動愛法改正にむけて

動愛法の次期改正に際しては、動愛法全体の施行状況やこれまで当協会に寄せられた現場の声、そして実際に見聞きする事案を精査してはじめて動愛法の制度全般の改善につながると考えられます。動物愛護の現場からは今なお多くの課題が指摘され、当協会Evaは、今後も動愛法改正に向けた働きかけを活動の一つとしていきたいと思います。現時点で私たちが考える改正内容を紹介いたします。

1. 第1章総則

2条 基本原則

  • 「動物が命あるものであることにかんがみ」を「動物は人間と等しく苦痛を感ずる生命体」であることを明記
  • 5つの自由」の中の「恐怖や不安からの自由」と「正常な行動を表現する自由」を明記

2. 3条 普及啓発

  • 学校、地域、家庭等での動物の福祉を尊重し、学校での普及啓発においてみだりに生きた動物を使用しない

3. 3章 動物の適正な取扱い

7条 動物の所有者又は占有者の責務等

  • 動物に福祉を保障する5つの自由に基づいた責務を追加   

​       ①飢えと乾きからの自由
       ②肉体的苦痛と不快からの自由
        外傷や疾病からの自由
        ④恐怖や不安からの自由
        
正常な行動を表現する自由

  • 6項の所有者明示を努力義務から義務へ引き上げ
  • マイクロチップの義務化(販売・譲渡動物含)

4. 9条 地方公共団体の措置

  • 地方自治体における動物愛護担当職員の設置の義務化

5. 10条 第一種動物取扱業の登録

  • 登録制から許認可制への引き上げ
  • 許可ないし免許に際しての条件の付与(取扱種、及び数の制限)
  • 動物取扱業の拡大(実験動物の繁殖・及び販売業者、仲介業、動物輸送業、ペット葬祭業、ペット霊園、動物を取り扱う動物関係施設等)
  • 動物取扱業に係る説明代行業の禁止
  • 哺乳類・鳥類・爬虫類に限定されている動物種の対象を拡大し、生体の取扱いを業とするすべての者とする
  • 動物の移動販売・露店販売の禁止
  • 動物の移動展示(移動動物園)の禁止
  • 店頭販売の禁止 
  • 繁殖業者は、動物取扱業又は一般消費者に渡す前にマイクロチップを挿入し登録(里親等新しい飼い主に譲渡する場合も同様)
  • 遺伝的疾患個体の繁殖・販売の禁止。違反した業者には刑罰を科す
  • 動物愛護担当職員による立ち入り検査を毎年実施し、業者はこれを拒んではならない

6. 12条 登録の拒否

  • 登録を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者
  • 法人が取り消された場合は、その役員全員も5年間営業を禁止

7. 13条 登録の更新

  • 更新期間を5年毎⇒3年毎に強化

8. 19条登録の取り消し等

  • 欠格要件を厳格化し、登録取り消しや営業停止の対象となる関連法に暴力団対策法・暴力行為等処罰法等を追加 
  • 登録の取り消しを裁量的取消しから必要的取消しとし、自治体による裁量の余地をなくす

9. 21条 基準遵守義務

  • 露店販売・移動展示・移動販売の禁止、オークション市場(競り市)における取扱いの厳格化
  • 繁殖業者は、適切な繁殖方法を遵守すること(繁殖は年1回以内、繁殖可能な年齢の制限、先天的な異常疾患を誘発する繁殖の禁止等)
  • ペットショップや猫カフェ等の展示販売における全ての動物種における展示時間の制限と夜間販売の禁止の徹底
  • 環境省令で定める飼養施設の基準の具体例として、具体的な項目を明記(飼養施設の1頭当たりの容積、照度、アンモニア等の臭気、1施設おける職員1人当たりの取扱い頭数の上限等)
  • 「犬猫等販売業者」に対する規制を可能な限り全ての動物取扱業者に拡大
  • 室内動物園の禁止
  • 足かせによる繋留展示の禁止
  • 過密負担飼養の禁止
  • 種ごとの生理生態習性に適合した飼養環境を遵守

10. 21条-2 感染性の疾病の予防

  • 衛生管理の徹底(消毒・手洗い場の設置)
  • 人と動物の共通感染症の検査の義務化
  • 接触動物の感染症対策の厳格化

11. 22条 動物取扱責任者

  • 動物取扱責任者は事業所に「常勤」する者でなければならない

12. 22条-5 ​幼齢の犬又は猫に係る販売等の制限

  • 8週齢規制に係る附則7条の削除、犬猫以外の動物における幼齢個体の販売・展示規制の創設

13. 22条-6 犬猫等の個体に関する帳簿の備付け等

  • 出産した日、出産回数の記録

14. 24条 報告及び検査

  • 登録時のみならず更新時においても立ち入り検査を義務化
  • 立ち入り検査に基づく指導・勧告・命令できる権限を強化

15. 24条-2 第二種動物取扱業の届出

  • 学校飼育動物をはじめとする教育目的、実験動物や産業動物等の産業目的に動物を飼養する全ての施設を届出の対象とする(24条の2~4)
  • 動物愛護担当職員による立ち入り検査を毎年実施し、業者はこれを拒んではならない
  • 不妊去勢手術の義務化。但し、不妊去勢措置を講じることによって、当該動物に健康上の支障が生じるおそれがあると認められる場合はこの限りでない

16. 25条

  • 犬猫合わせて10頭以上を飼育している者について、自治体への登録及び不妊去勢手術を義務づける

17. 26条 特定動物の飼養又は保管の許可

  • 完全室内飼育の禁止
  • 飼育許可の厳格化(飼わない、愛玩目的は禁止)
  • 登録票等による個体把握の徹底(同一許可証のおける個体すり替えの防止)
  • 適正飼育基準の厳格化(種に応じた気温・湿度・日照・飼育スペース・同一スペース内での他種との扱い)
  • 許可は特定動物専門獣医師による

18. 33条報告及び検査

  • 立ち入りは、特定動物専門獣医師による検査とする

19. 34条

  • 常勤の動物愛護担当職員とは別に非常勤の「動物監視員(仮称)」を設置し、司法警察権を付与し捜査権限を付与する
  • 虐待の連絡がある場合は、立ち入り調査をし、当該動物及び飼育環境等を目視確認し、動物の福祉が遵守されていない場合は、改善するよう指導、勧告、命令を行い、命令違反には罰則を適用する
  • 動物愛護担当職員及び動物監視員が裁判所の令状により動物を緊急的に一時保護し、自治体の収容施設等で保管することができる
  • 保護された動物の飼育者に対して行政処分としての飼育禁止命令を発出することができる
  • 動物愛護担当職員は、動物取扱業(第1種・第2種)に関して、登録(許可)時のみならず、定期的に立ち入り検査をし、法律・基準が遵守されていないときは、改善指導、勧告、命令をする

20. 4章 都道府県の等の措置
       35条 
犬及び猫の引取り

  • 自治体の収容施設に係る全国統一の技術的基準を定めることを明記
  • 都道府県が団体その他の者に動物を引き出させる場合には、各都道府県でそれらの団体を登録する基準(生存率、疾病率、譲渡率等)を設ける

   ①申請団体に対し、登録前の審査時に視察を行う
   ②登録団体には不妊去勢手術をしてから引き渡す。但し、不妊去勢措置を講じることによって、当該動物に健康上の支障が
    生じるおそれがあると認められる場合はこの限りでない。
   ③治療が必要な個体については費用を補助する

21. 37条犬及び猫の繁殖制限

  • 犬猫等の所有者に対する繁殖制限措置の義務化、繁殖目的で所有する第一種動物取扱業者ではないのに不妊去勢手術を行わない者に対する指導監督の強化
  • 飼い主のいない猫に対する繁殖制限の努力義務を明記し、地域猫対策の推進を行う自治体に対する支援の努力義務を明記

22. 38条動物愛護推進員

  • 動物愛護推進員の設置の義務化
  • レベルアップ及び均一化のための教育の義務化

23. 40条動物を殺す場合の方法

  • 動物を殺す際は、恐怖心を与えず苦痛なく実施する。1頭ずつ麻酔薬により安楽死を実施し、事前の鎮静剤の投与も考慮する

24. 41条 動物を科学上の利用に供する場合の方法、事後措置等

  • 実験動物を飼養する施設の届出の義務化
  • 帳簿の備付けと提出、情報開示、査察、改善命令等の諸規定の整備
  • 実験動物繁殖施設を第一種動物取扱業に含めて規制
  • 3R(代替法の活用、使用数の削減、苦痛の軽減)を現行法の配慮事項から義務化へ引き上げ
  • 教育現場における生体解剖の禁止
  • 第3者による立ち入り検査
  • 倫理委員会の設置と研究者以外の委員の導入

25. 41-2獣医師による通報

  • 虐待と思われる動物を診療した際には、動物愛護担当職員や警察へ通報する努力義務から義務へ引き上げ

26. 41-4 地方公共団体への情報提供等

動物愛護行政の部署に動物愛護管理法に精通した警察関係者を派遣、もしくは警察内に動物遺棄虐待事件に精通する部署を創設し、動物虐待事案を専門に取り扱う機関「アニマルポリス」の設置

27. 44

  • 動物虐待罪・遺棄罪の罰則強化
    動物を殺傷した場合、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金⇒5年以下の懲役又は500万円以下の罰金にひき上げ
    動物を遺棄・虐待した場合、100万円以下の罰金⇒3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に引き上げ
  • 虐待防止を強化、罰則を強化
    ①行政による緊急一時保護を可能にする
    ②殺傷・虐待・遺棄事案で有罪判決を受けた者に対し、動物の所有を一定期間禁止する