「動物虐待防止シンポジウムinおおさか2019」第2部レポート(2019年7月)

2019年7月「動物虐待防止シンポジウムinおおさか2019」
第2部レポート

動物虐待とは ~動物愛護法と告訴・告発制度について~(石井一旭弁護士)

「動物虐待防止シンポジウムinおおさか2019」 第2部 石井弁護士

動物虐待に対する罰則

動物虐待の罰則には大きく次のようなものがあります。

・動物愛護法(動物の愛護及び管理に関する法律)
・鳥獣保護法(鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に
       関する法律)

・刑法   (器物損壊罪)

刑法の器物損壊罪は、最近動物傷害罪とも言われるようになりました。「ものを壊す、あるいは負傷させてはいけない」となっているため、動物を念頭に置いた規定になっています。ただ残念ながら法律上動物は「モノ、所有物」という扱いになっているので、器物損壊罪の中にくくられています。つまり飼い主所有のモノ(動物)を壊した、傷害したという犯罪で「3年以下の懲役、または30万以下の罰金、もしくは科料」という定めになっています。

この三つの犯罪類型のうち、今日は動物愛護法改正や規制内容についてお話しいたします。

改正44条の内容

①愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた場合
→5年以下の懲役又は500万円以下の罰金(改正で厳罰化)

②愛護動物に対し、みだりに以下の行為に及んだ場合
→1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
(改正で厳罰化)

㋐外傷が生じるおそれのある暴行を加え、又はそのおそれのある行為をさせること(改正で追加)
 ※例:芸を仕込もうとして、犬に火の輪くぐりをさせる。高いところから飛び降りさせる。
   :馬に険しい崖を上らせたり下らせたりすることなど。

㋑以下の行為の結果、愛護動物を衰弱させること
a.給餌若しくは給水をやめること
b.酷使すること
 c.その健康及び安全を保持することが困難な場所に拘束すること

 ※例:
雪山の木に縛り付けてしまうなど。
d.飼養密度が著しく適正を欠いた状態で愛護動物を飼養し若しくは保管すること(改正で追加)
 →不適正な多頭飼い自体を刑罰として罰するということが新しく追加

㋒自己の飼養し、又は保管する愛護動物であって疾病にかかり、又は負傷したものの適切な保護を行わないこと 
   ㋓排せつ物の堆積した施設又は他の愛護動物の死体が放置された施設であって自己の管理するものにおいて飼養し、又は保管すること 
 ㋔その他の虐待

③愛護動物を遺棄した場合
→1年以下の懲役又は100万円以下の罰金(改正で厳罰化)

※愛護動物:牛、馬、豚、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと、アヒル。
その他、人が占有している動物で、哺乳類、鳥類または爬虫類に属するもの。

(注)魚類・両生類は動物愛護法の対象にはなりません。刑法の器物損壊罪の対象になります。
また、人が占有してない野ネズミや野鳥は動物愛護法ではなく、鳥獣保護法
の対象になります。

虐待とは

① 積極的虐待:やってはいけないことを行うこと、あるいは行わせること。
② ネグレクト(消極的虐待):やらなければならないことを、やらないこと。

まず動物自身の状態、それから置かれている環境の状況によって個別、具体的に判断されるということになります。現実的には警察や、検察官が起訴すべき犯罪かどうか判断することになります。

遺棄とは

愛護動物を移転又は置き去りにして場所的に離隔することにより、当該愛護動物の生命・身体を危険に晒す行為のこと。

① 場所的に離隔すること
② 動物の状態(生命・身体の危険性の判断)

人間の行為でも、親が赤ちゃんを放置した時に「保護責任者遺棄罪」あるいは「遺棄致死罪」になります。その遺棄と全く同じで、守るべきものを移転又は置き去りにし、場所的に保護されるべき場所から離してしまうことにより、その生命・身体を危険にさらす行為のことを「遺棄」といいます。一般的に、飼養されている愛護動物は、生きるために人間の保護を必要としている存在です。ですからそもそも人間から離すということ自体が遺棄です。

それから、野良犬や野良猫等いわゆる人間の保護を受けずに生存している愛護動物であっても、遺棄された場所の状況、気候が厳しい場所やあるいは冬であったり、あるいは事故遭遇の恐れがある場所で大きな道路の近くに捨てるとか。また野性動物に捕食される恐れがある場所、そういった所に遺棄したのであれば、生命・身体を危険にさらす行為と言えます。野良猫を拾ってきて、別の場所に移したということがあったとします。それが大きな国道のそばだったり、あるいは、わざわざ冬の寒いところに捨ててきたということであると、これは遺棄罪です。

また「保護施設や、誰それの家だったら飼ってくれると思った」という理由で動物を遺棄するケースもありますが、第三者に保護される期待があるからといっても、必ずしも保護されるとは限らないですし、保護されるまでに交通事故にあったり捕食される可能性も当然あるので、保護活動をしている家の前に捨ててきたから大丈夫だ、ということにはなりません。また、場所の状況に関わらず、動物の健康状態があまり良くない、年老いている、幼齢である、怪我をしてる、そういった状態の場合も遺棄となります。なぜ遺棄が危険なのかということを、うまく説明できれば、警察や行政も判断しやすくなるでしょう。

「動物虐待防止シンポジウムinおおさか2019」 第2部 石井弁護士

不適切飼養への対応 改正法25条

1. 動物の飼養、保管又は給餌若しくは給水に起因した騒音又は悪臭の発生、動物の毛の飛散、多数の昆虫の発生等によって周辺の生活環境が損なわれている事態として環境省令で定める事態が生じていると認めるとき

 ① 必要な指導又は助言(改正)

 ② 期限を定めてその事態を除去するために必要な措置
をとるべき勧告

 ③ 措置を取らなかった場合に特に必要があると認めるときの、期限を定めての措置命令

 ④ 飼養又は保管の状況等に対する報告の徴求、または職員による飼養施設等の立入検査(改正)

2. 動物の飼養又は保管が適正でないことに起因して動物が衰弱するなどの虐待を受けるおそれがあると認められる場合

 ① 期限を定め、その事態を改善するために必要な措置をとるべきとの勧告、または措置命令

 ② 飼養又は保管の状況等に対する報告の徴求、または職員による飼養施設等の立入検査(改正)

上記のような不適切飼養に、行政として必要な指導または助言ができるようになりました。これは、いわゆる多頭飼いを念頭に置いた規定で、不適切な飼養での対応規定ですが、知識がないが故に多頭飼いになっているという場合も非常に多いです。それに対応するために、必要な指導または助言ができるようになったということです。

勧告を行うとか措置命令を行うというのは、以前と変わりありませんが、飼養または保管の状況等に対する報告を求める。または、職員による飼養施設への立ち入り検査、これも認められました。大きな進歩であると思います。

これまでの運用について

動物虐待自体の検挙件数(逮捕、任意同行等)は、右肩上がりですが、件数としては、平成30年で84件。多いと見るか少ないと見るかですが、一つの考え方としては少しずつですが、捜査機関も関心を持ちつつあるという事です。ただ、大体3分の2ぐらいが不起訴になっています。これは、刑罰が軽かったということが大きく影響してると思いますので、今回の厳罰化で大きく割合は変わってくるのではないかと思っています。

次は、裁判例です。まず殺傷事案としては、平成14年にインターネットで猫虐待を中継し、猫を殺した事案。当時はまだ懲役6カ月しかつきませんでした。平成2912月埼玉県の税理士の事案は、インターネット動画サイトで9匹を殺害し4匹に傷害を負わせ、これを中継したというケース。皆さん、まだ記憶に新しいと思いますが、懲役110カ月。軽いと思われるかも知れませんが、懲役2年が最高ですので、ほぼ最高刑が課せられたとみています。私ども法律家の目からすると、非常に厳しい判決だったという印象です。しかも、執行猶予4年と少し長めだったので、これはかなり検察も、裁判所も厳しく見ていると。ただ、上限があるためここまでしか難しかったのだと思いました。

また、捜査機関も色々と工夫をしている事例ですが、平成24年、猫を虐待目的で黙って5匹譲り受け殺したケース。この「黙って譲り受けた」という所に詐欺罪を構成しています。詐欺罪はかなり重い刑で、懲役10年が最高なので、それを加えることによって、懲役3年執行猶予5年という構成をした。だから、検事、あるいは裁判所も全く手をこまねいているのではなく、色々な工夫で何とか厳罰を処せられないかと考えてはいると思います。

虐待事例ですが、猫45匹を不適切な環境で飼養していた。罰金10万円。平成306月、犬2頭に餌やりをやめて、衰弱させ不適切環境で飼育していた。これも罰金10万円です。ただ、今後懲役1年という刑罰が科せられるようになったので、そのあたりは、また多くなっていくのではないかと思っています。

今後予想される実務動向

今回の改正を受けて、今後予想される実務動向ですが、一発実刑の可能性が出てきました。懲役3年までだと執行猶予がほぼ機械的に付くというのが、今の刑事司法の状態です。しかし、懲役5年まで科されるということになると、例えば、懲役4年の刑では、原則執行猶予は付きません。ですので、これは一発実刑になる可能性が出てきます。人間に対する「業務上過失致死傷罪」これが5年の刑です。「業務上過失致死」とは、誤って人を殺してしまった、あるいは怪我をさせてしまった、という罪と実は同じ刑罰が科されることになります。

この一発実刑の可能性が出てくると、社会への抑止的効果も当然期待できます。これだけ重い罪になって、実刑にもなりうると分かれば、動物虐待はもうやめようという人がきっと増えてくるはずだと思います。その結果、虐待が減っていく、あるいはきちんとした飼養をするようになると思います。

そして、捜査機関、行政関与への期待です。先ほど説明した通り、細かく例示がされていることで、警察も動きやすくなります。現場の警察官が動物愛護法に詳しいことはあまり期待できないので、きちんと条文を示して「これはこう書いてあるけど、これに違反しているじゃないか」と具体的に指摘できるようになった、これは非常に大きいことですね。

動物虐待の告訴・告発

まず、告訴と告発、被害届の違いですが、告訴というのは、犯罪の被害者がやることです。ですから、自分の飼い犬、飼い猫が何か被害を受けたときには、告訴をする。告発というのは、第三者が、処罰してくれというものです。例えば、動物愛護団体とかあるいは有志の方がされるのは、告発になります。よく言われる被害届は、ただ単に犯人を罰してくれというものではなく、被害がありましたという事ですので、これでは警察は動いてくれないので「被害届ではなくて、告訴あるいは告発をしたいのです」と、きっちりと言っていただく必要があります。

提出先は、警察または検察です。どこの警察署に出しても移送してくれます。基本的には持参して、状況を説明しつつ提出するというのが基本です。私ども弁護士がやる場合も、同じことです。

様式として重要なポイントが5つあります。まず、住所、氏名の表示記入、誰がやったのか、提出日、犯罪事実の表示。どういうことがあったのか「誰が、いつ、どこで、何に対して何をして、どんな被害を受けたのか」という事をきっちりと書く。犯人の指定というのは、特に絶対ではありません。一番大事なのは、この犯人の処罰を求める意思が表示されている。「この犯人を処罰してください」ということを書いていないと、被害届として扱われ警察は動いてくれません。こういったものに、証拠を付けて提出するということになります。

告訴、告発の形式的な要件が満たされていると、捜査機関は受理しなければならず、拒否することは許されません。時々被害届でいいでしょと言うのですが、きちんと、告訴・告発として受け止めてください、と言う必要があります。受理されたら、受理法の手続きとして、検察官に必ず送られます。警察限りにするとか、警察の手元に留めておき、いつ起訴するのか分からないような状況は許されないと定められていますので、もし対応が悪ければそういうところも指摘していく必要があります。出せば終わりという話しではありません。

受理後の手続きとして、控訴提起しなかったらその理由を告知しなければなりません。起訴しなかった、処分に不服がある場合は、検察審査会の審査を受け強制起訴もあるので、告訴・告発が受理されたからといって、そこで終わりではなくその後も経過を見守っていく必要があります。

最後に、動物愛護法の改正により、虐待の厳罰化が実現しました。非常に驚くべき変化だと思います。また、行政や警察もより動きやすくなったと言えますし、これが報道されることで、世の中の虐待に対する抑止効果は十分期待できると思います。こういったことが積み重なって、動物へのいわれなき虐待、あるいは遺棄がなくなっていくことを願っています。

虐待事例からみる法改正(Eva事務局長 松井久美子)

虐待事例からみる法改正

札幌猫閉じ込め事件
2017年に、札幌で起きた猫閉じ込め事件について。札幌市内のとある無人の一軒家に、猫数10匹が閉じ込められ、レスキューしようと地元のボランティア団体が動きますが、警察は事件性はないとし、開いた窓から給餌をする地元ボランティアさんに対し「不法侵入になるから給餌をやめろ」「猫が死んでいないので動物虐待にはならない」と言われ、現場はどんどん切迫した状態になっていきました。その後飼い主が完全に施錠。札幌とはいえ、真夏の室内に餌どころか水さえも与えられないまま閉じ込められ、みるみるうちに衰弱していく状況は猫にとってまさに地獄でした。

当時の詳細はこちらから

問題点
①飼い主の所有権の壁があり、中にいる動物を保護できない

完全施錠されてから数日経ち、いつ死んでもおかしくない状態にも関わらず、所有権の問題でレスキューが出来なかったっことから、今後は完全に所有権を放棄・又は譲渡させるのではなく、緊急一時保護の仕組みを作る必要がある。今回の法改正の議論の場では、緊急一時保護について何度も議題に上がったが、住居不可侵という、住居や所持品に対し、侵入や物を取り上げられることのない権利の壁があり、緊急一時保護が、なかなか条項の中に入ってこなかったという経緯がある。

②警察がネグレクトを虐待と認識していなかった

室内で猫が死亡していなくても、愛護動物に対し、給餌や給水をやめていたこと、健康と安全を保つことが出来ない場所に拘束し衰弱させていたこと、そして糞尿が堆積、猫の死体1匹が放置されている環境だったことから第44条2項にあてはまる。

また、この飼い主は、猫を繁殖させペットショップに卸していました。今回の法改正では、動物の健康や安全が保たれているか、8週齢など遵守されているかなど、そのような勧告に従わない事業者に対し、23条に公表制度が盛り込まれました。また勧告及び命令について3か月以内の期限が設けられました。こういった条項が「絵にかいた餅」にならないよう、今後は現場で実効性のある運用を求めたいです。

茨城県第2種動物取扱業の不適正飼養について

茨城県第2種動物取扱業の不適正飼養について
当協会は、2年半以上に渡り地元のボランティアさんから、劣悪飼養を続けている動物愛護団体について相談を受けていました。団体施設に収容されている犬猫は健康状態も飼養管理状況も悪く、不妊・去勢手術をしていないことから中で繁殖したり、病気になっても医療にもかけられず、施設内で多数死亡している犬猫もいました。

その後時間をかけ複数のボランティアさんのご協力で写真や動画の証拠が集まってきました。当協会からは、茨城県知事に要望書を提出したり、茨城県議に議会質問をしていただき行政の適正指導を要望していました。

行政がようやく重い腰を上げたのは昨年10月。県の調査で不衛生な飼育状況が確認され、のちの12月の再調査でも改善はみられず、県は動物愛護法に基づき行政指導の改善勧告を出しました。しかし、今年2月までの期限内に状況が変わらなかったため、動物愛護団体に対しては異例の改善命令を発動。その後当協会が動愛法違反で告発し、8月16日(金)水戸地方検察庁下妻支部に、猫8匹の虐待と犬2頭の狂犬病予防違反で送検されました。

問題点
①明確な飼養管理基準がない

今回の法改正では、遵守基準の具体的数値が定められることになりました。それらは

・飼養施設の管理や設備の構造
保管に従事する従業員数
疾病などに係る措置について
展示又は輸送の方法に関して
繁殖の回数や繁殖の方法
など、今後2年をかけて環境省令で具体的に定められていきます。(補足:飼養管理基準と8週齢は公布2年後、マイクロチップは3年後、それ以外は1年後施行)これまでの飼養管理基準は「第一種動物取扱業者が遵守すべき動物の管理の方法等の細目」の曖昧な書き方しかありませんでした。
「日常的な動作を容易に行うための十分な広さ及び空間を有するものとすること」「入れる動物の種類及び数は、ケージ等の構造及び規模に見合ったものとすること」など。この曖昧さが、効果的な行政指導を困難にしています。

今後は、この遵守基準において第2種についても準用規定で同様に順守すべきとなっています。ただ第1種は登録制なので取り消し等ができますが、第2種については届け出制なので取り消しは制度上ありません。ですから、自治体が指導等はできるので、指導・勧告に従わなければ罰則となります。

②行政指導の遅れ

これまで、行政はなかなか処分はしたがらなかった。その理由は、行政処分というのは処分される業者側から見れば、不利益な処分になるため、行政側もどうしてそれがダメなのか根拠を示さなくてはいけません。また、弁明があればそれも聞かなくてはならない。そういう中でダメな所が明確でないとなかなか処分しづらかったのですが、具体的な数値基準が実現すれば、数値は客観的に誰が見てもその数値ということになるのでかなり明確になります。数値規制は行政にとってバイブルなので大きな期待を寄せたいです。

今回ここ大阪で、日本初のアニマルポリスが開設され、多くの通報が寄せられると思います。当協会Evaにも、日頃からたくさんのメールや電話をいただきます。そんな中証拠のない不確かな通報も多いのが実情です。

・ブログやsnsで虐待されている動物を見かけたから助けて
・団地で猫が殺されているみたいだ
・行政がこっそり猫を殺していると聞いたから調査して

どうにかしたい、どこに電話しても全く取り合ってもらえないから助けて欲しいという気持ちは痛いほどわかります。ですが不確かな情報だけでは、どうにもこちらも動けません。それは今後開設する「おおさかアニマルポリス」も同じです。ですので動物虐待を見つけた人が写真や動画、証言などを用意し、要点をしっかりまとめ通報の精度を上げ相談することが大切です。電話は受けた人を拘束しますので「おおさかアニマルポリス」が円滑に運用できるよう通報する側のマナーも求められると思います。

厳罰化になりアニマルポリスが開設され、今後ますます行政指導や摘発に繋がっていくのと同時に、虐待の防止にも繋がると思います。また大阪に続き他の都道府県でも開設していただけたら本当に素晴らしいことです。今後に期待したいと思います。

法改正の経緯と動物虐待厳罰化の報告(Eva杉本彩・松井久美子)

法改正の経緯と動物虐待厳罰化の報告

松井:超党派議員連盟の第1回目の総会は、4年前の2015年2月でした。その後、当協会は、実際にPT(プロジェクトチーム)のアドバイザーとして選任され2017年3月から議連PTの会議に出席するようになりました。そこでは毎回、動物取扱業やオークション市場、ペット流通の実態、8週齢規制等々テーマを分け、講師を呼んでヒアリングが行われました。

杉本:オークションの視察については、会議の場では「どうぞいらしてください」だったのに、あとから我々愛護団体は断られ、議員だけならOKとの返事。完全なる隠蔽体質と思いました。

松井:そんな中、議連PTの議論まっさかりの、2017年8月に事件は起きました。私達が、動物虐待の厳罰化を訴えるきっかけとなった事件「埼玉県元税理士による猫13匹殺傷事件」です。同年12月に判決。懲役1年10月、執行猶予4年です。私たちはその求刑に納得がいかなかったので、終了後すぐに司法記者クラブにて記者会見を行い、判決から1週間後、1回目の署名活動を開始しました。真筆署名とネット署名合わせ、合計10万筆を短期間で集めました。真筆署名を提出するために、紹介議員になっていただく国会議員をあたり、約30名の先生に衆参両議長あてに提出してもらいました。首相官邸にも行き、西村内閣官房副長官に署名活動のご報告もしました。

杉本:ですが、環境委員会の理事ほとんどに紹介議員になっていただいたにも関わらず、請願署名の採択が分かる会期末、署名の結果について、納得いく理由は一切何も聞かされないまま「特段の理由なく不採択」でした。本当に納得いきませんでした。請願は国民の権利です。
私たちEvaは、諦めきれず請願内容を罰則の引上げに絞り、
2回目の署名を即始めました。署名は、遠く海外からも届き、中には極寒の中、街頭署名してくれた方もいました。続々寄せられる署名に入っていた手紙に何度目頭が熱くなったか…。そして問い合わせも多くいただきました。家族の署名で住所の「同上」示す点々はダメなのか、代筆はダメなのか、間違ってしまい一行抜けたが有効か、など、皆さんの一筆一筆の重みをひしひしと感じました。

松井:その後、署名を集めつつ、動愛法改正の方は、昨年の通常国会でもまとまりきらず、秋の臨時国会に持ち越しになりましたた。そして8月からは条文化作業が始まり、議員と私達アドバイザリー共々、毎回3時間という長時間に渡り議論の積み上げを行ってきました。まさに議員は夏休み返上です。その後第10回総会で、骨子案の報告。法改正は秋の臨時国会でもまとまらず年明けに持ち越し確定となりました。私たちは、衆議院議長の大島議員のところにも陳情に行き議長から「あくまでも立法府の判断ではあるが、厳罰化においては賛同する」とのお言葉をいただきました。その後、超党派がまとめた骨子案を各党協議するため、各党のヒアリングに多数呼ばれました。一方2回目に集めた請願署名は、7か月で約25万筆集めることができました。

杉本:法改正の終盤は、怒涛のしぶといロビー活動を行ないました。超党派議連事務局長の先生にも現在各党調整がどうなっているか聞きにいったり、最後首を縦に振らない共産党のところにも改めて厳罰化の必要性を訴えに行き、そのあと説得するための追加資料もたくさん出しました。また、8週齢は決まったけど、公布後何年後から施行するかで各党の間でもめにもめました。その後、5月22日の議連総会「改正案の報告と承認」があったのですが、この総会終わりの質問の場で突如「日本犬除外」の話しが出た訳です。翌週には衆議院の環境委員会で答弁されるくらいのギリギリのタイミングにここで初めて除外規定の話し、これはもう本当に寝耳に水…皆呆気にとられました。

松井:Evaからは除外規定撤回の要望書も出しましたが、あまりに急すぎて無理でした。これまで8週齢規制の付則を取るために、「科学的根拠を示せ」とばかり言われてきたのに、「日本犬除外」については何の根拠もないまま最後あっさりねじ込んできてこんなやり方有りなのかと皆憤りを隠せませんでした。
その後、衆議院環境委員会、衆議院の本会議を経たのち、参議院環境委員会のあと6月12日参議院本会議で成立したのです。

閉会挨拶

Eva 理事長 杉本彩

Eva 理事長 杉本彩

厳罰化の署名活動のきっかけとなったのが埼玉の事件でした。私はあのように残虐に殺された猫たちの死が、どうにか報われなければいけないと強く思いました。私の心も、Evaスタッフの心も、そして署名運動に協力してくださった皆さんの心も、それぞれが一つとなりこの運動を支えてくれたと思っています。

この国は民主主義とはいえ、私たちの声が全然反映されてないのでは、と動物問題以外でも感じることが多々あります。署名運動をしても何も進まないのでは…と心のどこかでそういう思いを抱きつつ、それでも何かせずにはいられないという思いでやっておりました。

私のインスタグラムやブログへのコメントには「この国はどうせ変わらないと思っていたけれど、こうやって民意を集めて国会に届ければ変わるんですね」「本当に諦めなくてよかったです」「自分もこれから考え方を改めたいと思います」と、本当に嬉しいお声をたくさんいただきました。諦めずに私たちが声をあげ、それを大きな力にしてしっかりと届ければ変わるんだと。それは一足飛びには変わらないかも知れないけれど、必ず変わる、いつか変わるはずなんです。それより諦めて何もしないと、現状維持どころか世の中は後退してしまうのです。声をあげてやっとキープ。大きな声をあげてやっと一歩、二歩進めるかどうか。それでも、私たちは、やっぱりこの国に生きて、少しでも人と動物の幸せを願うために、絶対に立ち止まってはいけないのだと強く思うのです。

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