたものとしている。過酷な状況下で死ぬことを前提とした輸送業を放置していていいのだろうか。

輸送される動物は、非常にストレスが高く、リスクも高い行為のため、欧米では必ず先に輸送業というのは規制がされている。日本も法律の中に含めていただきたい。

登録不要の問題

移動展示販売、ふれあいなどの移動動物園では、1日の興行であれば登録不要とされており、その場合行政はそのイベントを把握すらしていないという状態が発生している。

大きい所では、2015年に来日したレニングラードサーカス。多数の場所を移動して商売をしていたが、登録をしたのは最初の登録地の埼玉のみ、その他は無登録の違反状態であった。Peaceさんが2015年に行った行政アンケートでは、39件が2日間以上の動物を使ったイベントであっても、例えば「夜、連れ帰っているから」、「トータルの時間が24時間を超えないから」などの理由を付け登録不要の運用をしていることが分かっている。動物愛護法が全く機能していないという現状は、こういったところに現れている。

さらに移動販売や動物園であれば、通常は指導されるような展示方法がなされても、指導がされないということが多々起きている。そもそも現行法では、取扱業の登録前に立ち入り検査が不要になっていて、そのため私たち動物保護団体が見に行き問題を指摘するという事になるが、つまり不適切な施設というのは、取り敢えず営業OKという状態になっている。このことに対し、必ず登録前に立ち入り検査を行い、基準に適合した場合のみ営業が出来るという運用に変えていただきたい。

めっちゃ触れる動物園

3m×4mの中にライオンが1頭おかれていて非常に問題になった。
ライオンが壁に頭を打ち付けて血を流しているとSNSで炎上。
(めっちゃ触れる動物園)

動物園の問題

次に、これらの移動販売、移動動物園が、実は動物園の余剰動物の受け皿になっているという裏に隠れている問題。動物園は繁殖をし続けないと展示動物がいなくなるため、実は隠れた動物販売業者でもある。そして展示しきれない多くの余剰動物が出てくると、それらは他の動物園に受け入れ先がなければ、劣悪な動物施設、もしくは個人のところに売られて行く。

有名な例として、これは天王寺動物園(大阪市天王寺区)から移動動物園(三国ウエスト農場)に売られたシマウマが逃げ出し捕獲作業中に死んだというニュースがあった。今話題の劣悪施設であるめっちゃ触れる動物園(滋賀県守山市)で、数日で死亡してしまったサーバルキャットはこれも羽村市動物公園(東京都羽村市)から売られていった動物であった。このめっちゃ触れる動物園を運営していた堀井動物園の飼育場は、20m×10mの中にたくさんの動物種が入れられている劣悪移動動物園。原因は、誰もが誰にでも譲渡できるということ。酷い展示を行う移動販売や移動動物園、劣悪施設にも売り渡すことが可能。

これはおそらく通常の譲渡においても同様で、酷い飼い主に動物を渡してしまうということが原因。譲渡する前に、また売り渡す前に、その先が適切な飼育ができるのか、適切な環境を用意できるのかということを確認する必要がある。特定動物、危険な動物が家庭内で飼育されるということがなくなるように、また実験動物は、代替できるものは代替していただきたい、そして産業動物については、せめて国際基準に則った飼育をして欲しいという、そういった低レベルなことでさえ守られてないことを強く要望します。

登録制と許可制について(講師:佐藤光子弁護士)

登録制と許可制について 佐藤光子弁護士

規制方法としては、届出制→登録制→許可制→免許制となり、順を追うごとに厳しい規制になる。

  • 届出制
    届出制は、行政が事実を把握するために、一定事項を通知させるためのもので2012年の改正前の動物愛護法はこの届出制だった。
  • 登録制
    登録制は、届出よりは若干厳しく、所管の行政機関に書類を出し、帳簿に登録されれば完了だが、決められている登録の事由を満たす必要がある。登録制は、その制度の趣旨で登録要件の多さや登録取り消しが定められているなど、届出制に近いものから、許可制に近い制度と実際のところかなり幅がある。今の動物愛護管理法は登録制だが、取り消し制度が定められ、ある一定の登録要件があるなど、形の上では登録制の中でも厳しいと言われている。
  • 許可制
    許可制の場合は、実質的に行政庁の自由な判断の余地がある制度言われている。
  • 免許制
    免許制は、特定の資格を持った人に地位や権利を与えていい、もしくは営業していいという制度。

現在の動物愛護法の業者規制は、まず登録要件が定められていて、それを満たさない場合は、裁量なく登録を拒否しなくてはならない扱いになっている。登録基準としては、事業所や施設の所在地など一般的なことが条文上書かれていて、登録後は1度取り消しになると、その後二年間は登録できない。動物愛護法関連法規に違反した場合も、2年間は登録できない。

登録は、5年ごとに更新が必要で、更新の拒否もあり得る。登録事項に変更がある場合は、届け出が必要。業務停止、登録取り消しについては、その要件を満たせば必ず取り消されることではなく、任意で業務停止や登録を取り消すことができる規定で行政の裁量による。施設の立ち入り調査等もできるが、立ち入り調査をするかどうかは任意の判断になっている。

違反があった場合、例えば21条では、動物の健康安全保持や生活環境保全のために動物の管理方法に関し環境省令で定められた基準を順守しなくてはいけないが、これに違反している場合、どのような動きをしていくか。まず行政改善勧告で改善しなさいと言われる。それでもダメな場合は、次は強めの改善命令、それでもダメな場合は、業務停止命令で一定期間業務停止をし、その間に改善するという扱いになる。それでもダメな場合は、最終的に登録取り消しという流れになるが、どのタイミングでどのように行われるかはすべて裁量で、処分対象件数は非常に少ない。業務停止は、平成27年度は1件、取り消しは0。現状制度としてはあるが、動物保護の現場側からしてみれば、法律で定められていても実効性があるものなのかという批判が常々聞かされる状態になっている。

問題点・改正点

改善点としては、現在、動物愛護法違反、関連法違反等がないと登録取り消しや業務停止の適応ができないという抜け穴があるため、今後は対処法を広げるのか、あるいは要件を絞るのか、ザル法にならないよう改善していく必要がある。
また、現状登録時や更新時は、立ち入り調査は可能だが義務ではないため、この業者を登録していいかどうかは、任意ではなく義務にする。登録後の処分については、現在は処分も取り消しも出来る規定になっているが、やはり現場は不利益にしたくないと慎重になるため、そのことで適応できない現状になっている。適応しやすくするためにも、任意ではなく必要的に取り消す方法で、要件を考えていければと思う。

次に、登録取り消し後の再登録までの欠格期間が2年間だが、取り消しまでいく業者はそれなりに悪質であり、それがたった2年でまた戻ってきていいのかを考えると、5年くらい期間を見た方がいい。
現在、動物輸送業を動物取扱業に追加をすることにより規制の網をかける。
現場の行政機関が動きやすいように、具体的な飼養施設の数値基準や、行政処分の基準を細かくしていくべきで、これらも登録制の下で出来る。

繁殖業者に関しては、やはり動物の母体の安全性や、あるいは遺伝的問題など専門的な知見が求められる。そのため、具体的な知見がある適格者のみ営業を認め免許制にする。その上で繁殖業者には、飼養管理について繁殖制限等、具体的な規制を導入する。

次に偽名や架空の住所など、虚偽の資格要件で登録が出来ている問題については、やはり許可制や免許制で身元確認を厳しくすることを検討していくべき。そして無登録や不正手段で登録することに対し、告発されていない現状については、実質的許可制といっても中々厳しく出来ないというのであれば、形式的にも許可がない限り原則禁止の許可制に規制のレベルをあげるべきだと思う。

以上、動物愛護法の目的を達成していく上で、必要な社会的な制約ということで、制約の厳格化というのが次の改正ではやむを得ないと考える。

パネルディスカッション「改正動物愛護法を考える」

パネリスト(順不同)
環境省動物愛護管理室室長 則久雅司様
・朝日新聞社 太田匡彦様
・社民党参議院議員 福島みずほ様
・前衆議院議員 松野頼久様
・公益社団法人日本獣医師会顧問 北村直人様
・吉田眞澄法律事務所 吉田眞澄様
・公益財団法人動物環境・福祉協会Eva 理事長 杉本彩

コーディネータ
・アーライツ法律事務所 島昭宏様

パネルディスカッション「改正動物愛護法を考える」

8週齢規制について

島:前回の法改正で、8週齢規制つまり生後56日未満の子犬や子猫の販売、展示を禁止するという文言がおりこまれた訳ですが、それを緩和するような処置ということで付則が設けられた。しかし実質的にはまだ8週齢規制というのが実現していないという状況です。

松野:本文には生後56日以内の犬猫を展示や販売してはならないというふうに書いてあるんです。ただ、あの時にちょっと政治的な状況があったので、付則の方に経過措置が書いてあるんです。衆議院の法制局等々に聞いても、当然、本則が付則を上回るのは当たり前だという事ですので、経過措置があったとしても、次の法改正の1日前までには少なくとも8週齢規制が、私は導入される運用を是非、環境省にしてもらいたいということを言ってます。

島:その付則では、「科学的知見の更なる充実を踏まえ」と書かれていますが、この点はいかがでしょうか?

松野:科学的知見が出なければ8週齢にはならないという解釈ではありません。社会情勢や生年月日を証明させるための担保措置の充実の状況などいろんな条件が並列に並んでいます。正直科学的知見を出すことは難しいと思います。大型犬もいれば中型犬、小型犬もいる、犬種も様々です。それが同じような数値で出るとは考えにくい、正確な数字を得るのは難しいです。科学的知見によると言われると、これはやらないと言っているのと同義語だと感じます。私はずっと、これは政府が決めればいいというふうに言っています。ある意味、エイッヤアと決める。日本はヨーロッパ先進諸国にならって8週齢ですよ、と決めれば済む話だと常々言っています。

島:環境省はどのようにお考えでしょうか。

則久:56日をいつ発動するかは、別に法律で定める日からということになっているので、もう1度法律で決めていただく必要があります。それを5年以内にということですから、次の改正の時は1ついいタイミングなのかなと思っています。
また科学的知見ですが、いくつか付則で条件があって、犬猫販売業者さんの業務の実態ですとか、それからその調査研究の実施等による科学的知見の更なる充実を踏まえた犬や猫と人間が密接な社会的関係を構築するための親等から引き離す理想的な時期についての社会一般への定着の度合い。それから業者への知見の浸透状況、それから生年月日を証明させるための担保措置の充実の状況といった、いろんな要素が入ってきた上で、それを総合的に勘案し、5年以内に決めましょうという事になっています。来週、1回目の中間評価的な会議を開きますが、これだけではなく幅広い情報を集め国会に提出しますので、再度、政治の場でご決断いただければと考えています。

島: そうだとしても、8週齢に規制することによって効果があるんだ、関連性があるんだという事を何らかの形で示していくことが必要ではないかという気がしますが。

吉田:まず、法律というのはなにも科学的知見というものだけを拠り所にして決めるものではありません社会の様々な状況というものを多角的に検討して、その中から法律というのが作られていきます。あえてそこから科学的知見というものだけを出して、この法律のこの部分を説明せよということ自体、本来的に言えば私はおかしなことではないか、と思っています。
猫カフェの問題に関連して、夜間営業の件でコルチゾールによる検査というものをやりました。そのコルチゾール検査というものが、はたして夜間営業の延長を決めるにせよ、適切な科学的知見を得る方法であるかというと、私は非常に大きな疑問を感じています。
環境省が
非常に強く科学的知見というものを言い出しております。この科学的知見というものについて、もしそれを重視するのであれば、今考えうる最も適切な方法で、それぞれの疑問に答えるような、そういう事をきちっとやるべきだと思います。

パネルディスカッション「改正動物愛護法を考える」

マイクロチップの義務化ついて

島:新しい改正についてはマイクロチップの問題もあります。このマイクロチップの義務化という問題について、どういう趣旨で義務化するのか、といったところの議論もあるようですが...

太田:先ほどの8週齢について、業者にとってもの凄く大きなダメージになるというようなお話しがあったんですが、札幌市が8週齢を努力義務化した時に、札幌市議会の答弁で市側がこんな事をおっしゃったんです。市内の繁殖を営む事業者では全204施設のうち129施設、約63%はすでに57日後に譲渡するということを犬猫等健康安全計画の中に記載している実態があると。かつ、取材をしていると大手のペットショップの社長さん方は、8週齢規制が入るんであれば別にかまわないというお話しもすでに出ております。ブリーダーの方でもまともな方ですと、すでに2ヶ月どころか3ヶ月というところもありまして、是非そういう規制をして欲しいという声が多数聞こえてきています。ですから必ずしもこの規制自体が、全体にとって大きなダメージになるかどうかと言えば疑問符がつき、かつ、では特に反対する業者とはいったいどういう業者なんだろうというふうに、むしろ考えたほうがいいんじゃないのかと考えております。

本題のマイクロチップですが、この動愛法は議員立法で作られていまして、こちらにいらっしゃる松野先生はじめ、立法者の方々の御意思というのがあるのかと思うんですが、2012821日の自民党の環境部会で、松浪健太先生が当時の自民党の動物愛護議連の幹事長だったわけですけれども、こんなふうにおっしゃっています。民主党さんが全然マイクロチップのほうは触れてこなかったわけですけど、8週齢規制を実効性あるものにするということから付則にまで引き上げましたと。悪徳業者の方には退場していただくという観点から、当時こういった議論があったわけで、付則の方にも実際、国は、販売の用に供せられる犬、猫等にマイクロチップを装着するとあるわけで、あきらかにトレーサビリティを目的にした装着なんです。そこに対して、昨今、飼い主全般の義務化で、かつ、所有者明示の目的であると議論が一部なされているわけですけれども、立法者の観点から言えばそういった議論が出てくるのはおかしな話しであって、議論のすり替えではないかと思います。
マイクロチップの義務化というのは繁殖業者が出荷する段階で装着すべきもので、目的はトレーサビリティであろうというのが、普通に考えて正常な判断じゃないかと思います。

島:マイクロチップの管理を誰がどのようにしていくのか、という問題についてはいかがでしょうか。

杉本:マイクロチップを登録する団体というのが、現在複数あります。ですからデータベースを一元化するということも今後検討していかなければいけないと思っています。と言いますのは、ある登録団体ではデータのバックアップも取ってないという事があるらしいんです。やはりどういったところが登録団体としてデータベースを管理していくことがふさわしいのかというと、全国的に広がった組織を持っていて持続していける団体でないと管理というのは難しいんではないかと思ってます。

島: 今複数あるというお話しでしたが、そのうちの1つが獣医師会だと思うんですが、獣医師会では、今後義務化された場合、どのように対応していくのでしょうか。

北村:近年災害がどこで発生しても不思議でない、そういう異常気象が日本全体を覆っている中で、1つには同行避難ということもあります。家族の一員である動物も一緒に同行避難をしたときに、どういうふうに獣医師会が避難先を確保し、動物愛護団体の方々と協力しながら、人への感染等々を防ぐための一つにも、このマイクロチップは役に立つであろうというふうに思っています。日本獣医師会は我々を含めて4つの団体でAIPOという団体を十数年前から作っています。平成14年から昨年の平成28年度まで、犬が1192千頭、猫が約30万頭、あわせて150万頭の登録がされています。バックアップは大阪、関西方面にもとっています。関東で何か大きな地震等があった場合、あるいは災害があった場合には、関西で。関西であった場合には関東でと。そういうバックアップ体制を取りながら一元化に向けて努力をしているところです。また、マイクロチップだけではありません。これを読み取るリーダーというのが必要になってきますので、日本獣医師会の全開業医のところには、マイクロチップを読み取るリーダーを設置させています。あるいは愛護センター等々ではゲート型のリーダーも設置しております。今後は消防署、あるいは警察、交番等に、マイクロチップのリーダーを配置していただけるよう環境省にお願いをしているというのが現状です。

パネルディスカッション「改正動物愛護法を考える」

第1種動物取扱業者について

島:今回の議連の議論の中でも話題に上がりましたしたが、昭島市のペットショップパピオンが、非常に劣悪な環境下で動物の飼育等をしており大きな問題になった。結局このペットショップを規制することがなかなか難しく、ずっと野放しになってしまった。その後一旦営業の停止をしたはずがまた解除したというようなこともあり、要するに動愛法の解釈というものに幅があったりだとか、非常に甘い解釈による運用がされているという現状があります。

福島:ワーキングチームで、そのことも非常に話題になりました。ただ先ほどのプレゼンテーションでもご提案がありましたが、裁量的取り消しと必要的取り消しで、条文はいま裁量的取り消しで、取り消すことが出来るとなっているために、効果が弱いのです。ですからこれは必要的取り消しにして要件をきっちり決めるていうのはとても必要だと思っています。で今の現状の中でも、少なくとも数値基準と取り締まりの要件、これも松野さんがよくプロジェクトチームでもおっしゃっていたのですが、数値基準や取り締まりの要件、その2つがないと、行政って言い返されると帰ってしまうという状況が起きるので、これは法律要件ではなくて、少なくとも通知や指針で決める事によって制限することが出来ると思います。衆議院の前回の法律が成立した時の付帯決議には動物取扱業者による不適正な飼養・保管及び販売が後を絶たない現状に鑑み、動物取扱業者に対する立入検査を積極的に行い、必要があれば勧告、改善命令、措置命令及び取消し等の行政処分並びに刑事告発も適切に行うよう、関係地方自治体を指導すること、となっていて、この処理状況は環境省が1部措置済みとなっているんですがまだまだ弱いので、必要的取り消しにして、かつ要件をきちっと決めるというのは1つあると思います。
それから先ほど佐藤光子弁護士からもありましたが、失格要件でも2年というのを例えば5年に延ばすとか、それから議論になったのが、廃業しても家族や別の人間がやるとか、別の地域でやるので、結局廃業にこぎつけたとしてもあまり痛手ではない。こういった事についても規制を強める必要があると思います。

島:オークションも議連の中で議題にあがりましたが、オークションを運営する団体のセミナーで、何か気になる発言があったと伺っていますが

杉本:セミナーで聞いた話しでは、繁殖屋がどこからかワクチンの薬品を入手してきて、5倍10倍のワクチンを繁殖屋が打っているという話しです。結局セリ市で、動物がセリ落とされて、ペットショップに行くわけですが、そこでまたペットショップに関わっていらっしゃる獣医師さんが、通常通りワクチンをつわけです。そうなるとワクチン過剰摂取になっていくんです。そういったところで非常にトラブルが起こっているということも、全く悪びれず、ほとんど罪の意識もなくお話しされてたというのは非常に印象的でした。そもそもワクチンは獣医師でないとってはいけないものですよね。そういったところで平気でいろんな違法的な行為があるということも事実です。

島: 私が所属している東京弁護士会の動物保護会で、オークション視察に行かせていただき、実際の現場を見せていただいたんですが、議連でも視察に行こうということで話が進んでいたと思うんですが、実現したのでしょうか。

松野:視察に行きたいと申し上げたら、議員はいいけど、その他の人はダメだと言われて、だったら行きません、とういうことで辞めました。実態というものは私もまだ見たことがありませんが、ただ、そういう隠蔽体質であるなということは非常に感じました。今、杉本さんが言ったような例があるならば、これはきちんと獣医師法違反として摘発するべきだと思います。

パネルディスカッション「改正動物愛護法を考える」

最後に

島:議連では今まで主に第1種取扱業のテーマを議論してきた訳ですが、次回は、第2種動物取扱業や、特定動物、動物実験などを議論する、という予定になっている事でよろしいですか。

福島:そうですね、プロジェクトチームをまた再開してやることと、それに合わせて、法律改正に間に合わないといけないので、項目を出して、法律改正のほうと、その両方の2本立てでやっていこうと思っています。よろしくお願いいたします。

島:動物愛護法の改正に向けていろんな動きが現実化していくと思いますので、皆さんもどういった改正がなされるのか是非注目し、声もあちこちで上げていただくということで、より良い方向に変わっていくのではないかと思っています。

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閉会挨拶

社民党参議院議員 福島みずほ様

社民党参議院議員 福島みずほ様

8週齢は、本則が8週齢ですから、8週齢の科学的知見が必要ならそちらが立証すればよろしいのではと思います。8週齢にしたら何が問題なのですか?と聞きたいです。なにはともあれ、来年、まさに法律改正案を議連としても準備して出したいと思っています。まだ詰めきれてないところもありますが、命を大切にするような法案が国会でしっかりと無事可決できるように一緒に頑張っていきたいと思います。どうかこれからもよろしくお願いいたします。

民進党衆議院議員 松野頼久様

衆議院議員 松野頼久様

5年前の法改正に、4名で行った中の1人として私も携わりました。当時を振り返ると50点から60点くらいだったと思っています。特に8週齢の問題では、やっと本則に入れたと思ったら付則で骨抜きにされました。
前回できなかった生体を扱うペットショップブリーダー、オークションに対し、許可制を今回は絶対に導入したいと思っています。前回も許可制を主張しましたが、登録制でも取り消せば一緒じゃないかと言われ登録制になりました。環境省則久室長、果たしてこの5年間で取り消されたところってあるのでしょうか?
栃木県の引き取り屋でさえ、再び申請をしたら1回で申請を受け付けたという状況です。いったい犬や猫を、そういうブリーダーや生体を販売される方が、どういうふうに扱えばいいのかという基準が決まっていない。虐待とはいったいなんなのか?と言ってもその基準も決まっていない。だから、そこに行政指導が出来ないというもう本当にバカげたことが起こっているという状況です。私は決してペットショップやブリーダーという生体を扱うところを敵視している訳ではありません。きちんと扱ってくれていると思えば、逆にそういうところはしっかり利益をあげていただきたい。ただ、悪質で酷いところを退場させたいだけですで、業界全体のレベルが上がって良かったと思える、そういう業態に変えていきたいと思います。
これからオリンピックがあり、特に8週齢は、ヨーロッパ先進諸国の中では当たり前なんです。それを出来ない日本っていったいなんなんだろうと思います。

今回、国会対策委員長というポストを頂きまして。たぶん皆さんあんまり国対委員長と言ってもなじみがないと思いますが、実は国会運営の野党側の全ての責任者であるので、もし選挙がなくてこのまま国対委員長のポジションなら、来年、私が必ず国会で法改正にこの法案を持っていこうと思っていた矢先に(笑)衆議院が解散をされるという事でして、なんとか選挙に上がってくればまた国対委員長ですから、年の法改正は絶対やっていきたいと強く思っています。

Eva 理事長 杉本彩

Eva 理事長 杉本彩

栃木の引き取り屋ですが、やはりあれだけ酷い状況がネグレクトとして立証されなかったというのが、本当にこれが今の日本の現状です。
この情けなさというか悔しさというか、本当にこういった日本のレベルの中で、これから議員立法されていく議員の先生方は大変なことだと思います。
私たちはどこまでも、厳格な法改正を求めます。ですが、やはり現実というものが社会の中にあって、それとどう折り合いをつけていくのか、大変難しいことも充分理解しています。ですが、本当に痛み苦しんでいる動物たち、人間と同じように感受性がある動物たちを守ることが出来なくてそのまま放置されている現状は絶対に許しがたいものですし、世界に向けてとても恥ずかしい事だと思います。ですから、本当にたくさん大変な問題はあると思いますけれども、より実効的な法改正、そして一歩でも二歩でも、出来れば大きく前進していけるような法改正であって欲しいです。守るべきものをしっかり守れる、罰するべきものをしっかりと罰せられる社会に、当たり前の社会になって欲しいと心から願っております。
 

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